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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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515 緑生い茂る丘

 森の外縁でエルフお兄さんたちと別れると、ボクたちはそのまま森を脱出したのだった。そこは一面を緑の草が覆い尽くすなだらかな丘陵地帯だった。

 あ、ミニマップ機能が久しぶりに復活したみたいだ。もっとも、初めての場所であることに加えて地図なども見ていないため、周囲数十メートルだけが表示されているだけとなっていたけれど。


「ふいー……!やっとお日様の下に出られたね」


 まあ、小屋の周りは切り拓かれていたのでしっかりとお日様を浴びることができていたのだけれど、それはそれ、これはこれということで。


「薄暗い森の中の移動ということで、ずっと緊張を強いられていましたから。正直ほっとしますね」

「仕方ありませんわ。彼らがいれば安全だと頭では分かっていても、そう簡単に気持ちを切り替えることはできませんもの」


 久しぶりの解放感もあって、ミルファやネイトもぐっと体を伸ばしている。その拍子にどことは言わないけれどたゆんと揺れていて、ほんの少しだけイラッとしたのは秘密。

 気を取り直しまして。『ファーム』からうちの子たちを呼び出しましょうか。


「エッ君、リーヴ、トレア、チーミル、リーネイ」


 森から出たので魔物の強さはボクたちのレベル相応に引き下げられているはずだが、まったく行動に予測がつかない初見の魔物と遭遇してしまわないとは限らない。

 ここはひとまず全力で対応できる布陣を敷いておくべきだろう。という訳で全員集合です。


「準備する間もなく転移させられちゃったから、生息している魔物の情報を全然持っていないのは痛いよねえ……。せめてこれまでに戦ったことのある系統の魔物であれば、対策が取り易くなりそうなのだけど」


 動物型ならば兎に鼠に狼、熊に蜥蜴といったあたりかな。そういえばダイヴイーグルとかライトニングバードといった鳥の魔物も倒しているね。

 おや?何だかんだと結構多い?人型はダークゴブリンくらいしか戦ったことがないとはいえ、これなら意外と何とかなりそうかもしれないですぞ。


「同じ系統の魔物であっても、生息地によって異なった進化をしている場合も多いですから油断は禁物ですよ」


 ネイトいわく、魔物というのは例え外側が似通っていても中身は全くの別物ということも多いのだとか。


「代表的なのは弱点属性やその逆の耐性属性が異なるということでしょうか。それに伴って使用してくる特殊攻撃や魔法の属性も変わってきます。もちろん似通った動作や共通した攻撃方法を取ることもありますから、これまでの知識や経験が無駄になってしまうとは言いませんが、それだけで対処できてしまえると考えるのは危険です」


 そう言えば色違いなだけだからと言って甘く見てはいけないのは、レトロゲームの頃からの定番でしたね。

 昨今では容量の問題などは解決しているので素材を使い回す必要はなくなっているらしいのだけれど、『OAW』の運営のことだから、過去の名作ゲームたちへのオマージュだのリスペクトだのとか言って、わざと似た外見の魔物を用意していそうな気もする。


「そろそろ件の村へと出発しませんこと?いつまでもここにいる方が魔物に襲われる危険が高くなりましてよ」


 うん。ミルファの言うことももっともだ。


「えーと……。確かこのまま真っ直ぐに進んでいると街道に行き当たるから、そのまま道なりに右手方向に向かえばいいのだったよね?」

「彼らの説明が間違っていなければ、そのはずですわ」


 しかし、ボクたちの目的は村の様子を探ることだ。できることならあちらからは発見されないまま、可能な限り近付くようにしたい。


「まあ、でも、村の在り処が分からなければどうしようもないか。とりあえず村が見える所までは街道沿いに進むことにしよう」

「賛成です。下手に勘を頼りにして道なき道を進んで、迷子になってしまっては目も当てられませんから」

「丘によって視線が遮られていますから、いつも以上に魔物の接近にも注意しておかなくてはいけませんわね」


 なだらかでも丘の頂点と谷になっている最も低い場所では数メートルの高さの違いがありそうだ。頻繁に〔警戒〕技能を用いて魔物がいないかを調べながら進むしかない。

 チーミルとリーネイ、そしてリーヴを先頭にしてそのすぐ後ろにボクが付き、ネイトにトレアと彼女に背に乗るエッ君と続き、しんがりにミルファという配置で歩き始めたのだった。


 そうして神経を張り詰めながら足を動かすこと数分、二つ目の丘を登り切ったところで緑の海を横一文字に切り裂くように、踏み固められた道が現れたのだった。


「おおー。絶景かな、絶景かな。で、あの道が例の街道だろうね」


 そのまま茶色の筋に沿って視線を右にずらしていけば、


「村が……、見えない!?」


 残念ながら途中で別の丘に邪魔されてしまい、目指す村を見つけることはできなかった。


「魔物の気配がします!気を付けて!」


 ネイトの鋭い声が響き渡ったのはそんな時だ。


「方角は?」

「前方少し左の……、あの岩近辺です」


 目測でおよそ五十メートル、街道とボクたちのちょうど中間あたりとなるかな。ダメ元で〔鑑定〕技能を使用してみるものの、やはり効果範囲外だったらしく反応はなかった。

 目指す村があるのは右方向なので、街道に平行に進むようにすれば魔物がいる位置からは離れることができなくはないだろう。


「回避できそう?」

「隠れている魔物がどれだけ好戦的なのかによるとしか言いようがありません……」


 こちらは丘の頂上付近にいるということで、間違いなく発見はされているだろうとのこと。すぐさま動こうとしないのは、こちらの力量を測っているためではないか、というのがネイトの予想だった。


「ミルファはどう思うかな?」

「逃げられるものでしたら逃げた方が得策だとは思いますわ。体調こそ万全に近いですが、装備の方はそうではありませんもの」


 ドワーフの里を出発して以降、武器や防具の修復を一切行えていない。そのため、装備品の耐久度の低下が現状ボクたちの一番のウィークポイントとなっていると言えた。


「ですが、もしも追われている状態で逃げた先に別の魔物がいたならば、複数の魔物による挟み撃ちとなってしまいますわよ」


 それはもう本格的に手に負えなくなってしまいそう。ここは多少無理をしてでも戦って切り抜けるべきなのかな?


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