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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二章 お出かけ前の一騒動
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22 次の日

新章開始です。

 翌日、学校から帰って来てみると、ヘッドギアに『OAW』運営からの連絡が届けられていた。


「なんだろう?」


 気になったボクは、着替えもそこそこに仮想ディスプレイを展開させて内容を確認してみることにした。


「えっと、なになに……」


 そこに書かれていたのは、プレイ報告を公表することを同意したことへの感謝の言葉と、その報告が好評だったこと、さらには公表を前提としたプレイ報告を継続して行って欲しいという依頼だった。


 実は昨日、ログアウトしてからは再度『OAW』を立ち上げる気にならなかったボクは、キャラクターメイキングの前にアウラロウラさんからもお願いされていたこともあり、プレイして感じたことなどをまとめて運営宛に送っていたのだ。

 どうやって書いていいのか見当がつかなかったので、ボク主観の日記のようになってしまったのはご愛嬌。


 事態が動いたのはそれから数時間後のことだった・夕飯後にまったりとしていると、運営から「送った報告を公開させて欲しい」という内容の要望があったのだった。

 ボクがエッ君をテイムしたことやブラックドラゴンを守護竜にしたことは、運営側でも想定外のことだったみたいで、なんでも「そうできるかもしれない余地を残していただけ」だったのだとか。


 具体的な数字を言うと、百億分の一。

 リアルでなら宝くじの一等だって当たってしまうほどの確率だよ……。


 運営から送られてきた文面を見て、やるせない気持ちになってしまったのは、まだまだ『OAW』にどっぷりと浸かりきっていない証拠かもしれない。


 ともかく、イベントがそんな変わった展開を迎えたことと、ボクの書いた報告書が面白かったということで、公表させて欲しいというお願いがあったという訳だ。

 個人情報が流出しないように運営の方でしっかりとチェックをしてくれるというし、今後トラウマ直行便にならないようなイベント展開を心がけてもらうことを条件に許可をしたのだった。


 け、決して例のAR技術を用いた機能のテストプレイヤーにしてもらえるという報酬に目が眩んだわけではありませんヨ?


 その後はお小遣いアップのための交渉材料を手に入れるためと、安定したゲームのプレイ時間を確保するために、授業の予習復習を行ってから眠りついたのでした。

 そして今日は今日で平日の月曜日だから、学校へ行ってようやく先ほど帰ってきたところだったのだ。


「あんなプレイ報告が人気になるとかビックリなんですけど……」


 決して手を抜いただとか、適当に書いただとかいうことはないけれど、書式などが分からなかったことからその場の勢いで書き上げた感があることは否めない。

 確か碌に文章の推敲すらしなかった覚えがある。好意的に捉えるなら、そうした部分が本音のように思えて共感を呼んだということになるのだろう。

 が、やっぱり気恥ずかしいというか、自己評価をはるかに超える評価を貰うことになって戸惑ってしまったのだった。


「あれ?まだ続きがある……?」


 報告の継続依頼の下にまだ続きがあることに気が付いたボクは、仮想スクリーンを操作してその先を表示させた。

 果たしてそこにはとんでもない内容が記されていた。


「AR技術によるテイムモンスターとの触れ合い機能が実装された時には、無料で先行配布してくれるって!?」


 直後にボクは依頼を受ける旨を運営へと伝えたのでした。


 嬉しい情報を受けてさっそく『OAW』へとログイン、といかないのが世の中の辛いところ。リアルあってこそのあちらの世界ということで、やらなくちゃいけないことをサクサクと片付けていく。

 くっくっく。伊達に長年里っちゃんから勉強の仕方を教わってきた訳じゃないのだよ!あ、すぐに覚えられなかったのだから大したことない等の突っ込みはなしの方向でお願いします。


 宿題と軽く明日の予習をしたところでちょうどご飯の時間に。

 以前からこのタイミングで終わらせられるように訓練していたこともあって、いい感じで夕食後の時間が空いたことになる。

 美味しくご飯を食べた後、明日の準備を終わらせて、と。

 これで心置きなくゲームを始めることができ――、


「優華、先にお風呂に入っちゃって」


 …………。


 どうしてこう、こちらのやる気とか気力を削ぐ絶妙なタイミングで言ってくるかな……。たまに超小型カメラか何かで監視されているんじゃないかって思うことがあるよ。

 里っちゃんや友達も同じような文句を言っていたことがあるので、母親とはそういう生き物なのかもしれない。


 ただまあ、ご飯を作ってくれているという意味合いから、ボクの生殺与奪権を握っているとも言えるので逆らうのは得策じゃない。

 というかむしろ愚の骨頂。

 粛々と準備をしてお風呂へと向かったのでありました。


 はい!そんな訳でお風呂にも入って綺麗さっぱり湯上り美人となったところで、気を取り直して『OAW』へとログイン……するつもりだったのに髪が乾ききってない!?

 ゲーム中は基本的に横になっているから、湿ったままだと髪におかしな癖がついてしまうかもしれない。諦めて、火照った体を適度に冷ますことにしようか。


 そういえば携帯端末と同期させることで『OAW』をプレイ中でもメールなどがあったことを知らせてくれるようになるらしい。

 逆に運営からのお知らせなどを手持ちの端末でも確認できるようになるのだとか。今後の快適なプレイ環境構築のため、時間つぶしも兼ねてその辺りの設定をしておきますか。


 端末とヘッドギアの仮想ディスプレイを操作していると、そよそよと入り込んでくる爽やかな風を感じる。ボクの家の周囲にはまだ田畑が多いためか、五月のこの時季なら涼しい風が通り抜けていたのだった。

 明け方ともなると寒く感じられることもしばしばだけど、今の時間なら窓を開けたままでも大丈夫だろう。


「よし、完了っと」


 ちょうどいい具合に髪も乾いたようだ。一応の風邪防止のために上着を羽織ってから、VR用のヘッドギアを装着してベッドへと横になる。

 今さらだけど、はたから見ると結構怪しい格好かもしれない。脳波感応式の情報検索方式が普及してきたことでヘッドギアタイプの情報端末自体は珍しいものじゃなくなっているのが救いかな。


 ちなみに、うちの親には「里っちゃんが懸賞で当てた物を借りている」と言ったら、あっさりと信用していた。

 実際その通りだし、何もやましいところはないのだけれど、相変わらずの里っちゃん贔屓(びいき)に心の中でため息をついてしまった。

 まあ、変に疑われるよりはよっぽどマシだけどね。


 さあ、それじゃあ気を取り直して冒険の世界へと旅立つとしますかね。


次回からは、月曜~金曜の18:00に更新していく予定です。

よろしくお願いします。

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