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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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506 暴走転移で辿り着いた先

 お猿少年とのファーストコンタクトを無事平和的に終えたボクたちは、彼を小屋に招いてお互いの事情やいきさつなどを話し合うことにしたのだった。


「ちょっと待て!めっちゃ矢を射かけられて木から落とされたんだけど!?いや、それよりもお猿少年っておいらのこと!?」

「わずか一文にツッコミどころが満載ですわね……」

「平和的とはいったい?」

「もう!せっかく話を進めようとしているのに、邪魔するのは止めてよ!」

「今のおいらたちが悪いの!?」


 そんな一幕があったかもしれないけれど、それはきっと気のせいなのです。いいね?


「気を取り直しまして。さささ、狭い所ですけど上がってくださいな」

「だから、あんたの家じゃない……。いや、いい。なんだか言うだけ無駄に思えてきた」


 と、お猿少年は途中で言葉を止めてしまう。その表情は何かに疲れ果てたかのようだ。

 うん、間違いなくボクのおちょくり、もとい揶揄い、でもなく軽快な話術によってごっそりと気力と体力を削り取られたからだろうね。

 まあ、こうやって場の主導権を握るためという崇高で重大な使命があったからね。仕方ないね。


「さてと、何から話そうかな。……あ!その前にここはどこなの?」


 それを聞かないとこちらの事情を説明のしようがない。そう思って尋ねたのだけれど、返ってきたのは呆れるを通りこした冷たい眼だった。


「はあ?『不帰(かえらず)の森』を知らないとか、嘘を吐くならもっとましな嘘を吐けよな」


 これはまた物語では常連のお名前が出てきたものだ。だけど『OAW』にそんな場所があったかな?

 みんなに視線で問うてみるも、ネイトもミルファも、そしてリーヴにトレアも首を横に振るばかりだった。エッ君は……、単にみんなの真似をしているだけだね。


「マジかよ……。あんたたち、どこからどうやって来たんだ?」

「どこからと言えば『土卿王国』の南方の山岳地帯からで、どうやっての方は魔法陣の暴走に巻き込まれて、だね」


 改めて言葉にしてみると、とんでもない状況だわね。主に胡散(うさん)臭いという意味合いで。

 そのため、お猿少年の視線が冷ややかどころか絶対零度なものへと変化したのも、仕方がないと受け止めることができた。


「だから、嘘を吐くなら――」

「残念ながら本当の話なんだよねえ」


 まあ、受け止められるのは視線だけで、文句の方まで大人しく聞いてやるつもりはさらさらなかった訳ですが。


不帰(かえらず)の森だっけ?そんな不穏当な名前が付いているくらいだから、本来ならここには外の人間が易々と入ってくることはできなくなっているんでしょう?そんな場所にひょっこり現れたということ自体が、ボクたちの言葉が真実だという証拠になると思うんだ」


 ありがちなのは方向感覚が狂わせられるだとか、意識や記憶があいまいになるといった現象を引き起こす魔法が掛けられている、等といったあたりだろうか。

 小屋の周辺に獣道すら見当たらなかったのも、これに関係していることなのかもしれない。


「うぬぬ……。あんたの言う通り、おいらたちの案内もなしに外のやつらがこんな森の奥深くにまで入ってくることなんてできっこない」


 たち(・・)、ね。コミュニケーションが取れていることからも、彼が森の中で一人ぼっちの生活をおくっている訳ではないだろうと予想していたが、やっぱり他にも仲間がいるようだ。


「それなら、あんたたちは本当に魔法陣の暴走に巻き込まれて『土卿王国』から来たのか?」

「いえす。あ、「証拠を見せろー」とかいうのは勘弁ね。そんな都合のいいものは持っていないからさ」


 そもそも一目でどこから来たのかが分かるようなアイテムがあるなら、最初からそれを見せているという話だ。


「うん。まあ、信じられないけど、信じるよ」


 結局どっちなのよ!?と突っ込みたくなるような回答だったが、それだけにお猿少年の本心だと思えたため、ボクたちも素直にその言葉を信じようという気持ちになったのだった。


「それで改めて聞くけど、この不帰(かえらず)の森は一体どこにあるの?」

「国で言うなら『火卿帝国フレイムタン』の中になるぜ」


 うげげ!これはまた随分と遠く、しかも危険な場所に飛ばされてしまっていたらしい。

 『火卿帝国フレイムタン』はプレイヤーが言うところの『火卿エリア』に該当する、大陸の南東部に位置する国だ。

 先日までボクたちが居た『土卿エリア』は大陸南西部だから、『風卿エリア』のある中央部を通り越して反対側まで飛ばされてしまったことになる。これだけならまだ「ビックリ驚きの新事実!」で終わらせることができたかもしれないのだけれど……。


 ゲーム開始時に少しだけ触れたけれどこの『火卿エリア』、実は現在とんでもなく厄介な状況となってしまっているのだ。


 事の起こりはもはや定番となってきた感のある『三国戦争』だ。

 結果から言えば戦争の舞台となってしまった『風卿エリア』を含めて、全ての国が損害を出すだけで終わってしまったあの戦争だけど、その後の国の立て直しによって、『火卿帝国フレイムタン』は『水卿公国(アキューエリオス)』と『土卿王国(ジオグランド)』の二国とは対比的な展開を辿ることになる。


 ぶっちゃけて言うと、二国が無事に立て直すことができたのに対して、フレイムタンはこの国の立て直しにものの見事に失敗してしまった。

 絶対君主だった皇帝の権力は著しく低下し、代わりに力を持った有力貴族たちが泥沼の権力闘争を始めてしまったのだ。その争いは終わることなく現在も続いている、という内戦どころか群雄割拠な戦国時代となっているのだった。


 そういえば正確なところは不明なままだけれど、クンビーラにちょっかいを掛けてきていたお隣の都市国家ヴァジュラの背後にも、『火卿帝国』の貴族がいるのではないかという話もあったっけ。


「この森から出るのも大変そうだけど、出てから後も面倒なことになりそう……」


 おじいちゃんたちの安否確認をするのも一苦労となってしまいそうだ。

 それというのも町以上の人が多い所に辿り着ければ『冒険者協会』の各支部があるのは他の国や地域と変わらないのだが、それらの支部がそれぞれの土地を実効支配している貴族たちの私兵育成機関へと半ばなり果ててしまっているからだ。


 部外者のボクたちからすれば、国境の街にあった冒険者協会支部のように、腐敗を国に付け込まれる形となっていた『土卿王国』内の支部――ドワーフの里のように、まともな支部が残っていたのが救いかな――に勝るとも劣らない厄介さ具合だと言えそうだわ。


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