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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十四章 リアルの平凡かもしれない日常
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486 文化祭当日・朝

 そうこうしている内に日々は過ぎゆき。


「あっという間に文化祭当日です!」

「突然何を言い出すかな!?というかそれ、文化祭実行委員の俺が言う台詞だよな!?」


 細かいことは気にしちゃいけません。だって、


「結局あの日は居残っていた全員にコロッケを奢ることになってしまったものね」


 なんてことも思い出されてしまう訳でして。


「ぐはっ……」


 ほら、案の定長谷君はショックで蹲ってしまったよ。


漢気(をとこぎ)を見せたいお年頃なのは分からなくはないけど、翌日からの昼食のお金がなくなるほど奢るのは正直どうかと思うわ」

「あれは……、痛ましい事件だったな」

「元凶になったお前らが言うなよ!」


 便乗してきたクラスメイトたちに、うがーっ!と吠える長谷君です。

 うんうん。強く生きるんだよ。


「色んなことがあったけど、今日も私は元気です」

「俺は元気がなくなったよ……」

「あー……、どんまい?」

「なぜに疑問形か」


 大きくため息を吐いた彼を慰めている、ように見せかけて弄り続ける男子たちは容赦がないなと思いました、まる。


「それにしても……、乗った私たちが言うのもなんだけど、三峰さん今日はやけにテンション高くない?」


 そうかな?確かに文化祭ということで少しはハイになっている気はするけれど、それはクラスメイトの皆や学生全体にも言えることだと思う。


「里香が遊びに来るかもしれないから、だと思うわ」


 いつの間にかやって来ていた雪っちゃんが女子たちにそう話すと、たちまちにざわめきが大きくなっていく。

「え?三峰会長が来るの!?」


 彼女はもう会長じゃないよ、というのは無粋な突っ込みかな。ボクと呼び分ける意味合いもあったのだろうし。


「私が聞いた話だと、まだ確定はしていないみたいだったけれど。まあ、優のあの態度からすると、本決まりとみて大丈夫だと思うわ」


 目配せに頷くことで応えると、ざわめきが一段と大きくなる。

 約半数がボクたちと同じ地元の中学出身者というのはこのクラスでも変わらない。その上、同じく生徒会のメンバーだった雪っちゃんや、そこに入り浸っていたボクがいることから何かと話題に上ることが多かったため、クラスメイトであの子のことを知らない人はいないほどになっていたのだ。


 ちなみに、里っちゃんは中学の生徒会長時代にも地元の中学校の代表として、生徒会顧問の先生と一緒にうちの学校の文化祭を訪れている。

 その際、様々な部活の屋台から色々と差し入れをされたそうで、引率の先生共々その日は晩御飯が入らなくなるほどだったのだとか。

 当時から既に彼女のハイスペックさは有名になっていたから、今から考えると駄目で元々という部分はありながらも、こっそりと勧誘していたのではないかと思う。

 まあ、結局は県内でもトップレベルの進学校に通うことになった訳ですが。


 さらに余談ですが、実はその時の話を聞いたことが、ボクがこの学校に進学する最後の一押しになっていたりして。

 もっとも、これについては誰にも話してはいなかったりします。

 いや、だって、屋台の食べ物が美味しかったという話だからね。どこからどう見ても食い意地が張っているようにしか見えない訳で、思春期の乙女としてはさすがに口に出すのは(はばか)られてしまうのですよ。


「それじゃあ、三峰さんの担当の時間を午前中だけに変更しておく?」

「それはしなくても大丈夫かな。本人も正確な時間は分からないと言っていたくらいだから」

「だけど、せっかくなら一緒に文化祭を回った方がいいんじゃないか?他のやつとの折り合いがあるから担当時間をなくすことはできないけど、変更するだけならできると思うぞ?」


 クラスでの出し物、キーホルダー釣りの担当時間は部活組が一時間で、残る面子が午前と午後のそれぞれ一時間ずつの計二時間となっていた。


「平気へいき。家庭の事情や急用ならともかく、個人的な都合で迷惑をかける訳にはいかないもの」


 お客の入り数次第のところはあるけれど、呼び込みに受付、案内と説明、さらには代金の受け取りや景品の交換とやるべき仕事は結構多い。

 もしもの時に備えての人員配置にしてあるので、急な入れ替えはトラブルを誘発する原因にもなりかねないのです。


「里っちゃんは里っちゃんで方々に挨拶回りをしなくちゃいけないだろうしね」


 当然ながら彼女にもボクを介しない、またはボクとは繋がりのない友人もいますので。


「それに何より、里っちゃんほどの美少女ですよ。私が担当時間だから動けないことを理由に居座ってもらえば、それだけで他のお客さんを呼び込むいいネタになると思わない?」


 ニヤリと笑ってそう告げると、クラスメイトたちは一瞬目を丸くした後、ボクと同じ素敵に不敵な笑顔を浮かべて首を縦に振ったのだった。


「ふはははは!勝ったな!」

「おいこら、即座に負けフラグを建てるなよ!?」


 そうだよ。ここで上手くお客さんを集めて売り上げ上位を獲得しないと、長谷君のお昼ご飯がとっても貧相なことになってしまうのだから。


「でも売り上げの上位でもらえる商品券って千五百円分だろ。一日五百円以下に抑えても三日くらいしかもたないんじゃないか?」

「そこはほら、安い駄菓子系で食い繋ぐんだよ、きっと」

「お湯を掛ければラーメンになるというものもあってだな」

「それなら安売りのカップラーメンの方が美味いしお得じゃね?」


 そこで自炊ならぬ自分でお弁当を作るという発想にならない辺り、このクラスの男子連中のお料理スキルはお察しレベルということだね。

 まあ、気持ちは分からないではないかな。


「料理そのものは嫌いじゃないけど、その分朝早起きしてまでとなるとね……」


 作る手間暇に加えて見た目や栄養価まで考えるとなると、学食とか購買のお弁当で済ませる方が結果的にバランスの取れた食事になる気がしてしまうのだ。


「そう?慣れればなんてことないよ」

「そうそう。慣れれば茶色一色(おにくづくし)でも気にならなくなるから」


 などと女子力の高い発言をする子たちもいるが、だからその慣れるまでが大変なのだと言いたい。

 いや待って。いくら成長期でスポーツ少女だとしても、茶色一色(おにくオンリー)なのは乙女的に色々とまずいと思います!?


 結局、文化祭開始の放送があるまでボクたちのクラスでは延々とお弁当談議に花を咲かせることになるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] >茶色一色 ソース焼きそば「やあっ!」 から“揚げ”「呼んだかい?」 厚揚げ「お肉ばかりが、茶色じゃないぜ?」 白身魚フライ+ソース「んだんだ」 お稲荷さん「ソースや揚げ物こそ、茶色代表だ…
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