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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三章 冒険者協会でも一騒動
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34 冒険者登録

「ディラン様が今おっしゃられた通り、これは『冒険者カード製造機』といいまして、冒険者の身分を示すカードを作る魔道具です。そして、この冒険者カードの製造した記録をもって冒険者協会への登録とさせていただいております」


 お姉さんの説明によると、他の、例えば商業組合のような組織でも似たような魔道具は使われているのだけれど、これほど細かくステータス等を確認し、記録できる物はないのだとか。

 そのため『冒険者カード製造機』がオリジナルで、他の組織にある物はその劣化コピー品なのではないかと言われているそうだ。


「その組織の中には『国』も入っているから、絶対に認めようとはしていないけどな」


 色々と面子的なものがあって大変なもよう。


「まあ、それは今はどうでもいい事だな。ほら、さっさと登録してしまえ」

「それではリュカリュカさん。こちらの水晶玉の上に手を置いてください。あ、どちらの手でも構いません」


 やっぱりこれ水晶玉だったんだ、などとズレたことを考えながらお姉さんから言われた通りにする。

 ちなみに置いたのは利き腕ではない左手。特に何かを警戒したって訳ではないけど、まあ、何となくだね。


「それでは起動させます」


 小さく甲高い駆動音のようなものが聞こえたかと思うと、手を置いている水晶玉が光り始める。

 その変化が面白かったのか、エッ君の尻尾がぶんぶん振られていた。右腕だけで支えているから、ちょっぴりしんどいかも……。


 やがてその光が強くなり、辺りを真っ白に染め――、るようなこともなく、数十秒ほどで静かに消えていった。


「はい、結構です。リュカリュカさんの能力は一般的なレベル一冒険者のものと大差ないようですね」


 自分でキャラクターメイキングをしたのだから、その結果は分かっていたけど、特にシナリオ的にも何かボーナスが付くということはなかったようだ。


「べ、別に秘められた力がなくて残念だとか思っていないんだからね!」


 ツンデレ調なのはその方が場の雰囲気に合うかな、と思ったからで深い意味は当然のごとくなかったりする。


「なんだ、リュカリュカ?そんなものが欲しかったのか?」

「ううん、全然。昔読んだことがある本に、こういう時にはああ言うのがお約束だって書いてあったから真似してみただけ」


 実際にあったとしたら、物語の展開を誘導されているようで、嫌な気分になってしまっただろうと思う。

 あれ?でもプレイヤーなら、なくてはいけない何か(・・・・・・・・・・)があったような気が……?


「なんじゃ、そりゃ……」


 おじいちゃんが呆れたように言ってくる一方で、機械を操作してくれたお姉さんは無表情のまま無言を貫いていた。

 その様子に当てられて黙るボクたち。そんな中でエッ君だけが楽しそうに尻尾を振り回していた。うん、地味に痛い。


 そして数分後、再び機械音がし始めたかと思うと、チン!という電子レンジのような音がしてカードが排出されてきた。


「お待たせしました。こちらがリュカリュカさんの冒険者カードとなります」


 お姉さんから差し出されたのは、リアルでも一番出回っているサイズのカードだった。触った質感もプラスチックそのもので、ファンタジー感が皆無だ。


「初回である今回は無料ですが、再発行には大銀貨一枚が必要となりますのでご注意ください」


 大銀貨一枚ということは千デナーだね。リアル換算だとおおよそ一万円となる。いくら大金が舞い込んでいるとはいっても、不必要な出費は控えるべきだ。なくさないように注意しよう。


「そしてカードの色ですが、これがそのままその冒険者の等級を表すものとなります。リュカリュカさんは冒険者となったばかりの十等級なので、この薄い緑と黄色に塗り分けられたものとなる訳ですね」


 若葉マークを連想する色合いなので、初心者だということが一発で理解できてしまうね。


「で、さっきもリュカリュカが質問してきた『等級』だが、これは冒険者を大まかに分類するためのものだ。等級を見ればその冒険者の大体の力量が分かるって寸法だな。後で見てみるといいが、依頼書もこの等級に沿って作られている。だから基本的には自分と同じ等級が記された依頼が身の丈に合ったものということになる」


 お姉さんから説明を引き継いだおじいちゃんの言によると、冒険者の等級は最低の十等級から最高の一等級の全十段階となっているそうで、カードの色も若葉マーク色からスタートして紫、青、緑、黄緑、黄、橙、赤の虹色七色を経て銀、金となっていくのだそうだ。


「ということは、おじいちゃんは冒険者の中では最高クラスってこと!?」

「等級だけを見ればな。だが実際には二等級を超えると判断された者は全員一等級の括りに放り込まれている。俺じゃあ手も足も出ないような化物どもがゴロゴロしているから、とてもじゃないが最強だなんて言えやしねえよ」


 おじいちゃんの声には苦みと自嘲が多分に込められていた。もしかすると過去に痛い目に合ったことがあるのかもしれない。

 それでもこうして生き残っているのだから、十分に誇れることだとも思うんだけど。

 まあ、こういう類のことは本人が折り合いをつけるしかないものだから、ボクが口出しをするべきではないだろう。


 また、名誉職のような形で特級という等級の人もいるらしいのだけど、今のボクには縁のない話だね。


「先ほどディラン様のお話にもあった通り、貼り出されている依頼には全て目安となる等級が付けられています。一応、現在の等級よりも一つ上の依頼までは受けられるということになっていますが、無理をせずに自分と同じ等級の依頼をこなしていくことをお勧めします。リュカリュカさんの場合、大半の冒険者の方々と同じで神々からの加護がないようですから」


 ……え?


 神々の加護がないってどういうこと?


 あれってプレイヤーが魔物とかにやられちゃっても町に送還されることの根拠になっているやつでしょう?ちょっと無理矢理でこじつけっぽいところがあるけど。だからプレイヤーなら全員が持っているはずのものじゃないの?


「つまりそれって、死んだらお終いのデスゲーム?あ、でもあれってログアウトできなくなるのが定番だよね。すると、このリュカリュカっていうキャラクターが使えなくなるということ?だけどもう、リュカリュカはボク自身でもある訳で……」

「お、おい、どうした!?リュカリュカ!?リュカリュカ!」


 呼びかけてくるおじいちゃんの声がやけに遠くに感じられたのだった。


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