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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十章 土卿王国の旅路
426/933

426 三人目? いえ、五人目です

 ケンタウロスちゃんのテイムを終えると、行商人トリオが興味深そうにこちらを見つめていた。


「ほお……。魔物のテイムっていうのはこういうものなのか」

「いやはや、珍しいもの見られたもんだ」


 テイマーの仲間がいるならいざ知らず、その他冒険者やまして一般人が魔物をテイムする瞬間に立ち会うことなどまずないことのはずだからね。

 あちこちを旅して回っている行商人だって、それは同じことだろう。

 護衛を頼むこともあるのだから、町中の人間よりは機会があるだろうって?


「そりゃあ、護衛の依頼を受けた冒険者がテイマーだったことはあるが、確かそいつだって既に限界までテイムをし終えていたよな?」

「まあ、少しでも戦力を上げようとするのが普通だから、リュカリュカちゃんのようにテイムの空きを作っておくやつなんていないだろ」


 ということであるらしい。


「ああ、でも、サモンの方は見たことがあるって言っていた同業者がいたぜ」


 対象が目の前に居なくてはいけない<テイマー>とは異なり、<サモナー>にはそうした制限がない。そのためか〔召喚〕する瞬間を見世物にする人も結構いるそうだ。

 運が良ければレアな魔物を目撃することができるとあって、なかなかに繁盛しているとのこと。


 これはそれぞれの世界に所属するNPCだけではなくプレイヤーでも同様で、『異次元都市メイション』でも有志の協力の元プレイヤーイベントとして定期的に開催されているらしいです。

 ボクは興味がなかったので覗いたことはなかったけどね。


「わたくしたちは二度目ですわ」

「まあ、そういうことになるのでしょうね」


 ふふんと胸を反らして自慢げに語るミルファに対して、ネイトがどことなく歯切れの悪い言い方になったのは、チーミルとリーネイをテイムした時のことを思い浮かべていたからだと思われます。

 ある意味自分がテイムされたようなものだから、第三者的な視点に立ち難いのかもしれない。


 ケンタウロスちゃんとの敵対一歩手前の緊迫した空気はすっかり消え失せ、のほほんとした会話が続いていたがボクがそれに入り込む余裕はなかった。

 というのもテイムと同時に発生する重要任務を終えることができていなかったからだ。


《テイムしたケンタウロスに名前を付けてください》


 インフォメーションの一文は、相変わらず視界を埋め尽くすかのようにデカデカと表示されていた。

 それどころか、時折虹色に輝いてみたり点滅してみたりウェーブのような動きをしてみたりとやりたい放題となっております。

 ああ、鬱陶しい。


 イラッとくる気持ちを抑え込みながら、良い名はないかと頭を捻らせる。

 ケンちゃんタウちゃんロスちゃんは却下の方向で。

 さすがにそこまで安直なのはちょっと、ね。それ以前に響きが可愛くないので。


 ついでにネットで検索もかけてみようか。

 ゲーム内からだと色々と制限を受けるため調べものなどには余り向かないのだけれど、せめて何か取っ掛かりくらいは見つけておきたいのよね。


 ふむふむ。ケンタウロスの英雄のケイロンさんですか。

 ほうほう。他の英雄たちの導き手でいて座になった人なのね。

 いて座、サジタリウス、南斗六星……。止めよう。これ以上先に進むと別方面で色々と危険な気がする。主に世紀末でヒャッハーな方面で……。


 他には……、おや?ヤグルマギクの学名か何かがケンタウロスに由来するとな?

 セントウレア?カタカナ表記だといまいちケンタウロスとの一致点が良く分からないけれど、女の子だしお花の名前を由来にするというのは悪くないかもしれない。


「発表します!ケンタウロスちゃんの名前は『トレア』に決定です!」


 おお!という歓声と共にパチパチと拍手までしてくれる律儀な行商人トリオです。

 当のケンタウロスちゃん改めトレアは、名前を与えられたことの喜びをかみしめながら、テレてれと照れまくっております。


「リュカリュカにしては珍しく凝った名前でしたわね」


 ミルファさんや、何ゆえ上から目線な発言か?

 まあ、うちの子たちの名前が比較的分かり易いものとなっていることは認めるけどさ。


 その分かり易いお名前のエッ君とリーヴだが、新しい妹分を構いたくて仕方がないようで、テイムして以降は片時もトレアの側から離れようとはしなかった。

 エッ君に至ってはずっと彼女の背中に乗りっぱなしだよ。

 ちょっぴり羨ましいです。


「これでリュカリュカちゃんも三体のテイムモンスター持ちになったのか」


 ふと、アッシュさんたちの話し声が聞こえてくる。


「あれ?レベル的にはまだテイムできる数に枠があるんじゃないか?」

「何を言ってるんだよ。ミルファちゃんとネイトちゃんがいるだろうが」

「ああ、そうか。これ以上多くなっちまうとパーティーを組めなくなるのか」


 パーティーの最大人数についてとか、何ともメタ的な会話だわね。

 普通ならば六人を超えたところでパーティーを組むことはできるだろうと考えるところだ。が、ゲームのシステムとしてこの世界の根幹にかかわっているからなのか、疑問に思うことすらないようだ。


 あれ?ところで行商人トリオにはチーミルとリーネイのことを話していなかったかな?

 紹介をしていないのは確かだけれど、切り札的なものがあるとは言ったような気がする。


「切り札?そういえばそんな話も聞いたような?」

「ああ、絶対に驚くとか何とかだろ。自信満々だったから覚えてるよ」


 どうやら軽く触れる程度には話していたようだ。

 話題に出たついでと言っては何だが、どうせだからここで打ち明けてしまっておくべきだろうか?


「そう、ですわね……。トレアが戦力となるまでにもう少し時間が掛かるでしょう。そろそろわたくしたちも本格運用に乗り出しておくべきではございませんこと」


 ミルファは乗り気なようで、ネイトにそう促していた。


「幸いにも周囲に人の目はなさそうですし、実戦に投入するには良い機会かもしれませんね」


 ネイトも紹介すること、そしてそのまま護衛に参加させること自体に忌避感はないみたい。

 それでも歯切れの悪い回答となったのは多分、単純に恥ずかしいからだろうと推測されます。ボクなら間違いなく赤面ものだし。


 ともかく、せっかく許可を頂けたのだし、二人の気が変わらない内にさっさと呼び出してしまおう。

 さっそくとばかりに『ファーム』の表面を軽く二度叩いて登場の合図を送る。そして突然現れた二人にアッシュさんたちは声を出すこともできずに驚いていた。

 ふっふっふ。こんなこともあろうかと、密かにうちの子たちと決めておいたのだ。


「三人はお初の顔合わせだね。この子たちがボクの切り札、リーネイとチーミルだよ」


 同じく初対面となるトレアだったが、こちらはテイムモンスター同士の謎の繋がりがあるようで、すぐに打ち解けていました。


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― 新着の感想 ―
[一言] トレア…………セン……トレア……空こ…………うっ、頭が……! ケイローンとかそっち行くんですねぇ。 てっきりケンタウロスを由来とするどっかの検索エンジンへ走って、ならず者とか。 あの…
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