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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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502 森の朝

 人のお布団――マントだけど――に潜り込んでいたエッ君に対して、他のテイムモンスターたちはと言いますと……。


 リビングアーマーのリーヴは、眠る必要がない魔法生物という特性を十二分に発揮して、入口の扉近くで夜通しの番をしていたらしい。

 あれ?以前居眠りしていることがあったような?

 後から聞いてみたところ、眠らなくてもいいけれど、逆に眠ることもできるのだとか。ゲーム的には睡眠なしでも疲労などのバッドステータスを発症しない、という扱いみたいです。


 トレアは『ファーム』の中だ。別に眠る姿を見られたくないとかそう言うことではなく、純粋に場所の都合です。なんと言ってもあの子には馬の身体があるからね。

 いくら掘っ立て小屋どころではなくしっかりした造りではあっても、そこはやはり休憩用の山小屋だ。床板を張られていない土間部分も含めても、精々が三メートル四方くらいしかない。

 見張り役のリーヴに身体が小さいエッ君はともかくとして、ボクとミルファにネイトの三人が横になってしまうと、それだけでほとんどの面積を占領してしまっていたのだった。


「あ……、ふぅ。ちょっと外で顔を洗ってくるよ。トレアたちも外に出してあげないといけないしね」

「ああ、それなら後で桶に水を入れておいてくれませんか」

「ネイトとそこのお寝坊さんの二人分だね」


 気持ちよく眠っていたところをコロコロと転がったためか、まだ覚醒しきっていない様子のエッ君を抱き上げて扉へと向かう。


「おはよう、リーヴ」


 声を掛けるとぺこりと頭を下げて返してくれる。

 と、外へ出ようとしたボクを押しとどめると、少しだけ扉を開けて外を伺ってくれる。身体は小さいながらも、態度は立派な騎士様そのものだね。

 用心ついでに技能の熟練度アップも兼ねて、ボクも〔警戒〕で魔物の気配がないか探っておくとしましょうか。


「うん。大丈夫そうだね」


 リーヴの方も異常は見当たらなかったようで、コクリと頷いてから扉を開けてくれた。

 途端に朝の鮮烈な空気が入り込んでくる。

 特に森の中だということもあって木々の香りが強烈だ。これは慣れていない人にとっては心地良いを越えて、きついと感じられるのではないかな?

 NPCでもミルファのような都会っ子だと顔をしかめることになるかもしれない。後で調子を崩していないかネイトに確認してもらっておこう。


 ちなみに、ボクはリアルでも田舎暮らしのため、学校を始め神社や小さなお(やしろ)にお寺など、木が多い環境には慣れている。

 リュカリュカとしても辺鄙(へんぴ)な田舎育ちという設定だから全くもって問題ないです。


「トレア、チーミル、リーネイ、朝だよ。起きてる?」


 アイテムボックス越しに『ファーム』へと呼びかけてみれば、目の前が淡く光って三人が現れる。

 すっかり目が覚めている様子のトレアとリーネイに対して、チーミルはまだと夢の中であるらしい。むにゃむにゃと口元が動いているのが可愛らしいです。


 ちなみに、いざという時には最大戦力で対応するため、昨日――リアル時間だと二カ月近く前になるけれど――の時点でミルファたちとのパーティーは解除してあった。

 よって、問題なく全員を呼び出すことができたという訳だ。


「分類的にはわたしたちもリーヴと同じく魔法生物となるはずなのですけれどね」


 そんなチーミルの姿に目を向け、苦笑しながらリーネイが言う。

 つまりは眠らなくても大丈夫、ということのはずなのだけれど見事に熟睡しきっているわね。


「うーん……。本体(ミルファ)の状態に影響されているのかな?」

「どうなのでしょうか?ないとは言い切れないとは思いますが、調べてみた訳ではないので何とも言い難いですね」

「まあ、いいか。顔を洗いに出てきたのだけど、二人も水はいるかな?」


 いつまでも地面に寝させてはいられないということで、トレアの背中にチーミルを乗せつつ二人に尋ねてみる。


「お願いします。えー、できればチーミルの分も」

「はいはい。了解だよ」


 そんなこんなでみんなで顔を洗ったり、エッ君が桶に飛び込んでしまい顔どころか身体全体を洗うことになったり、いつまで経っても起きないチーミルの首元に水を垂らして「ひゃう!?」と飛び起こさせたり――小屋の中からも「ふにゃあ!?」と叫び声が聞こえてきた気がしたけれど、きっと気のせいだろう――と、騒がしくも楽しく身支度を終えたのでした。


「それにしても、ここは一体どこなんだろうねえ?」


 視界の片隅に表示させたままになっていた地図には、一言「アンノウン」とだけ表示されており職務を再開しようとする気配は見られなかった。


「しかもその原因が、不完全な転移で飛ばされたせいなのか、それともこの場所の特性のためなのかすら分からないのが困りものだよね」


 原因が場所に起因するなら、例えばいわゆる『迷いの森』のような所であれば、ここから脱出することで地図機能が復活する可能性はある。

 一方で転移による影響だとすれば、場所を特定できる行動、例えば誰かに教えてもらうとか、看板などの地名が書かれているものを見つけるといったことが必要になってくるだろう。


「せめてミニマップが機能していれば、しらみつぶしに探索をするっていう手も取れそうなんだけど……」


 方角の表示すらなくなっているので、下手に動けばこの場所に返ってくることすらできなくなってしまいそうだ。

 ミルファは生まれも育ちもクンビーラの都会っ子だし、チーミルも彼女の分身に近いため森の中を動き回るような経験はない。

 エッ君なんて生まれたばかりだからね。当然のようにボクと共有をしている分の経験しかない。


 トレアはケンタウロスなのでサバイバル能力自体は高いようなのだが、出身が『土卿エリア』の高原地帯であるためか、ここのような森林地帯は初めてで戸惑っている様子だった。

 木々が障害物となってしまい、得意の弓が威力を発揮できないかもしれない。これは魔法による遠距離攻撃にも当てはまることなので、ボクも注意しておかないと。


 そうなると、頼みの綱は冒険者経験の長いネイトと彼女の分身のような存在のリーネイ、そして同じく放浪経験が長かったらしいリーヴの三名ということになりそうだ。

 もっとも、そんな彼女たちであっても「どちらに向かえば森から出られるのかは分からない」とのこと。


 やれやれ。これは想像していた以上に厳しい状況なのかもしれませんですぞ。


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