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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十七章 事件です

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384 監視と記録映像

 うちの子たちに事件発生時のことを尋ねてみるも、かんばしい回答を得ることはできなかった。

 が、これは明らかにボクの失敗だろう。


 先にも説明したように、突然の出来事だったこともあり、ボク自身としては襲われたという意識はほとんど持つことができてはいなかった。

 VRゲーム(・・・)のため、痛覚が遮断されており、少しの衝撃しかなかったこともこれに大きく関係していたのだろうと思う。


 それに対してうちの子たちはというと、ほとんど目の前で凶行が発生した瞬間を目撃しているということになる。


 はっきり言ってトラウマ直行便ですよ。


 リアルであればしっかりとしたカウンセリングが必要になってくるレベルだと思われる。

 その他のことになど気を回している余裕などはなかっただろうし、取り乱してその場で暴れなかっただけでもマシというものだろう。


「無神経な質問をしてごめんね」


 と、しっかり謝っておきます。

 うちの子たちは全員責任感が強いので、適当に済ませてしまっていると後から「役に立つことができなかった」と自責の念が生まれてくるかもしれないからだ。

 失敗したのはボクであると責任の所在を明確にしておくことで、そうなる可能性を減らす思惑があったという訳。


 はい、まるで他人事のような顔で聞いているそこのあなた!

 これはそのままリアルにだって当てはめることができるものなのだからね。物事に対して感情が常に適切に表出される人ばかりではないのだ。

 持って生まれたその人の性質や生活環境など様々な理由から、むしろ感情をすぐに表現することができないという人の方が多いのではないだろうか。


 だから、こういう時間差で発生するかもしれないことについても、考えを巡らせておくことが大切だったりするのですよ。


 と、偉そうに語ってはみたものの、これもいつものごとく里っちゃんからの受け売りなんだけどね。

 やっぱり人の上に立つとなると色々と苦労があるようです。「しょせんは中学の生徒会じゃないか」という意見もあるだろうけれど、思春期真っ只中の少年少女の面倒臭さをなめるな、と言い返したい。


 暗黒ダークネスな黒歴史が産み出されやすい年代は伊達ではないのだ。

 うっかり触れれば火傷どころか、過去の傷跡を無理矢理こじ開けられては抉り出された上に塩を塗り込まれることになってしまうかもしれないのでご用心ですよ!

 ひー!想像するだけで痛い!?


 かくいうボクにも、お墓の中にまで持っていきたいような闇の一つや二つくらいは、乙女の秘密ということで持っているかもしれなかったりするのかもしれませんですことよ?

 いや、あまり深く掘り下げると吐血して倒れてしまいそうになるから、詳しくは言わないけどね!


 いけない、いけない。話が妙な方向に進みそうなので、この辺で軌道修正を。


 ふうむ……。うちの子たちが覚えていないのであれば、周囲にいたプレイヤーの人たちも同じようなものだったのではないかと考えられる。

 ボクが襲撃されたことに驚いてしまい、それ以外のことを気にする余裕などなかったのではないだろうか。


 加えて、個々人のワールドとは異なり、多数のプレイヤーがいるメイションではスクショや動画といった撮影機能に制限が掛けられている。

 よって、偶然撮影していたということもあり得ない。


 これはもう、手詰まりかもしれない。

 そう思った時、あちこちに連絡を入れたり指示を送ったりしているのだろうアウラロウラさんの姿だった。


 AIなのに、という言い方をすると差別的だと言われるかもしれないが、そんな彼女がリアルの人間の運営スタッフに指示を出したりしているのだと思うと、不思議な感じがしないでもないね。

 まあ、この場合は猫さんが凄いという以上に、それに従えるだけの度量の大きさを持っている運営の人たちの方を誉めるべきなのかもしれない。

 単純に誰かに指揮を執ってもらう方が楽だと考えている人もいるのかもしれないけれど。


 おっと!そんな運営の事情などはどうでもいいのです。

 それよりも今ふと思いついたのは、もしかすると、ボクの行動の一部始終が運営によって記録されているかもしれない、ということだった。


 ストーリー管理システムの暴走によって死に戻りができなくなって以降、異常な干渉がなされないようにするという名目の元、ボクの行動は運営スタッフによって常に監視されていた。

 原因となった問題自体はシステム上ほぼ解決済みであったとしても、未だに一般サーバーへと戻されていなかった以上、今日もその監視は続いていたはずなのだ。


 ところで、監視という言い方をしているけれど、実は一時的な映像の記録も行われていた。これは緊急の問い合わせなどがあった際の確認等に使用するためであったらしい。

 ちなみに、普通の一般プレイヤーには、この簡易版のログを取る機能が施されているのだとか。


 で、何が言いたいのかというと、


「その記録映像を見れば何か分かることもあるかもしれないのでは!?」


 そう思い付いた訳なのでした。

 さっそくアウラロウラさんに相談してみたところ。


「確かにそうかもしれませんが、その映像をリュカリュカさんにお見せすることはできません」

「なぜに?」

「証拠として当局に提出してしまっているからです。ああ、いくら当局といえども部外者であることには違いがありませんので、犯人以外の人物の顔にはすべてモザイク処理が施してあるのでご安心を」

「いや、それ、かえって不気味なことになっているんじゃないかな……?」


 それに、よく当局がその条件を受け入れたものだ。つい、何か取引があったのではと勘繰ってしまう。


「重要なのはシステムに侵入してデータを改竄したという操作記録の方ですからね。映像はその補完ということになるのです。とはいえ保管と保持の義務と共に、閲覧等の権利も当局へと移ってしまっていますから、いくら被害者のリュカリュカさんが相手であってもワタクシの一存でお見せすることはできないということになるのです」


 なるほど。一応は納得できる理由ではあるかな。


「では、アウラロウラさんか別の運営の誰かに確認してもらって、それをボクが教えてもらうということはできますか?」

「必ず、絶対、全てとは確約できませんが、大抵のことであれば可能でしょう」

 いや、そこまでしっかりと予防線を張らなくても……。

 だけど、それならばさっそく映像を確認してもらうことにしましょうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] >そう思った時、あちこちに連絡を入れたり指示を送ったりしているのだろうアウラロウラさんの姿だった。 そう思った時、‘目に入ったのは’あちこちに~ とか、 ~、‘視界に写ったのは’あちこちに…
[一言] 読んでいる内に、ちょろっと視線を浮かび上がらせてみたのですが。 そういやってノリで、時々思い出したように出てくるアレ。 休肝日でしたっけ? アレの回数が若い方(だったかな?)で、プレイ…
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