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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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505 初手から全開で

 二人からの意見も出揃ったし、ミルファの照れ顔を見てほんわかとなったところで、行動に移るとしましょうか。


「リュカリュカはそれで構わないのですか?」

「そう言えば、あなたの意見は聞いていませんでしたわ」

「ボク?ボクは元々友好的な対応を取るつもりでいたよ。向こうに明確な敵意があるならともかく、今の段階で対立したところで何の益もないもの。ただし、警戒は続けて身の安全を確保した上での話だけれどね」


 二人に意見を聞いたのは、純粋に考えを聞きたいというよりも仲間内での意思を統一しておくためという側面が強かった。

 もちろん、参考にするべきところは参考にするつもりだったよ。さすがにこの短時間では具体的な方法までは思い浮かんでいなかったもので。

 だからこそ、ミルファの「向こうの居場所や人数を把握していることを知らしめる」という案には素直に感嘆したし、すぐにでも実行するべきだと思っている。


「むむう……。わたくしとネイトの意見のいいとこ取りをされた気分ですわ」


 不満げなミルファの言い分に、ふと漫画か何かで読んだ「皆の成功はリーダーの成果、皆の失敗は皆の責任」という台詞を思い出す。

 その後も「それくらいは普段から苦労しているリーダーの特権だ」と続くのよね。うん、いくら何でもこれを口にすることは憚られるわ。


「ソンナコトナイヨー」

「ですから!その片言口調が怪しさ倍増ですの!」


 小声で怒鳴るという器用なことをやってのけるミルファを、ネイトが「まあまあ」となだめる。じゃれ合いに近いやり取りに、どうやら本気で不満に思っていたということではなかったらしいことに気が付く。


 とにもかくにも今のやり取りによって、緊張のせいか知らず知らずのうちに無駄に入っていた力が、いい具合に抜けていったように感じられる。

 この調子なら下手な失敗をすることもなければ、大きな怪我を負うような事もないだろう。


 残る細かい手順などを詰めていき、いよいよ樹上の人物との交渉開始です。


「いいよ。思いっきりやっちゃって!」


 ボクの言葉にリーヴはコクリと一つ頷くと、力を込めて入口の戸を勢いよく開けた。


 バン!

 バタン!


 ……あー、ちょっとばかり勢いが強過ぎたみたいね。

 外へと押し開かれた扉は壁へとぶち当たり、その反動で跳ね返されて元の状態へと戻る、つまりは閉じられてしまったのだった。コントか。


「えーと……、小屋が壊れちゃったら元も子もないから、次は優しめでお願いします」


 要望通りに今度はそっと押し開くリーヴ。蝶番が錆び付いていたのかキイィという甲高い音を残して扉が開かれていく。

 見えてはいないはずなのに、遠く木の上に隠れているだろう人もまたボクと同じように微妙にいたたまれない表情になっている気がした。


「あ、えー……。そこの樹上の人物に告げる。そこにいるのは分かっている。大人しく出てきなさい。繰り返す。木の上にいるのは分かっているから、抵抗せずに出てきなさい!」


 一歩小屋の中に入った位置だが、向こうからははっきりとボクの全身が見えているはずだ。

 メガホンでも作っておけば良かったかな。普通に大声を出しただけなので何だか締まらない絵面となってしまったように思える。


 しかし、一分ほど待ってみてもボクの呼びかけに反応はなかった。

 これで誰もいなかったり、移動した後だったりするとかなり情けないことになりそう。


「大丈夫、しっかりと伝わっていますよ。そして息を潜めて隠れているだけで、あの場からは動いていません」


 内心の不安を察知したかのようなジャストタイミングで、ほんの少しだけ隙間を開けた窓から外の様子を伺っていたネイトが〔警戒〕を使って得た情報を教えてくれる。


 ちなみにネイトだけでなくミルファとエッ君、さらにはチーミルとリーネイも一緒になって窓の隙間から覗いています。

 リーヴは扉を開けた後は直接見えない場所へと身を隠しながら、もしも矢や魔法などの攻撃が飛んできた時にはボクを守れるように、盾を構えて待機していた。

 そして残るトレアはというと、


「ハッタリだと思っているようだね。それなら、さっきの言葉が嘘じゃないって証明してあげる!」


 こんなこともあろうかと!

 すぐに矢を放てるよう準備してもらっていたのだ。


 リーヴを先頭に小屋から出たボクたちの背後から、一際大きなトレアが姿を現す。


「当てちゃダメだよ」


 再度の念押しにニコリと笑顔で応えると、彼女は気負った感もなく弦を引き矢を放つ。

 一拍の間をおいて生い茂る葉の陰へと矢が飛び込んだかと思えば、カコンと幹か枝へと突き立つ音が聞こえた。


「う、うわああ!?」


 直後悲鳴を上げて落ちてきたのは、赤ら顔の……、お猿?


「おおう、まさに猿も木から落ちる……!」

「誰が猿だ!おいらは猿のセリアンスロープだい!というか、お前たちが落としたくせに他人事みたいに言うなよ!?」


 地面に激突して「ぷぎゃ!?」とか悲鳴っぽいもの聞こえていたような気がしていたのだけれど、ボクの呟きを拾って即座に突っ込んできたね。

 頭から落ちたように見えたのは気のせいだったかな?


 そんなお猿改め猿のセリアンスロープ君は、十代初めくらいに見えた。

 リアルでなら、小学校高学年もしくは中学校入学直後くらいだろうか。ギリギリ危険な病気を発症する年齢を回避できている、かも。


「うんうん。何はともあれ子どもは元気が一番だね」

「子どもじゃねえし、お前らのお陰で元気じゃなくなるところだったよ!脅すにしても少しは離れた所に撃ち込むものじゃねえの!?頭の上一センチって何だよ!?髪の毛が散ってちびるかと思ったぞ!」

「あちゃー。その年でお漏らしはいただけないかな」

「漏らしてねえよ!そのくらい驚いたって言っただけだ!」

「ふふん。うちの子の弓の腕前は凄いでしょ」

「ちょっとは反省しろよー!!」


 恥ずかしさからかそれとも怒りのためなのか、赤い顔をさらに真っ赤にさせながらお猿少年が吠える。


「ああ……、こうなってしまうともう、簡単にはリュカリュカのペースから逃れられないでしょうね……」

「あの子のトラウマになってしまわないことを祈るのみですわ」


 いやいや、お二人さん。子ども相手なのだからボクだってちゃんと適度なところで控えるつもりでいるからね。加減を知らないいぢめっ子のように言われるのは心外なのです。


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