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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十章 地下遺跡探索2
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286 冥途の土産のプレゼント

 ドラゴンタイプの攻撃は激しく、直撃を受けなくともその余波だけで徐々にHPが削られていってしまうほどだった。

 定期的に回復行動が必要になるためにずっと囮でい続けられたけれど、果たしてターゲットを取り直す面倒がなかったので良かったと言えるのかどうかは微妙なところだと思う。


 だってこれ、まともな攻撃を受けていないのにじわじわと押されているということだからね。

 ああ、回復アイテムのストックがまぢで厳しくなってきたよ。


「あの熱線ブレスに巻き込まれたら洒落にならないから、みんなは部屋の半分からこっちには入って来ないようにね!」


 できればボクに集中している隙に、熱線ブレスがキャンセルされるくらいにダメージを重ねてくれればありがたいのだけど。

 ただ、ドラゴンタイプの方も尻尾を大きく振ったり、翼を羽ばたかせることで風圧を巻き起こしたりと、近付いてくるのをけん制するような行動をし始めているので、仲間たちにそこまで期待するのは厳しいかもしれない。

 地味に前半の追いかけっこの時よりもダメージが与え難くなっていたのだった。


 さて、そうなるとボクも一方的に逃げ回っているのでは分が悪くなってしまう。

 ここは少々厳しいけれど、こちらから積極的に打って出るべきかもしれない。上手くいけばダメージ蓄積で怯ませることができるかもしれないもの。

 例えそこまでいかなくとも、比較的弱くてあしらいやすい攻撃を繰り返させて本命の熱線ブレスをおあずけ(・・・・)させることができれば、それだけこちらが優位になるのだ。

 挑戦してみるだけの価値は十分にある。……めっちゃ怖いけどね!


「女は度胸だ、ぱーとつー!」


 相も変わらず「ギャオッスー!」と気の抜ける叫び声を発するドラゴンタイプの頭を目指して一気に駆け寄って行く。

 これでいて顔付きなどは本物に限りなく似通っているのだからギャップどころの騒ぎじゃない。

 加えて〔威圧〕技能まで搭載されていることを考えると、もはや詐欺(さぎ)の領域ではないかとすら思えてくるほどだ。

 とりあえず、絶対に萌えることだけはないと断言しておこうか。


 そんな半ば現実逃避気味な思考を繰り広げている間にも、ボクの身体はしっかりと前へと進んでいて、気が付けばほぼ目の前にドラゴンタイプの精緻(せいち)に作られた頭部が迫り、その上鋭い鈎爪(かぎづめ)がこちらめがけて振り下ろされてきているところだった。


「よい、しょっと!」

 半歩体の軸を左にずらしながら、アイテムボックスから取り出したハルバードを鈎爪の側面へと叩き付ける。

 さらにその衝撃を利用してボク自身の体を左後方へと移動させる。地味に熟練度の上がっていた〔軽業〕技能が今回もいい仕事をしてくれたもようです。


 問題はそろそろハルバードを始めとした装備品の耐久値が怪しくなってきていることだろうか。

 地上でのドラゴン風ガーディアンゴーレムとの戦いを皮切りに、渦巻き通路でのゴーレムたちとの連戦、加えてドラゴンタイプとの戦闘と、はっきり言って装備品のスペックをはるかに超えて酷使し過ぎている状況だ。

 恐らくはミルファやネイトだけでなく、エッ君やリーヴの装備品も似たような状態になっているのではないだろうか。

 何とか修復可能なラインで踏み止まってくれればいいのだけれど……。


 しかし背に腹は代えられないというのもまた事実だ。最悪、二度と使い物にならないくらいにまで壊れてしまうのも覚悟しておくべきだろう。

 改めて装備品を新調するのは出費面で痛いけれど、それだって誰かが大怪我をしたり命を落としてしまったりすることに比べればはるかにマシなのだから。


「……いいよ。お前にこのハルバードはくれてあげる。その代わり、きっちりと退場してもらうから」


 グルルルルと喉の奥から威嚇音を発していたドラゴンタイプを正面から見据えながらそう言い切ると、ほんの一瞬だがたじろいだ様子を見せた。


 チャンスだ!

 ボクの雰囲気にのまれたというほどではないにせよ、明らかに気圧されていた。この機会を逃す訳にはいかないよ!


「全員総攻撃ー!」


 ボクの声に一番に反応したのはエッ君だった。衝撃波を放つ遠距離攻撃の【裂空衝】を繰り出したかと思うと、間髪入れずに【流星脚】で攻撃と同時に懐へと飛び込む。そのまま両脚と尻尾による【三連撃】に繋げて、最後は尻尾サマーソルトの【昇竜撃】でフィニッシュ!?

 習得している〔竜帝尾脚術〕の闘技全てを披露するという大盤振る舞いです。


 その後も尻尾による薙ぎ払いをリーヴが【ハイブロック】で受け止めた隙にミルファが細剣の【マルチアタック】でざっくざっくと切り刻んで使い物にならなくしたり、両方の翼にそれぞれネイトとエルの【アースドリル】と【ダークドリル】がぐさぐさと突き刺さり羽ばたけなくしたりと、着々と弱体化に成功していた。


 ボクはと言えば間近に迫るドラゴンタイプの頭部に向かって、宣言通りハルバードが壊れてしまうような勢いで振り、突き、時には闘技を交えてひたすら連続で振り回し続けていた。


「こん、っのお!」


 そして一際強く顎下から撥ね上げ、


「【スラッシュ】!」


 渾身の力でもって斧刃を叩きつけた瞬間、ピシリという嫌な音が聞こえたかと思えば穂先を始めとした武器としての部分が粉々に砕けてしまう。


「ありがとね。……でも、最後にもう一度だけ力を貸して」

「ググググ……。ギャオッスー!!」


 やられ放題になった鬱憤を晴らすかのように叫ぶ大きく開いた口に、


「最後くらいカッコよく決めさせてよ!【ピアス】!」


 砕けたことで歪ながらも尖った柄の先を突き入れたのだった。

 ズグリと堅い物を貫く重苦しい感触が手に伝わってくる。口蓋(こうがい)から入り込んだ柄の先は頭部にまで達しているはずだ。

 生き物であれば間違いなく即死の一撃。だけど、ボクたちが相手取っていたのはゴーレムだ。痛撃には違いないものの、それだけで完全に動きを止めるには至らなかった。


「ギャオ――」

「【アクアボール】!」


 性懲りもなく気合いを強奪していく鳴き声を発しようとした口に魔法を撃ちこむ。

 想定外だったのは間近で破裂したことによってボクまでふっ飛ばされてしまったことだろうね。頭に体に色々な箇所をぶつけながら、ごろりんごろりんと床を転がっていく。

 こんなことなら体育の時間に柔道の受け身だけでなく、五点着地法の練習もしておけば良かったかも?


 目を回していたボクが次に見たのは、HPをゼロにされたことで消滅していくドラゴンタイプの姿だった。


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