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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十八章 砦跡の調査
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249 反省と作業

 百年以上に渡って効果を発揮している――のかもしれない――魔道具が設置されている――のかもしれない――ことから、砦跡には世間を騒がせてしまうようなとんでもない代物が隠されている可能性が出てきた。

 改めて気合を入れて調査を再開することになった、のだが……。


「リュカリュカ、いくら何でもおふざけが過ぎますよ」


 エルとのやり取りを見咎められたボクは、ネイトからお説教を受けていました。

 しかも地面に直接正座で。刈り取られた草とか小石や土の塊でチクチク痛いです!

 ついでにお説教で心も痛いよ!


「リュカリュカが失礼な態度を取ってしまい、申し訳ありませんでしたわ」

「いや、あの、うちの方がかなり年上になるんやけど……」


 当のエルはミルファから頭を撫でられて困惑し通しとなっていたが。

 エルフという種族のためなのか彼女の外見は華奢(きゃしゃ)で、下手をするとボクたちの方が年上にも見えてしまいそうなくらいだ。

 実年齢は親世代どころか、そのまたもう一つ上の世代に近いはずなんだけどね。

 恐るべし異種族のアンチエイジング!


「あ、あのね。別にふざけていた訳じゃなくて、緊張をほぐそうとしたと言いますか、そんな感じだったりしちゃったり」

「例えそうだったとしても、大声を上げさせるまでとなると度が過ぎています。しっかりとした調査ができるかどうかは彼女の技能に掛かっているようなものなのですから、力が発揮できないような精神状態にさせるなんて下策どころか失策もいいところです」


 ううう……。ネイトの意見が正論過ぎてぐうの音も出ない。


「ふう。やはり今日のリュカリュカは落ち着きがないように感じられます。このままだと本当に取り返しのつかないような大きな失敗をしてしまいますよ」

「うっ……」


 さらに痛いところを突かれてしまい声に詰まる。これがもしも通り一辺倒で形式的な注意だったなら、きっと軽口の一つも返していたことだろう。

 ところが彼女の言葉には本気でボクのことを心配してくれているという気持ちが込められていた。

 これで反省できないのであれば仲間失格だ。


「そう、だね……。ネイトの言う通りボクは浮かれていたんだと思う」


 『ファーム』購入のために別行動していた期間も含め、リアル時間ではかれこれ十日以上もミルファやネイトとの冒険ができないでいた。どうやらそのことが自分で思っていた以上にストレスに感じてしまっていたようだ。

 自分でも薄々はテンションが高くなっているとは感じていたが、今から考えればきっとその反動だったのだろうね。


「心を落ち着かせられるように、しばらくそっちの隅で休憩しておくよ」

「そこまでしなくても良いのではありませんこと?」


 落ち着くのを通り越して、きっとボクが落ち込んでしまったと感じたのだろう。ミルファが慌ててとりなすように言う。が、それに対して首を横に振る。


「ダメだよ、ミルファ。「取り返しのつかないような失敗をするかもしれない」ってネイトが言っていたでしょ。もしもそれがみんなを傷つけてしまうようなものであれば、例え時間を巻き戻してやり直すことができたとしてもボクは自分のことを許すことができなくなると思う。我が儘を言って申し訳ないけれど、少しの間そっとしておいて」

「分かりましたわ。……でも!サボった分は後でしっかりと働いてもらいますわよ!」

「あはは。了解」


 場の雰囲気が暗くなり過ぎないように気を遣ってくれたミルファに感謝だね。もちろん、心配してくれたネイトにも。

 からかうことになってしまったエルにはごめんなさいかな。三人にそれぞれ謝罪と感謝を述べてから、少し離れた場所にある外壁の残骸が残る場所へと向かう。

 そこは他に比べて比較的しっかりとした形で痕跡が残されていた。


 はあ……。色々と反省することしきりだなあ。

 とはいえ、あまり思い詰めてしまうとかえって逆効果にもなってしまう。必要な分だけ適切に反省するというのは、実はかなり難しいことなのだよね。


 いっその事ログアウトして、この世界から距離を置くというのも手かもしれない。ただ、既に経過した(あそんだ)時間のことを考えると、今日中に再びログインできる時間はなくなってしまうことになるだろう。

 こんな何とも言えないもやもやした気持ちや状況のままで止めるのは嫌だなあ。というか、それを明日にまで持ち越すのが嫌だ。

 どうせ続きから再開するにしても、せめてしっかりと仲直りをして気持ちを切り替えた状態で始めたい。


 そうなると適度に思考をそらせるように手を動かす、作業でもしながら待機するというのが妥当かな。

 さて、何をしようかな?と考えたところで今現在のボクにできる事なんてたかが知れている。その辺で伸び放題となっている草でも編んで、とも思ったが花冠ならまだしも草冠ではさすがに格好がつかないだろう。

 プレゼントするにも仲直りの証どころか、新手の嫌がらせのように思われそうだし……。

 まあ、うちの子の二人ならどんなものでも無条件に喜びそうだが、それはそれで問題がありそうな気もする。


 結局、技能も材料も道具もある薬づくりに励むことになった。

 頭の中では本日の行動を振り返りつつ反省しながら、先ほど採取した薬草類を黙々と回復アイテムへと変化させていく。気が付けばそれなりな量の傷薬や回復薬ができていた。


「あって困るものじゃないし、後でみんなに配っておこうかな」


 プレイヤーに比べればはるかに小さいものの、アイテムボックスを持っているNPCは多い。

 消耗系アイテムの数個くらいであれば基本的に邪魔になるような事はないのだ。


「そういえば最後に採取した薬草を、ちゃんと〔鑑定〕できていなかったような……」


 ブレードラビットが近付いてきているというネイトからの警告を受けて、急いで引っこ抜いてそのままアイテムボックスに仕舞い込んでいたのだった。

 実は危険なものだった!?なんてことになっても困るので、余裕のある今の内に確認しておくべきかもしれない。


 そうと決まれば善は急げだ。さっそく未鑑定状態の薬草を取り出す。雑草扱いされていないので少なくとも何らかの効能を持っているのは間違いない。

 それにしてもこの『謎の薬草』という表記は何とかならなかったのだろうか……。


「今さらと言えば今さらなんだけどさ。とにかく、〔鑑定〕っと」


 技能を使用したことで視界の中に様々な情報が浮かび上がる。


「え?」


 その中の一つを見て、ボクはピシリと固まることになるのだった。


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