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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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511 森は危ない!?

 世界が広い。これはVRのゲーム全体に言える傾向だ。

 そのため、『OAW』では街や町、村への移動を楽にするため、街道やその近辺に出現する魔物は基本的にプレイヤーのレベルに合わせた強さに設定されている。


 さらに言うと、これには技能熟練度の上昇分は加味されていない。

 ボクが初戦闘の折にあっさりとトゥースラットを狩ることができたことの裏には、こうしたシステム的な要素もあったのだった。

 まあ、それがなくても雑魚魔物のトップランカーだから、苦戦することはなかっただろうけれど。


 一方、街道から大きく離れて、平原に山、森や沼沢(しょうたく)地域といった特殊な地形の場所になると、その場所特有の魔物が配置されるようになる。

 こちらの最大の特徴は敵の強さがプレイヤーのレベルに依存していない点だ。

 つまりおよそレベル二十が適正とされる場所に突撃した場合、プレイヤーがレベル一だろうがレベル五十だろうが、敵の強さは変わらず二十レベル前後で登場することになる。


 はい、ここで問題です。

 今、ボクたちが居る場所はどこでしょう?


 正解は『不帰の森』、もしくは『聖域』と呼ばれている広大な森の中です!

 しかも外界にほど近い表層部分ではなく、シジューゴ君たちのような一部の人間だけが自由に行き来できるらしい奥地ときたもんだ。


 いや、これ間違いなくシャレにならない強さの魔物と遭遇するパターンだよね!?


「そんな大事なことはもっと早く思い出そうね、一時間前のボクー!」

「喋っていないでこちらへ早く!」


 遭遇するどころか、絶賛追いかけ回されている最中であります。足場と視界が悪い森の中を、ネイトの先導で辛うじて逃げ回る。

 相手はハチェットホーン。ボクたちの背よりも頭の位置が高いという大型で鹿っぽい外見の魔物だ。


「お肉にできればなかなかに食べがいがありそうなんだけど!」

「今現在、食べられそうになっているのはわたくしたちの方でしてよ!?」


 隣を同じく全力疾走しているミルファが律儀にも突っ込みを入れてくる。こんな状況なのに、慣れって怖いね。

 あ、うちの子たちはその姿が見えた瞬間、一足先に『ファーム』へと避難させています。エッ君はともかく身体の大きなトレアや、速く走ることが得意ではないリーヴに、森の中での逃亡は明らかに不利だからね。


 そして大変遺憾なことながら、彼我の距離は少しずつ縮まりつつあった。

 余裕ぶってそんなやり取りをしているからだ?

 いえいえ、違うの、そうじゃないのです。これにはちゃんとした理由があるのです。


(なた)みたいに鋭くなった角で、枝とか蔦を切り払いながら突進してくるってズルくない?ズルいよね!?」


 こちらは跳び避けかき分け潜り抜けと苦労しているというのに、あちらはそんなこと気にせず一直線に向かってくるという、なんとも理不尽な展開となっていたのだ。


「ぐぬぬぬ……。さっきのピンボールラクーンと言い、この森は一風変わった魔物ばっかりかい!」


 ちなみに、ピンボールラクーンはエッ君並みに真ん丸な体に大きな尻尾を持った五、六十センチくらいのタヌキの魔物だった。その丸い体を大きな尻尾で打ち出して、さらにはピンボールのように木々で跳弾しながら襲ってくるという、はた迷惑な生態をしていた。


 とはいえ、直線的な動きしかできないから、最終的には飛び掛かってきたところを牙龍槌杖でホームランしてやったけどね。


 ただ、これで出現する魔物はボクたちでも楽に対処可能だと思ってしまった訳だから、ある意味自分を囮にした狡猾な罠だったと言えなくはないのかもしれない。


「このままでは、開けた場所に辿り着く前に追いつかれてしまいますわ!」


 危険だからこの手だけは使いたくなかったんだけど、そうも言ってはいられない状況になってきたようだ。


「ミルファはこのまま走って。ボクは〔生活魔法〕の【種火】で足止めできないか試してみるから!」

「森の中で!?火事になったりしたら大事になりますわよ?」

「顔面にぶつかるように一瞬だけ発生させるつもりだから大丈夫!……多分ね」

「そこは言い切って欲しかったですわね!」


 ミルファの非難を聞き流しながら、急ブレーキをかけて振り返る。


「って、近い近い!?」


 思っていた以上の距離の詰まりように慌てて魔法の集中に入る。


「【種火】!」


 だが、その距離が近かったことが幸いして、想定通りの場所、ハチェットホーンの眼前に魔法を発動させることができた。


「キュアアアア!?」


 恐らくは生まれて初めて体験する熱さだったのだろう、甲高い叫びを上げながら仰け反ろうとするも、スピードに乗った身体は簡単には停止できない。

 結局足が絡まるようにして横転したハチェットホーンだったが、そのくらいではスピードを殺すことができずに、そのままボクの方へと滑り込んでくることに……、ってボクの方!?


「にょわああ!?」


 慌ててその場で飛び上がり、足を折り曲げる。

 ダメ、このくらいの高さでは巻き込まれてしまう。

 嫌だよ。これだけ必死に逃げ回ってきたというのに、こんな情けない形で怪我をするなんて絶対に嫌だ。


「こん、の!」


 気合いを入れてぐっと腿を胸へと引き寄せた直後、ズザザザーと盛大に土埃を上げながら、真下を物体えっくすが通り過ぎて行った。

 そのままボクは無事に着地して、ホッと一息を吐く。

 一方の憎いあんちくしょうですが、横転とその後の滑走で目を回しているらしい。


「よくも追いかけ回してくれましたね!」


 この恨み晴らさでおくべきか。もとい、この機会を逃す訳にはいきません!

 牙龍槌杖を取り出して、みんなより一足早く一発お見舞いする。


 ガッキーン!硬質な音を立てて斧刃――刃はないけれど――部分が命中した鉈上の角の一本がへし折れる。


「キュオオオオオ!?」

「うわっとお!?」


 痛みで狂ったような魔物の動きを間一髪で回避してHPゲージを確認してみると、ようやく一割ほど減らすことができていた。


「ムリむり。これを一人で倒すとか絶対無理。さっさとみんなと合流しよう」


 のたうち回るハチェットホーンを残して、急いでミルファとネイトの後を追いかけることにする。


 その後、小屋近くの開けた空間までおびき寄せることに成功したボクたちは、チーミルやリーネイも含めた全員の攻撃によって、なんとかハチェットホーンの撃破に成功したのだった。


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