表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

518/933

518 丘の上でお昼ご飯

 街道に出てからはグラスフォックスやファットマウスの単体と散発的に遭遇しただけで、苦戦することもなくてくてくと歩みを進めることができていた。

 そして二つ目の丘を越えた時、眼下にようやく目的地だろう村を発見することができたのだった。


 高さ二メートルほど塀は、大きな町や街とは違って木の板で作られていた。丘に囲まれて小さな盆地状になっている周囲には麦畑や野菜の畑が広がっており、素朴な村の雰囲気とも合わせて牧歌的というのがボクの抱いた第一印象だった。


「この場所ならいざとなれば村に逃げ込むこともできるだろうし、ここで村の様子を伺いながらお昼ご飯にしようか」


 丘の頂上であり、角度的に身体を低くすれば隠れることは容易だ。意識的に見ようとでもしない限り、村側から見つけることは難しいだろうね。

 逆にこちらは斜め上から覗き込むような形となり、村の中、家屋が密集している路地裏などはよく分からないけれど、大通りや広場といった主要な場所での人の動きは丸見えとなっていた。


 これ、もしも村の防衛系のイベントが発生した時には、相当苦労する地形なのではないだろうか……。

 うっ!ふいに寒気が!?こ、これ以上考えるのは止めておきましょう。VR機器が読み取った脳波からランダムイベントを引き寄せるようなことになったら大変だ。

 想像することでおかしなフラグが立ってしまったなんてことになったら目も当てられないです。


 うん。とりあえず落ち着こうか、ボク。

 リアルもいい時間になっていることだし、ここは一旦ログアウトしてあちらでもお昼ご飯にするとしましょうか。土曜日のお昼ということで両親ともにお出かけの予定と聞いていたので、リアルのお家にはボク一人しかいなかったはずだ。


 おデブネズミ(ファットマウス)の大群との戦いもあって、正直いまいちやる気も起こらないので適当手抜き料理にでもしましょうかね。

 カップラーメンにレンジでチンした温野菜をトッピングしただけという女子力を心配されそうな昼食を済ませた後、ささっといくつかの家事を終わらせて再度ログイン。

 村へと監視の目を向けながら、ログアウト直前に宣言した通りみんなでお昼ご飯を食べていた。


 うーむ……。リアルで食べてきたばかりだというのに、しっかりと空腹を感じられるようになっているのだから不思議だよね。

 まあ、こちらでいくら食べたところでどこかのカエルのお母さんのようにお腹が破裂してしまう訳でもなければ、カロリーの過剰摂取で健康がピンチになってしまう訳でもないので、気にせず美味しくがっつりしっかり頂きます。


 さて、肝心の村の方はというと……。


「今のところ、何か特別おかしなところは見当たらないよね?」


 食事をしながらのんびりと観察してみての感想がこれとなる。

 いくつか気になる点はあったけれど、少なくとも目に見えて分かるような大きな事件に直面して、一刻の猶予もないほどひっ迫しているという状況ではなさそうだ。


「とはいえ、いくつも違和感はありますよ」


 ネイトの返答に同意するように、ミルファやうちの子たちが首を縦に振る。


「それはボクも感じていたかな。まず、見張り用のやぐらや小屋はあるのに、大事な見張り役の人がいないのがおかしい」


 もっとも、長年争いもなく担当の領主がしっかりと魔物の討伐を行っているのであれば、絶対にありえないことだとまでは言えないだろう。

 が、思い出して欲しい。現在この『火卿エリア』では絶対君主だった皇帝の権力が低下して、力ある貴族たちが覇権を狙って争いを繰り広げている真っ最中なのだ。


 しかも過去にはこの近くでシジューゴ君たちの御先祖の人たちが集団で森に逃げ出すという事件も起きている。その失敗を元に領主の血族が心を入れ替えたと考えられなくはないけれど、森との交流ができなくなっているような状況に陥ったことを鑑みると望み薄の可能性が大だと思われます。


「通りを行き交っている人の数も明らかに少ないですわ。村の規模からすればこの数倍の人が動いていてもおかしくありませんわよ」

「なにより、農村であるにもかかわらず畑の方に誰一人働きに出ていないというのが考えられません。夜中であるならまだしも、昼下がりの時間帯でこれというのは、異常な事態だと言えると思います」


 各々の得意な観点からミルファとネイトが村のおかしな点を挙げていく。


「そうなるとこの静けさもかえって不気味に感じられてくるね……」


 一見何でもない平和な光景に見えてしまうところがまた性質が悪い。


「今の段階でボクたちの意見をまとめてみると……。ミルファの言った「人が少ない」ことがキーポイントになりそうかな」


 人がいないから見張りを立てることができない。人がいないから畑に人を遣れないということではないだろうか。

 しかし、そうだとするならば新しい疑問が浮かんでくる。

 どうして人が少ないのだろうか?


「どこかに閉じ込められているとか?」

「何のために?いえ、それ以前にそんな特殊な状況であれば、いくら何でもこうやって観察していれば気が付くと思いますけど」


 だよねえ……。逃げ出そうとする内側と、助けようとする外側の両方への見張りも必要だし、食事とかも与えなくちゃいけない。閉じ込めて「はい、お終い」とはいかないのだ。

 仮にそうだとしても地の利がない村の外、つまりはどこかに連れ去られている気がする。


 うん?連れ去られる……?

 単なる思いつきだったけれど、可能性としてはその展開も十分にありかもしれない。

 例えば事前に領主だとか支配者側から要請があったとすれば、森との交易ができなくなると予想できたかもしれない。


「どこかに連れ去られている、ですか……」

「このところの『火卿帝国』の政情不安を考えますと、権力者による強引な住民の連行があったとしても驚くには値しませんわね。そして逆らうことのできない相手からの命令であったとすれば、一見静かな村の様子にも説明がつくというものですわ」


 逆らえない、もしくは逆らうだけ無駄だと思わせる相手ならば、大人しく従うより他はないだろうからね。

 問題は「なぜそんなことをしでかしたのか?」なのだけれど……、さすがにそこまでは分かるほどの情報はない。


 これは本格的に村の中に入ることを検討する必要がありそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] わー、怪しい村~。 規模と比べて、ひっそりして活動量が少ない。 機能してない物見やぐら(防衛設備) 村への道も、利用者が少ない。 戦国時代状態なのも合わせると、現状は…………ロクでもな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ