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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後
211/933

211 必勝法はあるのか?

 開始直後から想定外の事態に見舞われて、最後まで混戦の様相を(てい)していた三回戦だけど、結果としてはなんとかボクたち『テイマーちゃんと愉快な仲間たち』が勝利することができた。

 しかしながらそれはかなりの僅差であり、リルキュアさんの最後の一押しがなければ負けていたかもしれないというものだった。


「まさかボクたちの動きに合わせて、対角にいたチームの人たちまで攻勢に出てくるとは思いませんでしたね」


 遥翔さん本人こそ戦闘不能にさせられなかったものの、これによって飛び地状態になっていたボクたちの陣地は全て取られてしまったのだった。


「自分がもう少ししっかりしていれば、もっと差をつけて勝利することもできたのですが……」

「何を言っているんだ。お前があそこで踏ん張ってくれていたからこその勝利だぞ」

「そうそう。あのチームがこっちに雪崩れ込んで来ていたら、俺たち間違いなく負けてたよな」


 凹みそうになる遥翔さんをマサカリさんとヤマト君が励ます。男の友情だねえ。


「ヤマト君たちの言う通りですよ」

「ですね。それに失敗した点を上げるならボクなんて攻め込んだ瞬間に返り討ちでしたからね!?格好悪いったらありませんヨ……」


 どうやらあのプレイヤーさん、ボクがやって来るのを待ち構えていたらしいです。しかしそんなことだと知らないボクはのこのことその場に突撃して行ってしまい……。

 後は何度も説明した通りでございます。


「まあ、あのプレイヤーもそれだけ必死だったということでしょうね。『テイマーちゃん』とはプレイしているゲームが違うから、今回のイベントが終われば会うことができなくなると言っても過言じゃないもの」


 以前ミザリーさんが言っていたように『OAW』ではトッププレイヤーと呼ばれる人たちですらレベル三十五には到達していない。

 従ってレベル四十だと自己申告していたあの人は必然的に『笑顔』のプレイヤーということになる訳です。


「『笑顔』のプレイヤー同士であれば、イベント後にもPvPを挑んで雪辱を果たすということもできなくはないですが、ゲームが異なるとなればそういう訳にもいきませんからね。おかしな噂や苦手意識が発生する前に手を打とうとしたのかもしれません」


 ミザリーさんによると、ボクの『テイマーちゃん』という呼び方から「<テイマー>のプレイヤーに弱い」という噂が出てこないとも限らないのだとか。

 残念ながら悪意を持ってそうした噂を広げようとするやからが『笑顔』にも『OAW』にも少なからずいるのだそうだ。


「だが、どっちかと言えば苦手意識が固着してしまうことの方が問題だぞ」


 と付け足してきたのはマサカリさんだ。


「これはプレイヤーが相手の時だけじゃなくて、ゲーム内のキャラや魔物でも起こることなんだが、特に二度三度と連続で同じやつに負け続けると苦手意識が生まれてくるんだ。しかも性質の悪いことに、その範囲は徐々に拡大していく」


 例えば、ある狼型の魔物に何度も負け続けて苦手意識が芽生えてしまうと、それまで楽に狩れていた弱い狼型の魔物にさえ苦戦してしまうようになるのだとか。

 先ほど噂の例えで出てきた「<テイマー>のプレイヤーに弱い」という文言も、最初はボク個人に対する苦手意識だったものが<テイマー>という職業全体に広がったこと表しているそうだ。


「そ、それは……、ムキになって待ち構えていたのも当然というか、むしろちゃんと負けてあげることができて良かったと言うべきなのかも……?」

「そうね。『テイマーちゃん』が対戦を受けてくれて、今頃ホッとしているのかもしれないわ」


 二回目である『じゃんけん勝負』の時に既に苦手意識はあったようなので、ある意味プレイヤー生命を掛けて挑んできていたのかもしれない。


「他所のチームのやつのことはこれくらいにして、次の試合のことを話し合わないか?」


 ヤマト君に言われて居住まいを正すボクたち。

 さっきの三回戦では色々と課題、というか問題点が浮き彫りになっていた。特に調子を崩す元になってしまった対ロボット戦での『じゃんけん勝負』については、その仕様から確認し直しておくべきだよね。


「ロボットが相手の場合、『じゃんけん勝負』では技能の熟練度によってボーナスが入るようになっていたんですよね?」


 ボクの言葉にメンバーの皆が頷く。マサカリさんだけ若干反応が鈍かったのは、直接戦闘ばかりをしていたからだろう。

 そしてリルキュアさんと遥翔さんの高熟練度の技能持ち二人によると、ボーナスが発生すると特定の演出が表示されるのだそうだ。


「次にロボットが出す手が表示されたり、後だしなのに負ける手を出してきたりとその演出にも数種類あるみたいね」

「こだわりポイントそこなの!?って思わず突っ込みたくなるんですが……」

「そこはもう、あの運営だからと諦めるより他ないだろう」


 と、疲れたお顔で言うマサカリさんです。

 ハイレベルだし古参プレイヤーということで、『笑顔』の運営がやらかしたあれやこれやに巻き込まれたことがあるのかもね。


「話を戻すと、そうしたボーナスがあるので私たちは、ある程度以上の技能熟練度があれば絶対に勝てるものだと思い込んでしまった」


 ところがどっこい、それが大きな罠だったのだ。


「まさか負ける可能性が残されているとは……」

「レベル五十以上のプレイヤーでも負けることがあったみたいで、掲示板が大騒ぎになってる。多分、もうじき愚痴スレが立つんじゃないか」


 これには「じゃんけんなので勝つこともあれば負けることもあります」という微妙に答えになっていない運営からの正式回答が火に油を注いでしまった形になっているようだ。


「まあ、いくら望んでいた解答と違ったからと言って、詐欺だの不具合隠しだのと根拠もなく煽るのはいかがなものかと思うけどな」


 イチャモンつけたり文句を言いたいだけだったりする人もいるようだし困ったものだ。

 ただ、放置されているということは、そこでストレスを発散してくれる方が良いと運営が考えている可能性もあるんだけどね。

 上手く運営の掌の上でコロコロされている――かもしれない――ことに、果たして彼らは気が付いているのだろうか?


 おっと、そんなどこの誰とも知らない人たちの事よりも、今は自分たちのことを考えないと。

 対ロボットの『じゃんけん勝負』必勝法か。

 うーむ……。考えれば考えるほど「そんな都合の良いものあるはずがない!」という結論に辿り着いてしまうのですが……。


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[気になる点] 「『笑顔』のプレイヤー同士であれば、イベント後にもPvPを挑んで雪辱を晴らすということもできなくはないですが、ゲームが異なるとなればそういう訳にもいきませんからね。おかしな噂や苦手意識…
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