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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十九章 地下遺跡探索1
269/933

269 一枚目と五枚目

 エルによるクンビーラ城内での噂話などの説明は続く。


「これまでの行動からミル嬢は騎士団や衛兵隊の連中からの人気が高いんや。公主様んところの坊ちゃんがまだ小さいこともあって、そこに付け込もうとする悪いやつがこれから出てくるかもしれん。宰相様やコムステア侯爵も見つけ次第潰そうとはしてるみたいやけど、こういうんはイタチごっこやからな。悪い芽は摘める時に摘んどかんと後から祟ってくるかもしれん」


 そういうことを全部ひっくるめて最悪はお家騒動になってしまうということみたいだ。


「忠告感謝しますわ。近い内に必ずロイと話し合う機会を作ると約束しておきますの」

「ボクたちも手伝えることがあるなら協力するよ。まあ、何でもこいなんて大きな事は言えないけどさ。それでも話を聞くくらいならできるからね」

「ふふふ。素直じゃないですね」


 ネイトさん、ボクはいたって本気なのですが?

 大体そんなキャラにそぐわないツンデレじみた台詞を口走るはずがない。


「ですが、その言い様がリュカリュカらしいですわ。それでは困ったことがあればすぐにでも相談することにしますので」


 ミルファはミルファで、ボクのことをどう見ているのか一度きっちりお話し合いをした方が良さそうかな。というか、無理難題が発生した時には押し付ける気満々だよね!?


 まずい。このままこの話題を続けていればどんどんとボクの旗色が悪くなってしまいそうだ。

 という訳でここは戦略的撤退で話題をチェンジするべし!


「さあ、時間も押していることだし、ささっと壁画の最後の一枚も確認してしまおうか」


 強引に元の目的へと視線を向けさせて、先頭に立って残る壁画の前へと進んで行く。まあ、すぐ隣なのであっという間に到着したけどね。

 ところが、なぜだかみんなからは照れているのだと勘違いされて、微笑ましそうな瞳で見られていました。解せぬ。


 え?前の壁画に描かれていた機械とエンジンの関係?

 説明のしようがないので一旦放置してます。


 そして最後の五枚目の壁画は遠くから見た街の様子を描いたものだった。

 しかし、これまでもどこかしらに気になる所というかおかしな箇所が存在していただけのことはあって、この絵もまた一筋縄ではいかなかった。


「これって、どういうことなんだろう?」

「似ています、わよね」

「偶然などということは、ないでしょうね」

「そうやな。ここまでそっくりやということは、どっちかがどっちかを模倣したものと考える方が無難っちゅうもんや」


 ミルファたちの言う「似ている」は技法や描き方といった製作者側のことではなく、斜め上から見た鳥瞰図(ちょうかんず)の構図など、どちらかと言えば絵の中身の方のことだった。

 加えてこの題材である街だが、何と一枚目と同じく中央にビル群がそびえ立っていたのだ。


 もっとも、そっくりそのままという訳でもない。一番の違いは最初の絵が小島であるのに対して、こちらは畑や林といったものに囲まれていることだろう。

 他にも細かな違いはいくつも見受けられたのだけれど、一個ずつ挙げていては間違い探し状態になりそうなので止めておく。


「問題は、どういう意味があって二つの壁画が似ているのか、ということかな」


 考えられるのは三つ。

 一つはどちらかの壁画(・・)がどちらかを模倣したというもの。

 二つ目はどちらかの()がどちらかを模倣した。

 そして三つ目、実は二枚とも同じ街を描いているというものだ


 一つ目、製作者側の都合ということになるので、これが一番無難な案だと言えそうだ。理由の方も同門の二人を競わせただとか、師匠に並ぶだけの力量を弟子が持ちえた記念だとか、いくらでも挙げることができる。

 その分嘘をでっちあげられる隙もあるということになるけれど……、それは他の案でも同じかな。


 二つ目、いつなのかは不明だが壁画が描かれた頃は画一的な街作りが勧められていた時代だったのかもしれない。こちらも新たに作られた二つの街を記念してとか、同時着工の記念など、理由には事欠かないと言えそうだ。

 ただ、そんな変わった政策を執っていたならば、後世に少しくらいは情報が残されていてもいいのではないかと思う。ところが、ミルファもエルも何の反応も示さないところを見ると、そうした歴史的事実はない可能性が高そうよね。


 最後の三点目、どちらも同じ街を描いたというもの。

 例えば、定点観測的なもので時代の移り変わりを示した、ということならあり得なくもない気がする。

 だけど島なのに対して、もう片方は陸地の中にあるんだよね。周囲の浅瀬を干拓し続けて農地に変えたという経緯を表したものだとしても、どこかに海岸くらいは残しておかないと、ちょうど今のボクたちのように繋がりが分からなくて混乱することになってしまう。


 それでも逆の陸地が島になったという流れに比べれば、まだまだ現実味があると言えるのではないだろうか。もはや天変地異レベルの地殻大変動で、実際に発生していたなら大災害だよ。


「ミルファ。ちょっとした確認なのだけど、アンクゥワー大陸の歴史で大地震が起きたという記述はあるのかな?」

「大地震ですの?……確か西のジオグランドなどではそれなりにいくつかは発生していたはずですわね」

「それって大津波が起きたり、地面がひび割れてしまったりというくらいのとんでもなく大きいやつ?」

「いいえ。家屋が倒壊したとか、鉱山が崩れてしまったという被害はあったようですが、それ以上の規模となるとわたくしが教わった中にはありませんでしたわ」


 ジオグランドのある大陸西部の『土卿エリア』は険しい山脈が連なっており、全体的に標高が高い。海岸もほとんどが切り立った岩壁となっていて、港らしい港もなく、わずかながらの漁村が壁にへばりつくようにして存在しているだけなのだそうだ。

 つまり一枚目と五枚目、どちらの壁画の景色とも合致しないのだった。


「だとすると、他所の大陸でのことなのか、それとももっともっと昔の話を題材にしているのか、になるのかな?」


 魔導機械らしきものも描かれた絵もあったことだし、実は『古代魔法文明期』の滅亡に関するものだとか!?

 ……それならこんな遠回しな描き方はしないで、大災害の様子でも描写するのが普通な気がする。


 うーん……。仮説を立てるためにどれかに答えを絞ろうにも不明な点が多過ぎるよ。


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