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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十一章 不機嫌な日常
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299 さーびす、さーびす!

 最後の最後でファンキーな先生たちに遭遇することになったボクたちだったが、その後は特に問題が発生することもなく終了と相成った。

 それにしても、


「学生会に限らず部活動でも何でもやりたいことができたら気軽に声をかけてちょうだいね」

「三峰だけじゃなくて他のやつらもな。俺たち教師陣もできる限り協力するつもりでいる」

「みんなの参加、待ってるぞ!」


 子ども向けイベントの告知の定番台詞のような事を言いながら決めポーズをとる先生(ファンキー)たちに対して、果たしてボクたちはどういう反応を取るべきだったのだろうか?

 それ以前にあんな先生たちで大丈夫なのか、うちの学校は!?と思ってしまったことは秘密です。


「あー、なんで俺がフォローに回らなくちゃいけないのか釈然としないところはあるが……。三峰、あの先生たち休み時間とかはあんな調子だけど、授業はかなり分かりやすいって評判みたいだぞ」

「あ、そうなんだ」


 そのクラスメイトの言うところによると、特にいわゆる落ちこぼれていた学生を掬い上げるのが得意で、男性教諭の方に至ってはなんと中学一年の単元で詰まって以来すっかり数学嫌いになっていた学生を、一年間で校内トップレベルにまで引っ張り上げたこともあるのだとか。

 まあ、他の教科の方もお察しレベルであったため極端な成績アップにはならなかったらしいけれどね。


「へえ。そんな名物っぽい先生がいたのね。全然知らなかったわ」

「そりゃあ俺たちは一応特進クラスだし、授業の方ではあんまり縁がないだろうさ。学校の方としても先生たちの得意な面を活かしたいだろうからなあ」


 そんな雑談をした後で、残っていたクラスメイトたちも三々五々それぞれの目的地へと散っていったのだった。

 皆、熱中症には注意してこまめな水分摂取を心がけてください。それと水場に行く人たちは事故にも気を付けてね。


 と心の中で語りかけながら、バイバイと手を振る。

 いやだって、灼熱地獄かと言いたくなるくらいの暑さで、少し口を開くことすら億劫(おっくう)になってしまったのだもの。これから家まで自転車をこいで帰らなければいけない身としては、少しでも体力を温存しておきたかったのです。


 そんなこんなで汗だくになりながら、えっちらおっちら自転車をこいでなんとか無事に帰宅です。

 あ、お昼ご飯は帰り道沿いにあるコンビニのイートインコーナーで涼みながら簡単に済ませております。


 その時の反動もあって「暑いー……」とそれしか言えなくなりながら、リビングにダイニングにキッチンと家人不在のため閉め切っていた窓を開けて回る。

 無人の部屋に空調を稼働させていられるほど家計に余裕はないのです。よってボク一人が家にいる時には、二階の自室以外は窓全開がデフォルトとなるのだった。


 本当はすぐにでも『OAW』を始めたいところなのだが、夜まではお勉強タイムとなるので。新しい宿題と課題も出されたしね……。

 ふ、ふふふ……。夏休みが楽園(パラダイス)だった時代は終わってしまったのさ。

 思わず遠い目をしてしまいそうになるが、この暑い中でそんなことをしていると意識の方が遠くなってしまう。さっさと任務を完了させてしまいましょう。


 ちなみに、ボクの家の周囲には比較的田んぼが多いために障害物が少なくこうしてやることで風自体はそれなりに入ってくるようになるのだけれど……。


「うわっぷ!やっぱりこの季節のこの時間帯だとどう頑張ったところで熱風になっちゃうよねえ……」


 夏真っ盛りの昼下がりだからね。それでも淀むように熱のこもった内部の空気よりはマシというものだ。

 とはいえ、やっぱり涼やかな風が通り抜ける季節が恋しい今日この頃なのでありました。


 一歩階段を上っていくごとに上昇していく温度に辟易としながら自室へと辿り着く。ようやく到着した念願のマイルームは、我が家史上最悪の室温となっていました。

 荷物を置いて速攻で窓をフルオープンにして扇風機を起動!居候していた暑苦しい空気たちを追い出しに掛かる。

 そして一通り空気の入れ替えができたかなという時点で空調のスイッチオン。


「先生、お願いします!」


 時代劇に出てくる三下な悪役のような台詞でエアコン先生を応援だ!

 もっとも、彼が働いてくれている間にボクは戦線離脱して、シャワーで汗を流してくる予定ですけどね。


 冷たいと分からないギリギリの温度で汗と汚れを洗い流すと、今度ははっきり冷たいと感じる温度で体の中に溜まった熱を低下させていく。

 暑い夏にあえて熱いお風呂に浸かってガンガンに汗を流すというのも結構好きだったりするのだけれど、今日のところは何をさておいてもさっぱりしたかったのだ。


 少し寒いかもと思うくらいにまで体温を低下させてから浴室を出る。日中で気温が高いということに加えて、これからドライヤーを使って髪を乾かすという大切な作業が待っているからだ。

 『OAW』開始当初はリュカリュカと同じく襟足までの長さだった髪も、あれから三カ月近くが過ぎて、うなじを越えて肩まで届こうかというくらいまでになってしまっていた。

 そのため、乾かすだけでもかなりの時間が必要になってしまっていて、今くらいにまで体を冷やしておかないと、あっという間に汗だくだくになってしまうのだった。


「ふへー。ようやく人心地がつけたかな……」


 なんとか額に汗が浮かぶ程度で重要工程を完了させることができた。これくらいならまあ、湯上り美人だと言っても嘘にはならないはず。

 という訳で、以上優華ちゃんのサービスシーンでした。


 さて、と。

 さすらう気質のあるボクのやる気君が新たな旅へと関心を示す前に、先生たちから頂いたありがたい課題をできる限り進めておくとしましょうか。


「おおっと!?拙者、急用を思い出してしまったでござるよ!」


 べたべたな台詞を言って逃げ出そうとするやる気君を羽交い絞めにして捕まえるという激闘を脳内で繰り広げながら机に向かう。

 ついつい後ろ向きな取り組み方になってしまうけれど、これだって将来のためなのだ。


 よく、「学校の勉強なんて将来なんの役に立つの?」的な台詞を耳にするけれど、そういうことは就きたい仕事が明確になって、絶対に必要がないと判明してから言うべきだと思うよ。

 むしろ、せっかく勉強しているんだからそれを活かせる職業に就けばいいんじゃないかな?と思うようになってきた今日この頃です。


 それに何より今のボクにとっては、後で心置きなく『OAW』で遊ぶためにも必要な行為だからね!


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