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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十七章 『銀河大戦』3 二日目
237/933

237 待ちに待った瞬間

「きゃう!?」


 攻撃を仕掛けようとしたところで、大太刀の一振りにかち合わされてしまいチーミルが吹っ飛ぶ。運良く構えていた武器で受けることができたのでダメージは最小限に収まっているようだ。

 しかし、ユーカリちゃん包囲網――エッ君とリーヴにチーミルの三人だけだったけど――に大きな穴が開いてしまう。


「一旦ボクが代わりに入るから回復後にタイミングを見て復帰してきて!リーネイ、お願いね!」


 それだけ言い残してすかさず穴埋めに向かう。

 先にも述べたようにテイムマスターであるボクが敗北した時点で全滅が確定することになるため、格上となる彼女を相手に、しかもあちらの得意な近接戦を挑むなどというのは、本来であれば下策中の下策ということになる。


 しかし一方で、包囲から抜けて自由に動かれるようになってしまうとなると、これまたセオリー通りにボクを優先的に習ってくる可能性が高くなるのだ。

 その時にはうちの子たちは振り切られてしまっているだろうから、正真正銘の一対一での戦いになってしまうだろう。


 うん。絶対に勝ち目がないね。

 それならまだエッ君、リーヴと連携して動くことができる方がはるかにマシというものだ。人数差という最大の利点を生かすべくチャンチャンバラバラと武器で打ち合う現場へと飛び込んでいく。


 ちなみに、こちらで唯一ユーカリちゃんの攻撃を受け止めることができるリーヴが盾役として正面に、大技でダメージ源となるためのエッ君が彼女から見て左手側に、そして牽制と引き付け係のボクもしくはチーミルが右手側という布陣です。


「【ピアス】!」


 リーヴの【ハイブロック】で攻撃が止まった瞬間を狙って参戦一撃目を放つ。

 悪どい?現在ボクの正義君はヒーローショーへの出演のため外出中なので問題ありません。


「ちょっ!?油断も隙もないわね!?」

「ふっふっふ。勝てば官軍なのですよ」


 きっちり紙一重で避け切りながら抗議の声を上げるユーカリちゃんに、内心で舌打ちしながらも三流悪役のような台詞で言い返す。


「【ヒール】!」


 そんなやり取りをしている間に、リーネイの回復魔法でリーヴの怪我が癒えていく。

 ちらりと横目で見やると、既にチーミルのHPも全快しており、復帰のタイミングを見計らっているようだ。


 最初の強化魔法以降すっかり影が薄くなっていたリーネイだけど、実はこうして回復魔法を使って支え続けてくれていた。

 ボクまで含めた近接戦闘組が戦列を維持できていたのは彼女のお陰だと言っても過言ではない。

 本当に頼もしい仲間たちですこと。ご主人様(マスター)としてボクも負けてはいられない!


「ふっ!やあっ!」


 腰を支点にして右へ左へと振り回す。

 うぐぐ……。これまで使用していた短槍と違って槍の穂先だけではなく斧刃やその反対側の突起もついているから重くなっている分だけ止めるのがきつい。

 油断するとあっという間に体ごと流れてしまいそうになるのを懸命に食い止めなくちゃいけない。攻撃そのものよりもこちらの方に気を遣うことになるとは予想外だったよ!


「今度はこっ……、ちぃ!」


 案の定、ユーカリちゃんがその隙を見逃すはずもなかったが、エッ君が【裂空衝】を飛ばすことで反撃の芽を潰してくれた。

 さらにここが押し所と判断したリーヴが【ホーリーボール】で追撃する。近接戦闘キャラだと思っていた二人からの遠距離攻撃に対応するため、彼女の体勢が大きく崩れる。

 今だ!


「スウィング!」


 くるりと一回転しながら遠心力を乗せて、柄の先の石突きを叩きつけるよう左から右へと思いっきり横薙ぎに振るう。


「そのくらいなら!」


 それでも対処してしまうのがユーカリちゃんのユーカリちゃんたる所以(ゆえん)かな。

 渾身の一振りは大太刀の切っ先によって上方へと弾かれてしまった。


 本当にさすがだ。


 ここまで思い描いた通りに反応してくれるだなんて!


 思わずニヤケそうになる顔を引き締めながら、素早くハルバードを握り締め直す。


「【スラッシュ】!」


 叫んだ瞬間、ゲームのアシスト機能によりボクの体が適切に動き始めた。


「なっ!?まさかさっきのもフェイク!?」


 すぐさま動き始めたボクを見て、ユーカリちゃんが目を見開いていた。

 その視線の先には、跳ね上げられていた石突き側が高速で引き下ろされたことで天高く掲げられた穂先部分があった。


「てえええええい!!」


 そしてその勢いを止めることなく、ユーカリちゃんに向かって落下させる。ただでさえ姿勢が崩れていたところを無理矢理動いたのだ。

 さしもの彼女であってもこれに対応することはできなかった。


「ぐうううっ!」


 左の肩口へと直撃した斧刃がHPを削っていく。

 しかし彼女は声を発することで攻撃を受けた衝撃に耐えようとしていた。まずい。このままだと攻撃の判定が終わったと同時に反撃がくることに!

 闘技を使った反動で動けないため、先ほどのユーカリちゃん同様にまともに攻撃を受けてしまうことになる。


「チーミル!」


 そう叫んだのは直観というよりもほとんど条件反射の領域だったと思う。

 小さな人影がボクたちの間に入り込んだかと思えば、両手に持つ二本の剣で大太刀が動き始めるところを食い止めていた。


「くっ、たああああ!!」

「きゃあ!?」


 が、拮抗していたのもほんの一瞬。ユーカリちゃんが力任せに強引に振り切ったことで、チーミルが再びふっ飛ばされた。一度目と違ったのはそのすぐ背後にボクが居たことだろうか。

 これまたほとんど条件反射で飛んできた彼女を抱えたまでは良かったが、


「うっひゃあ!?」


 勢いを受け止めきれずに結局二人して後ろにコロコロ転がることになってしまったのだった。

 二人揃って咄嗟に武器を仕舞えたのは運が良かったとしか言いようがない。後生大事に武器を持ったままでいたことで怪我をしてしまった、なんてことになったら情けなさ過ぎるもの。


 ちなみに、追撃が行われなかったのはリーネイが【アースボール】で足止めをしてくれたからだった。あのフォローがなければ高い確率でボクたちは敗北していたように思う。

 起き上がるボクたちの元にみんなが集まってくる。


「リュカリュカ、今のは無茶し過ぎよ」

「そうですわ。あなたはわたくしたちの要なのですからね!」


 そして早々にお小言を頂くことに。

 喋ることのできないエッ君とリーヴまでもが、しきりに頷くことで同調していた。


「ごめんごめん。ちょっとみんなの活躍に触発されちゃってさ。これからは気を付けるから」


 反省はしている。

 だが後悔はしていない!


 お陰でようやくボク自身の手であの子に一撃を与えることができたのだから。


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