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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十三章 暗い地面の下で
467/933

467 重要アイテム?

 前回のお話を三行で説明。


 穴に落ちた。

 壁の明かりを引っこ抜いた。

 どこかで聞いた名前が!?


 しれっと動力源として使用されていた緋晶玉だけれど、この地下施設が稼働していたのは地上の集落の住人がドワーフの里へと移住する以前の話だよね?

 つまり、ざっと数百年以上前ということになる訳でして。「その割に空気がきれいですよね?」系の突っ込みはなしの方向で。究極的には「ゲームだから」ということになってしまうので。

 ああ、でも、長い年月が過ぎている、という部分だけは採用かな。


「いくら消費が少ない簡単な装置だとしても、何百年も使用できるとかあり得ないでしょ……。一体どれだけの魔力を内包しているのよ……」


 しかもこの明かりに埋め込まれているのは欠片ですよ、欠片。見える限りではボクの小指の先、一センチメートルにも満たない大きさでしかない。

 リアルに当てはめるとボタン電池くらいかな?あれって小物とかに使われていることが多いせいなのか、取り換えてもいつの間にか電池切れになっている印象なんですが……。


 そういえば、ドラゴン風のガーディアンゴーレムも緋晶玉を動力にしていたかもしれないのよね。

 あちらは欠片ではなく拳大ほどの大きさの物が二つだったけれど。


「蓄魔石も今日では製造が確立されており、大都市では様々な点で効果的な運用がされていると喧伝されていますが、それも魔力の再充填や交換を前提としているそうですからね。魔力の含有量という点では緋晶玉の圧倒的勝利ということになりそうです……」


 むむう……。別に今が一番優れていなくちゃいけない、だなんて言うつもりはないし、過去の優れた思想や技術があってこそ、今日の発展があるということも理解しているつもりだよ。

 だけど、足元にも及ばないと明言されると、やっぱりちょっとは悔しく思えてくるではありませんか。


「先程から何やら考え込んでいるようですが、気になることでもありましたか?」


 問われて若干下がっていた視線が普段通りに戻るミルファ。その目も虚ろだったり明後日の方を向いていたりする訳ではないので、思い悩んでいたということではなさそう。

 ネイトが言ったように疑問に感じたことに意識を集中していたみたい。

 さてさて、NPCである彼女からはどんな意見が飛び出してくるのかな?


「ええ。やはりおかしいですわね。これほど優れていますのに緋晶玉はあまりにも無名過ぎています。記憶を思い返してみましたけれど、わたくしが見たことがないどころか、お父様たちの会話の話題にすら上ったことはなかったはずですの」


 そういえばクンビーラのお城に報告に行った時も、居並ぶ上位貴族たちの誰も緋晶玉のことを知らなかったのだよね。

 これがまあ、辺境の地方都市国家であるならば納得できなくもないのだけれど、クンビーラは自由交易都市をうたっていて、『風卿エリア』のものを中心に様々な物が集まってくる街でもあるのだ。


 まあ、ゲームの都合上ボクがスタート地点に選んでしまったことで、極端に珍しい物や高価だったり貴重だったりする有用なアイテム類は見かけないようになっていたのだけれど。

 実際に他の街、シャンディラなどをスタート地点にしたプレイヤーさんによると、クンビーラに行けば――代金的なものは必要になるけど――手に入らないものはないのでは?と思うほどに品揃えが豊富だったそうだ。


 話を戻そう。つまりミルファが言いたいのは、それだけ物が集まる都市であるにもかかわらず、関係者の誰一人として緋晶玉のことを知らなかったのは変だ!ということなのです。


「加えて、裏社会を渡り歩いていたエルもその存在を知りませんでしたわ」


 時に裏社会の方が表よりもたくさんの情報が飛び交っている、というのはリアルとも共通している?ことなのかもしれない。

 そんな場所に身を置いていただけでなく結構有名だったらしい――でも、裏社会で有名って、実はダメなのでは?――カンサイ弁エルフちゃんの〔鑑定〕ですら、緋晶玉という名前と魔力が残されているかどうかが分かっただけという有り様だった。

 技能の熟練度的にボクよりも数倍は優れているはずだったにもかかわらず、だ。


「ネイトはわたくしたちと出会うまでの旅の最中に、緋晶玉という名を聞いたことはありまして?」

「……ありませんね。ですがそれは、わたしが未熟だからなのでは?」

「そんなことないよ。おじいちゃんだって何も言ってこなかったくらいだもの。冒険者の間にも緋晶玉の名前は知られていないんだと思う」


 あの地下施設や空飛ぶ島の情報が漏洩した時のための対策の一つとして、クンビーラでは冒険者協会のクンビーラ支部へと協力を求めることにしていたはずだ。どちらかというと、秘密を共有する仲間として引き込んだという方が適当かもしれない。

 そしてその情報は支部長であるデュランさんから、少なくともゾイさんやサイティーさん、ディラン(おじいちゃん)といったクンビーラを拠点としている高等級冒険者たちに知らされたことだろう。

 それなのに、土卿王国へと入国する時におじいちゃんは何も言ってこなかった。


「緋晶玉のことは本当に何も知らなくて、アドバイスのしようがなかったんだと思う。……で、ミルファはその現状がおかしいと感じたんだね?」

「その通りですの。表社会だけでなく裏社会も、そして自由に世界を行き来する冒険者たちですら知らないというのは、いくら何でも不自然過ぎますわよ。まるでその存在を意図的に隠されていたようですわ」


 うん。案外ミルファのこの指摘こそが、真実という的を射ているのかもしれない。


 クンビーラ近郊の地下施設には、空に浮かぶ島の絵に並んで、機械を取り巻いて人々が喜んでいる絵や緋晶玉の採掘現場と思われる絵も飾られていた。

 改めて考えてみると、あの機械もしくはそれをさらに発展させたものを使って島を飛ばしているのではないだろうか。

 そしてそのエネルギーの源こそが、緋晶玉だったとすれば……。


「大陸統一国家が情報を隠したっていう可能性もありそう」


 ボクの予想にミルファとネイトが目を丸くして絶句する。さすがにここまでの大物が関わっていたかもしれないとは想像もできなかったみたいだ。

 でも、そう考えるのが一番しっくりくるのよね。


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