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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十三章 報・連・相食べま……、やってます
327/933

327 どこの世界でも常識は大切です

先月、2019年11月のアクセス数が10万を超えました!

割と本気でビックリしております。


今年も最後の月となりましたが、寒さに負けず頑張って更新していく……、予定です。

引き続きよろしくお願いします。

 プレイヤーにとって『異次元都市メイション』とは、他のプレイヤーとの出会いの場所であり、情報やアイテムを得るための場所だ。移動するための条件も『転移門』を利用するという簡単なもので、早い人であればゲームを開始したその日のうちに辿り着けたりもする。

 この辺りのことについては、実際にメイションへと行った時などに述べたことがあるので覚えている人も多いと思う。


 それ以外だと、他者とのコミュニケーションを取るための練習の場にしている人は案外多いのだという話だ。

 これには同じ『OAW』というゲームのプレイヤーである、つまりは同好の士と言うことができる間柄であったり、ゲーム内での仮初の姿(アバター)をしていたりと、知らない誰かに話しかける難易度が低下していることが関係していると言われている。

 ゲーム世界への没入を防ぐためにも有効な行為――むしろリアル社会を生きるための行為と言った方が適切かもね――ともなるため、運営としては推奨しこそすれ、咎めるようなことはしないだろう。


 ところが、これがゲーム内の住人たち、NPCたちの立場になると大きく変わってくる。

 ほとんどの人からは、空想や妄想の産物だとかお伽噺の領域に両足を突っ込んだ架空の存在として認識されていたのだ。


 大陸各地を旅して様々な不可思議現象を目の当たりにして耐性ができているおじいちゃんたち高年齢冒険者組や、メイションにとっても興味津々で憧れを抱いているミルファやネイトたちの方が少数派であり、今ボクの目の前で遠い目をして呆然としてしまっている公主様たち三人の反応の方が一般的なのだった。


「納得しがたい部分はあるけれど、現実は現実としてしっかりと見据えないといけないと思うんだよね」

「言っていることはとてもまともですけれど、その原因となったリュカリュカがそれを口にするというのはどうなのでしょうか?」


 ボクの軽口に速攻で突っ込みを入れるネイト。ただし苦笑しているその様子からすると、本気で(たしな)めようとはしていないみたいだ。

 苦笑いもボクではなく、メイションに対して一般的な反応を示した公主様たち三人へと向けられているように思える。


「ヴェル様もお父様も根本的には常識的な思考をする方々ですから。ましてや『異次元都市メイション』はブラックドラゴンや大陸統一国家のように、存在する確かな証拠すらありませんもの」


 ミルファの指摘に加えて、立場の違いというものも関係しているのだろう。

 理想を掲げ目標を設定するくらいであればいい。しかしただひたすらに夢を追いかけるまでになってしまうと、多くの人の命を預かる為政者としては失格となりそうだ。

 そして常識的な思考だからこそ革新的でありつつも実行可能な施策を思い付くことができるのだろうね。


 ブラックドラゴンの一件は分かりやすい事例だろう。

 ボクのように非常識――あくまでこちらの世界での話ですよ!――では、彼をクンビーラの守護竜にするという大まかな解決策しか思いつくことができなかった。

 それを実現可能な範囲に落とし込んで、こうして共存できるように整えていったのは公主様たちであり、彼らの常識的な思考があって初めて成し得たことだったはずだ。


「と言う訳で、常識って大事だよねとボクも常々思っているのですよ」

「なぜですかしら。しっかりと理解した上で真実そう考えていると伝わってきているはずですのに、リュカリュカの台詞だと思うと全く心に響いてきませんわね……」

「それだけこれまでリュカリュカが色々とやらかしてきたという証拠なのでしょう。というか、そこまで分かっているのであれば、もっと普段からの行動に反映させてもらいたいです」


 ミルファもネイトもかなり失礼で酷いことを言ってるって気が付いてます?ボクがプレイヤーという立場でなければ泣いていたところだよ。

 まあ、残念ながらこちらの常識を全て消化して身に着けることなんてできるはずもないから、これからも彼女たちの度肝を抜くようなことをしてしまうだろうけどね。


 え?反省?

 うん。してるしてる。


 そんなこんなで仲間内で気安いやり取りを続けていたのだけれど、一向に公主様たちが硬直から回復する兆しは見られなかった。

 まあ、三人とも忙しい日々を過ごしていたようなので、休息代わりにそっとしておいてあげることはやぶさかではないのだけれど……。


「問題はまだ話の途中ってことだよね……」


 これからはどんどんと出現する魔物も強くなってくるだろうし、敵対勢力の邪魔が入ることだって予想される。切り札になり得る強力なカードを伏せたままで、それらの障害を乗り越えていく事などできはしないだろうと思う。

 そのためできればあの件(・・・)についてもこの場で話を通しておきたいところだった。


「しかし、公主様方にあまりご負担をかけるのは良くないのではありませんか?」

「そうですわね。お父様はともかくヴェル様に何かあっては一大事ですもの」


 いやいや、ミルファさん。ぶっ倒れるのが宰相さんだったとしても大変な事態になっちゃうことに変わりはないからね!?


「いっそのこと、このまま隠し通しておくというのはいかが?」

「まさか本気でそれが通るとは思ってもいないくせに」

「私の方は問題ないとしても、ミルファの方は最低限はなしだけでも通しておかないと、クンビーラのお家騒動に発展しかねませんからね……」


 ネイトの言うように、適当に放置していては後で大火災の種火にならないとも限らないのだ。


「お家騒動だと!?」

「うわあ!?」

「ひうっ!?」

「きゃあ!?」


 突然怒号のように響いてきた声に、思わず悲鳴を上げて体をすくめてしまう。

 うちの子たちもビクンチョ!?と大きく体を跳ねさせていた。


「び、ビックリした……」


 『OAW』をプレイし始めて以来、予想外の展開に驚かされるということは散々あったけれど、このようにストレートな驚かされ方をしたのは初めてかもしれない。

 いや、その雄叫びを上げた彼らにはそんな意図はなかったのだろうけれどさ……。


「そんなことより、クンビーラのお家騒動とはどういうことなのだ!?」

「こら、ミルファ!呆けていないでしっかりと説明せぬか!」

「ちょっ!?宰相様、そないに揺すったら危ないですって!ミル嬢が泡吹いて気絶しとりますやん!?」


 おーう……。覚醒したら覚醒したで大騒ぎになっておりますですよ……。


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