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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十二章 山高く谷深い場所で
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458 ばーさーく

 こうして、お互いに防御主体の動きとなったことで膠着状態に陥るかと思われたところで、ネイトの読み通りボクたちがもう一体のマーダーグリズリーを倒して救援に駆け付けることとなった。


「お待たせ!うわ、凄い!よくこれだけダメージを与えられたね!」

「エッ君とミルファが頑張ってくれましたから」


 ボクたちが辿り着いた時点で、マーダーグリズリーのHPは四割を切ってもうすぐ三割に差し掛かろうかという頃合いだったのだよね。

 ネイトが得意げに答えたのも納得の戦績です。


「とは言っても、防御を固められてからはこちらの攻撃のほとんどが防がれている状態ですけど。……って、リュカリュカもリーヴも傷だらけではありませんか!」


 お、おおう!?いきなりの彼女の調子の切り替わりにビクリと肩を跳ねさせるボクたち救援組です。

 いやあ、戦闘中は一度でも攻撃の勢いが途絶えてしまうと手痛い反撃を受けてしまいそうで、HPを回復する精神的な余裕がなくなっていたのだよね。

 勝利した後もこちらの面々の様子が心配で、ついつい休む暇もなく駆け付けてしまったのだった。


「トレアは……、平気なようですね。とにかく二人には回復魔法を掛けますからじっとしていてください」


 有無を言わさず【ヒール】でボクたちの傷を癒してしまうネイトさんでした。

 よくよく考えてみれば満身創痍の状態で割って入られても邪魔になるだけだよね。安全を確保できた時点で、万全とまではいかなくても行動にマイナスの影響が発生しない程度までは回復を行っておくべきだったわ。


 パーティーの分断という不利な状況で戦闘になってしまったことと、油断してふっ飛ばされてしまったことに加えて、これもまた反省点だわね。

 ……おんやあ?今回やたらと反省点が多くない!?


 ううぅ……。後からのネイトとミルファの追及が怖い。


 と、ひとしきり落ち込んだところで目の前の問題の解決に動き出しましょうか。

 え?嫌なことを先送りした?HAHAHA!何のことやらわかりませんね!


 まあ、実際のところ、生き残らなければ反省会もできないからね。この戦いをボクたちの勝利で終わらせるということは、絶対に必要なプロセスなのですよ。

 もっとも、ミルファたち三人だけで守勢に回らざるを得ないところまで追いつめていた訳で、そこに相方の一体を倒したばかりというボクたちが加われば、苦労することなく倒しきることができるだろう。この時点では全員がそう考えていた。


「よし。それじゃあボクたちも攻撃に加わろう」


 向こうが守りに入っているというのであれば、それを上回るだけの攻撃で飽和させてやればいい。何とも脳筋な考え方だということは理解しているけれど、これもまた真理の一つだったりするのよね。


 人数が増えたと目に見えて分からせるために、ネイトの守りをトレアに任せてボクとリーヴは前線へと向かう。

 そして早退すると同時に、ボクたちはさっそくとばかりに攻撃を行っていった。


「あらあら、ようやく到着ですの。あれだけのことを言っておきながら、随分のんびりとしていらしたのね」

「ふふん。それでもボクたちの方が先に倒した事実は覆らないからね」


 ボクたちの参入で人心地つけたのか、皮肉を飛ばしてきたミルファと軽口の応酬をする。

 が、そんな余裕をかましていられたのもそこまでだった。


「グルォ、グワアアアオオオオオオオォォォ!!」


 突如マーダーグリズリーが衝撃を伴いそうな大音量で咆哮を始めたのだ。

 しかし、それの本当の恐ろしさは別の所にあった。悲痛でいて哀切。聞く者の心をわしづかみにして戦意を喪失させる効果を持ち合わせていた。

 単なる吠え声であればそうはならなかっただろう。恐らくはつがいの魔物固有の特殊な技であると思われます。つがい相手を亡くしてしまったことへの慟哭(どうこく)ということなのだろう。


 かくいうボクもものの見事にそれの影響を受けてしまっており、先の冷静な推測はその副産物という訳だったりする。

 なんて他人事のように言っているけれど、敵の眼前で戦意喪失とか滅茶苦茶ピンチが危険な状態だよね。


 しかも六つ足熊さん、何だか足下から赤黒いオーラのようなものが噴出し始めているように見えるのですが?

 これっていわゆるバーサークとか狂乱とかいうやつなのでは?

 だとすればピンチが危険どころか、その上に絶体絶命でやばいという形容が付くことになりそう。


 まったくもって当たって欲しくはなかったのだけれど、この予想はものの見事に的中することになる。

 つがい相手を失ったことで狂乱化したマーダーグリズリーは、守りに徹していたそれまでとは打って変わって攻撃一辺倒へと方針を百八十度激変させたのだ。

 その上これまでのダメージを一切無視した動きとなっていたのだから性質が悪過ぎる。


「ゴラア!」

「リーヴ!?」


 最初にその餌食となってしまったのはうちの守護神的存在のリーヴだった。

 前足の内の一対と相当のダメージが蓄積していたはずの後足まで使った素早い突進からの、残る一対の前足を用いたベアクロー二連撃に襲われてしまったのだ。


 辛うじて盾を構え直すことができたようで、先ほどのボクよろしくふっ飛ばされるだけですんだようだが、もしも事前にネイトからの回復魔法を受けていなければ致命傷になっていた危険性すらあった。

 リーヴは先の戦いの時にももう一体から執拗に狙われていた。もしかするとこのマーダーグリズリーのつがいたちは、防御力が高い相手や盾役の相手を優先して排除する性質を持っていたのかもしれない。


 盾役がいなくなってしまったことで、戦いはボクたちにとって不利な状況へと引っ繰り返されてしまった訳だが、一つだけプラスに働いた要素があった。

 仲間が攻撃されたという事実に、喪失させられていた戦意が一気に再燃したのだ。


「よくもリーヴを!エッ君、いきますわよ!弔い合戦ですの!」

「ちょっ!?ミルファもエッ君も、リーヴは死んでないからね!手当はネイトに任せたよ」

「もちろんです!絶対に死なせたりはしませんから!」


 ネイトさんもですかい……。確かにリーヴは少なくないダメージを受けることになったけれど、命の灯火が消えかけているような危機的な状態ではないから。


「だけど、うちの子に手を出した落とし前は付けてもらわないとね。しかもあんな不意討ちじみたやり方をするとか、許せない……!」


 怒りの度合いで言えば、ボクだって仲間たちには負けていないのだ!


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― 新着の感想 ―
[一言] よし。 ならば狙うはあの場所だ! そう、 お尻へと【ア○スボール】を。 いやむしろ、ハルバートで直接ブッスリでもOK(ハイライトの消えた目)
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