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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十章 地下遺跡探索2
289/933

289 ゴール地点?

「まあ、うちは職業柄次にいつ食べ物を口にできるか分からんいう時も結構あるから。食べられる機会を逃さんためにも、早食いが習慣付いてしもうたんやな」

「ああ。エルのお仕事ならそうなっちゃうかもねー」


 おやつを食べながら雑談にふけることで、狙い通りみんなリラックスすることができているようだ。ただ、エルの食事事情など余計な心配事も増えてしまったような気もするけれど。

 まあ、そちらはまた後で何か手を打てることを考えればいいだけのことだし、エルに協力してもらうという当初の目的を果たすための必要経費だと思えば安いものかな。


 美味しくて手軽に食べられる携帯食などは今後のボクたちにも必要になるものだろうから、調べておいて損はないだろう。

 意外とそういう知識こそがリアルでの災害時などの非常時には役に立つのかもしれないものね。


 さて、そんなこんなで休憩によってしっかり気分転換を終え、気持ちも新たに階段を下って次の層へと踏み出したのだった。


 と、気合十分のボクたちだったのだけど、階段を下りきって早々にそれらは半減してしまうことになってしまった。

 それというのも、その場所こそ地下遺跡の最深部、つまりゴール地点だったからだ。


 どうしてゴールだと分かったのかって?

 着いた瞬間、これ見よがしに巨大な人型の立体映像のようなものが作動して、第一声で「よくぞここまで辿り着いた」なんて言われれば、嫌でもゴール地点なのだと理解するっていうもんですよ。


 そこは直上の部屋、つまりドラゴンタイプと戦った部屋と同じくらいの広さを持つ部屋だった。その中央に、立派な口ひげを生やして――その反面、頭の方は随分と寂しいことになっていたけど――豪華な衣装を身にまとった年配の男性が、五倍ほどの大きさに拡大投影されていた。


「妙な感覚っていうのは?」


 どうやら危害を加えてくる様子はなさそうだと判断して、呆気に取られて映像に見入っているミルファたちは一旦そのままにエルに小声で尋ねる。


「相変わらず残ったままや」


 と、彼女の感覚に変化はないらしい。つまり依然として気を抜くことはできない状況ということなのだろうか?


 ……おや?ちょっと待てよ。

 確か彼女のこれまでの台詞からすると、生きている遺跡――この表現自体なんとも矛盾しているよね――に入ったのは今回が初めてであるようだった。

 であれば、その原因となる部分を「妙な感覚」として察知しているとは考えられないだろうか。


「……一概にあり得んとは言い切れんな。立体映像(あんなもん)が動き出すくらいやから、相当がっちりした動力やろういうんは間違いないわけやし」

「それでは、もう心配いらないということでしょうか?」


 いつの間にか我に返っていたネイトがこちらへと合流してくる。よく見ればミルファもうちの子たちも意識自体はしっかりしているみたい。

 ただし、映像の方に興味津々のため、こちらの話し合いには参加できるほどではないようだけれど。


「うーん……。動力が生きているということはどんな罠や仕掛けが作動するのか分からないってことでもあるから、油断はできないかな。エル、貧乏くじを引かせるようで悪いんだけど、そっちの警戒は任せてしまってもいいかな?」

「元よりそういうことのために同行しとるんや。うちに否はないで。その代わり、この遺跡が一体何なのかをしっかり解明しといて」

「うん。了解」


 あちこちに視線を走らせ始めたエルに周囲の警戒を任せて、情報を得るためにボクも立体映像に集中することにしたのだった。


 その立体映像だが、投影されている人物の主張を一言で表すと「歴代の王の後見役であった『風卿』こそが、大陸統一国家を継ぐのに相応しい」ということになるだろうか。


「重用されていたのは間違いないようだけど、だから次の王になるのは自分たちだって言うのは、過大解釈というか屁理屈の域から出ないような気もする」


 後見役という地位を与えられていたということで、もしかすると他の三人の『卿』に比べると頭一つ抜きんでていたのかもしれない。

 が、それだけを理由にするというのは少々どころではなく無理があるのではないだろうか。


「それ以前に、よくあれだけの時間ひたすら美辞麗句を並べ立てられるものだと呆れてしまいましたわ」


 チラリと立体映像――三周目です――へと目を向けながらミルファがそう口にする。映像の時間はおおよそ五分程度だったのだが、そのほとんどが自分たち『風卿』の血族がいかに優れていたのかという自画自賛に割かれていた。

 最終的な主張の部分など、ほんの数十秒といった具合だったのだからなんともはや。

 異なる部分があってはいけないと二週目までは頑張って聞いていたボクたちだったが、さすがにそれ以上は聞く気になれなかったのだった。


「もしかすると、そうやって声高(こわだか)に主張する者たちがいたからこそ、この地にまとまった国ができなかったのかもしれませんわね」


 立体映像の人物ならば、『風卿』として国を建てるくらいであれば大陸統一国家を継ぐといい出しそうだよね。仮に彼を説得できたとしても、脅威となるのが分かっているのだから周囲の三国が容認するはずもない。


「逆にそう言った鬱憤(うっぷん)を晴らすために、この遺跡を作り上げたのかもしれませんね」


 果たせなかった夢を将来に託すというのもありがちな展開かも。

 まあ、この人物の場合はいかに自分たちが優れていたのかを自慢したいだけだったような気もするけどね。大陸統一国家を継ぐべきだと主張する割にはその具体的な方法などは一切登場していない辺り、大きな口を叩くだけしか能がなかったという可能性もありそう。


「それでもこれだけの、しかも現在まで生き続けている遺跡を作り上げさせたのですから、その権力や財力はバカにできませんわよ」


 確かに相手を過小評価した結果、足を掬われてしまったなんてことになったらカッコ悪すぎる。


「それにしても……、結局どうして大陸統一国家が滅んでしまったのか、そしてあの空飛ぶ島がどうなったのかは語られずじまいでしたわね」


 肝心な部分は秘密にされたままなので、とんでもなく消化不良な気分だよ。

 それに元々の目的だった墳墓も手掛かりすら見つかっていない。もしかすると外れを引いた上に面倒なことに頭を突っ込んじゃった?


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