表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後
208/933

208 三回戦3 反撃の狼煙

 二人の敵対チームのプレイヤーを前にして、ボクは絶体絶命――かもしれない――のピンチを迎えていた。

 HPを始めゲーム的な体力面こそ完全な状態だけど、初手で使用したオーバーロードマジックによってMPは半分以下、加えてそこから闘技を絡めた連続攻撃を繰り出したこと、それが成功したにもかかわらず成果が低かったことで精神的な疲労は少なくない。


 異なるチームのメンバー同士だからお互いを警戒するような動きは見せるものの、こちらへの対処を優先しようとしているのは同じのようだ。

 上手く二人が対立するように誘導しようとするならば、里っちゃんと同じくらい弁が立たなくてはいけなさそうだね。

 二人の動きをけん制するためという理由があったにしても、先手を打って攻撃したのは失敗だったかも。


 これは最悪このマス内で追いかけっこをするしかないかな、と覚悟を決めようとした時にそれは起きた。


「な、何だありゃ?」


 突然一人が呆然としたお顔で呟いたのだ。その心底驚いた表情に罠ではないと感じ取ったボクは思い切って彼の視線が向けられている方へと向き直ってみた。


「は……?動き出したと思ったらロボットがあっという間に活動停止?」


 そこには既視感がある、どころかこの数時間ですっかり見慣れてしまった光景が繰り返されていた。


「あ、マサカリさんだ」


 小さく「どっりゃああ!」とか「ふんぬううう!」などの叫び声も聞こえてきているので間違いなくあの人の仕業だね。


「ま、マサカリだって!?」

「マサカリっていうと、デストロイヤーか!?」

「うえ?何ですかその痛々しいの!?」


 もしも自分から名乗っていたのだとすればダークネスなクロニクルへ直行便なんですが!?


「俺も初耳なんだけど!?」


 と言ったのはデストロイヤー呼びをしなかった方のプレイヤーさんだ。

 おやおや?なんだか妙ですよ。普通そういう二つ名というものは正式な名前と一緒にか、もしくはそれ以上のスピードで広まってしまうものだ。

 なので、マサカリさんのキャラクターネームより知られていないというのは珍しい。


「最近、しかも極一部でのみ言われ始めたってこと?」

「お?『テイマーちゃん』鋭いな。大正解だぜ。なんでもPvPで負けた連中の一部が嫌がらせのように中二病っぽい二つ名を広めようとしているらしいぞ」

「うわあ……。せこいというかみみっちいというか。でも、地味にダメージが来そうな嫌がらせだな……」


 その意見には大いに納得できるね。ボクもクンビーラで『ドラゴンテイマー』なる呼び名が広まり始めていると聞いて、何とも言えない気分になってしまったもの……。


「というか、すぐにマサカリだって分かったということは、もしかして『テイマーちゃん』のチームメンバーなのか?」

「お?そちらの方、鋭いですね。ピンポンピンポン大正解ですよ」

「マジか……。実家に帰らせて頂きます」

「いやいや、どこまで帰るつもりだよ!?」


 うーん……。さっきまで真剣勝負で戦っていたのが嘘みたいだね。すっかり即興素人漫才の場となってしまっているよ。


「ここは、「まさかこのまま逃げられるとでも思っているのか?」とでも言うべきでしょうかね?まあ、どう頑張ったところで勝てそうにはないから、逃げてもらえた方がボクとしても嬉しかったりするんですけど」


 このまま戦闘再開となってしまった場合、負けるのは間違いなくボクの方となる。

 その後やって来たマサカリさんによって二人も戦闘不能になり、めでたくボクたち三人は仲良くそれぞれのスタート地点へと逆戻り、というのが一番あり得そうな流れじゃないかな。


「まあ、まだ無理するような時間帯でもないか」

「だな。ここは一旦仕切り直しといくか。だが、『テイマーちゃん』。次に会った時には容赦はしないぜ!」

「ふふん!また返り討ちにしてあげるから」


 実際には返り討ちどころかさっくりやられてしまうのがオチのような気もするけど、ここはちょっぴり大口を叩いておくべきところだろう。


 じりじりと後ずさりをして十分に距離が開いたと思った瞬間、二人は身をひるがえして脱兎のごとく走り去って行ったのだった。


「『テイマーちゃん』!」


 その直後に背後から切羽詰まった声で呼びかけられた。

 振り返ると遥翔さんがすぐ側にまでやって来ていた。きっとペナルティの移動不可時間が終わってすぐにこちらへと向かってくれたのだろう。一マス向こうくらいにリルキュアさんの小さな体が見え隠れしていた。


「間に合わなかったようですね……。申し訳ない」

「いえいえ。遥翔さんが急いで走ってきているのが見えていたから、あの二人も退却を選択してくれたんだと思いますよ」


 マサカリさん一人であれば、運が良ければもう一人を生け贄にすることでどちらかは逃げ切ることができたかもしれないからね。

 あっさりと引いた彼らだけれど、本音としてはここでボクを行動不能にさせた方が後々には有利になると考えていた可能性もあるので。


 そうこうしている間に、マサカリさんとは反対の方向からミザリーさんとヤマト君コンビも近付いて来ているのが見えるようになっていた。

 防衛線構築は何とか上手くいっているようだ。このまま流れを引き寄せ続けることができれば、出遅れてしまった分も十分に取り戻せるはずだ。

 そのために必要となるのは……、敵対チームの行動を制限すること!


「遥翔さん、このまま他チームの撹乱に行けますか?」

「今からですか!?行けなくはありませんが、先に周りの陣地化を終わらせてしまった方が良いのではないですか?」

「それを安全に行えるようにするための作戦なんです」

「ああ!他のチームが攻めてこられないように、ということですね。任せてください!」


 ちなみに、スタート地点周辺の足元の自陣地化はヤマト君たちにお願いする予定だ。

 そしてマサカリさんとリルキュアさんには構築した防衛線の守備をお任せするつもり。範囲が広いので大変な役回りになってしまうけれど、遥翔さんが言った通りこの作戦が上手くはまれば攻めるどころの余裕はなくなってしまうはず。


「無理にマスを自陣地化する必要はありませんので。ロボットは基本的に無視、スイッチは通り道にあるのを触るくらいで十分ですから」


 恐らくはそこに居るというだけで、それぞれのチームの目を引き付けることになると思う。


 さあ、それじゃあ、思いっきり反撃といきましょうか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ