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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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513 三人の男性

「えーと……。改めて、初めまして。シジューゴ君から聞いているとは思いますが、ボクたちは先日魔法陣の暴走に巻き込まれて、こちらに転移してきました。森の平穏を乱すつもりもなければ、森の恵みを荒らすつもりもないので、できれば外に連れて行ってくれると助かります」


 ともかく小屋の中へと案内して、最低限のこちらの事情と要求を伝えてからぺこりと頭を下げる。

 ちなみに、もしもの場合に備えてあえて自己紹介はしていない。仮に森の外で捕まるなどして尋問などをされたとしても、知らないことは答えようがないからね。


「おや?あの子からは、外の村の様子を探ってくれるという話も聞いたのだが?」


 尖った耳、多分エルフなのだろう男性が尋ねてくる。にこやかな表情を浮かべながらも、その目付きは鋭い。一挙手一投足から、ボクたちの為人(ひととなり)を探ろうとしているかのようだ。


 そして赤ら顔なのでシジューゴ君と同じ猿のセリアンスロープらしき男性は、ストレートに興味津々という態度を見せており、もう一人の三角耳の男性、詳しくは不明だけど猫科のセリアンスロープっぽい人の方は、逆にこちらには興味がなさそうな雰囲気を醸し出していた。


 全くの余談だけど、ボクの個人的なイメージだとエルフさんは近所の優しいかもしれないお兄さんで、猿獣人さんは親戚の兄貴、猫科の人は学校の先輩って感じです。

 お名前を聞いていないことだし、以降心の中ではこの呼称でいくとしようか。閑話休題。


 さて、どう返したものか。正確には最初にその話を持ち出してきたのはシジューゴ君の方なのだけれど、エルフお兄さんの台詞から察するに伏せた方が良さそうな気がするね。


「あれは彼から色々とこの森や周辺のことを教えてもらったので、その見返りに提案したことです」


 という訳で、あくまでもボクたちの方から、彼の善意に対するお礼のつもりだったという形にしておきます。


「ただ、詳しく聞いていくとどうにもきな臭い気配が感じられたので、ちょっと脅すような格好にはなりましたけど、最悪の展開についても話をさせて貰いました」


 ハチェットディアーを始め、この森に出没する魔物くらい楽々と倒すことができるだけの力量があったならば、また状況は違ったのかもしれないけれどね。

 外の村に居座っているのが悪漢の一人や二人ならばともかく、二桁以上の人数の集団であれば戦闘になったらまず勝ち目はないだろう。そうなれば芋づる式にシジューゴ君たちの情報があちらの手に渡ってしまうことになる。


 もちろん、そうならないように基本的にはスニーキングミッションを試みるつもりではいたけれど、何事にも絶対ということはないからねえ。


「ふむふむ。俺たちが聞いた話とも合致するな。どうやら嘘はなさそうだ」


 どの口が言うのか。内心で呆れながらも、彼らにも彼らなりの事情があるのだろうと思い、表面上は平静を装う。


 村の様子を確認するのかどうかの選択も含めて、現状では主導権は向こうにある。

 そしてボクたちだけでは単独で森を超えるのが難しい。

 生殺与奪の権利すらも握られているというのは、はっきり言って気分の良いものではないが、騒いだところで悪印象を植え付けるだけにしかならないだろう。ここはぐっと我慢する場面だ。


「それなら、この嬢ちゃんたちを信用してもいいんじゃねえの?」


 ふと、底抜けに明るい声が小屋全体に響く。考え込むようにしていたエルフお兄さんの横合いから、猿兄貴が口を挟んできたのだ。

 顔を見てみると邪気の欠片すら見当たらない。本心からボクたちのことを信用してもいいと思っているようだ。その様子に二人は小さく顔をしかめている。


 ああ、きっと彼は善良な人だし、戦力的にも高い能力を持っているのだろう。

 当然エルフお兄さんたちも信頼を寄せているのだろうが、……うん、まあ、お互いの腹の中を探り合うような交渉事には向いていないと認識しているように思う。

 直情型の傾向がありそうだし、つい思ったことを口に出したり脊髄反射で行動に出てしまったりすることも多かったのではないかな。


「えーと、心中お察しします」

「くっ……!どこの誰かも知れない相手に同情されるなんて屈辱であるはずなんだが、それよりも先にこれまでの苦労を分かってもらえたことを嬉しく思ってしまう自分がいるぜ……」


 猫先輩?お目々から光が失われているようにも見受けられるのですが?

 どうやら苦労というか、普段から色々と猿兄貴の言動に振り回されているようで。三人は外見的に年が似通っているようにも見えるので、いつの間にか周囲から一セットのように扱われているのかもしれないね。


「信用するかしないかはともかく、外の様子を知る良い機会であることは確かだ」


 そう言ってエルフお兄さんが仕切り直そうとする。ちょっと強引な感はあったけれど、あのまま放っておけば自分たちの欠点や弱点を晒すことになると予想したのだろうね。

 実際、猿兄貴に直情傾向があるとボクたちにバレてしまった訳だし、その対応は間違ってはいないと思う。


「あの村との取引がなくなるのは俺たちにとって痛手だからな」


 そんなエルフ兄さんの思惑や心労には気が付かないまま、猿兄貴は失言を追加させていた。

 そうなのかー。「あると便利」という程度かなと思っていたけれど、「ないと困る」くらいにまで彼らと外との関係は深くなってしまっているんだね。


 って、止めて!

 そんな重要な内容をポロリとこぼさないで!


 昔話や故事を紐解くまでもなく、秘密を知り過ぎてしまった者の末路というのは悲惨というのが相場だ。口封じをされてしまうのは、真っ平ごめんですぜ。


「そ、それで、ボクたちは結局、その村に立ち寄った方がいいんですか?それとも立ち寄らずに別の町か村に向かうべきでしょうか?」

「あ、ああ。できれば村に寄ってもらいたいな。そして可能であれば何が起きているのかを探って欲しい」


 さっきとすっかり立場が逆になってしまったことに戸惑いながらも、エルフお兄さんは話を合わせてくれた。


「その依頼はシジューゴ君やあなたたちだけのものではなくて、全員の総意であると受け止めてもよろしいですか?」

「……そう理解してくれて構わない」


 ちょっぴり間がありましたが?

 まあ、全員の賛同を得るというのは意外と難しいものだからね。先にも「頭の固い年寄り連中」なんて台詞も聞こえていたから、長老格のような人たちは説得できていないのかもしれない。


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