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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後
198/933

198 一回戦終了

 マサカリさんの名前が効いたのか、その後も『ファイナル』の人たちはボクたちが奪取したマスを取り返しに来ることはなかった。

 でも、彼は名前こそ知られているものの顔の方はそれほど売れていなかったはずなので、情報としては真偽不明ということになるはずなのだけれどなあ。


 最悪「名前を語っただけ」だと思われて大勢で押し寄せて来ることも覚悟していただけに、ちょっぴり肩透かしな気分になってしまった。

 まあ、あちらとしては確認を取るための時間と、本物だった場合――もちろん本物な訳ですが――は返り討ちにされてリスタートまでの時間をさらに無駄にしてしまうことを嫌った、ということなのかもしれない。


 しかし、そうなると『ファイナル』が選択できる行動の範囲は当然狭まって行く訳で。

 スタート地点近辺の足場固めを終えた彼らが次に目指したのは、『ラグナロク』が陣地を広げようとしていた場所だった。


「左方向から敵襲!?」

「なんだと!?『テイマーちゃん』たちが引いたと思ったら、今度はあいつらかよ!?」


 慌てて迎撃に向かおうとした『ラグナロク』の面々。

 ところが、そんな彼らにさらなる悲劇が襲い掛かろうとしていた。


「!?リーダー!右からも侵入者が!?」

「まさか『ロゼッタ』の連中まで攻めて来たのか!?」


 そう。ボクたちが『ロゼッタ』との防衛線を築いたことで、そちらには進攻し難いと考えたのか、反対側へと進出して行ったのだ。

 そして結果的に『ラグナロク』は両サイドからの攻撃を受けることになってしまう。

 加えてメンバー全員が寄り集まったまま動いていたものだから、包囲されてしまい身動きが取れなくなってしまったのが痛かった。


 最終的にスタート地点近くの数マス以外はすべて奪われてしまい、最下位で終了ということになってしまったのだった。


 次に得点が低かったのは『ロゼッタ』だ。早々(はやばや)と『ラグナロク』側へ進出することを決定したのは良い判断だったかもしれない。が、自分たちのスタート地点近くのマスを自陣地化することなく向かったのは失策だったと思う。

 反対側から攻め込んできていた『ファイナル』とも合わせて三つ巴のプレイヤー同士の戦いとなってしまったため、それほど多くのマスを確保することはできずに時間切れとなってしまったのでした。


 そんな展開を横目に、ボクとマサカリさんは地元の足場固めに奔走(ほんそう)していた。

 『ロゼッタ』の面々が矛先を変えたことで空白地帯が生まれたため、ミザリーさんとヤマト君の二人も遥翔さん、リルキュアさんと一緒になって防衛線を押し上げることになってしまったからだ。


「ああ、もう!ロボットがでっかくて邪魔!」


 ロボットマス担当のマサカリさんからすれば分かり易い目印ということになるのだろうが、スイッチマスを探して走り回っているボクからすると、視界を遮る障害物以外の何物でもなかったのだ。

 しかも反対側へと通り抜けようとすると、どうしてもある程度はロボットに近付かなくちゃいけなくなる。


「うひい!?」


 ブオン!と重低音な風切り音を残して横なぎに振られた腕を、床に体を投げ出すことで辛うじて避ける。


 こわい、コワイ、怖い!


 いつ無防備になってしまった背中にその太い腕が叩き付けられるかもしれないと考えると、体が硬直して動きが空回りしてしまいそうになる。

 意識ばかりが先走りそうになるのを懸命に抑えて、一つずつ確実に体の各部を動かして立ち上がる。


「おーい、『テイマーちゃん』!生きてるか!?」

「半分くらいはー!」


 こちらに向かってくるマサカリさんに軽く手を振りながら無事を伝えて、次の目的地へと走り始める。

 背後から「だらっしゃあ!」という掛け声と堅いもの同士がぶつかり合う音が聞こえてくる。あのマスが陣地になるのも時間の問題だろうね。


 そんなこんなで半分を折り返すころにはボクたちのチームが全体の約三分の一のマスを確保しているという状態になっていた。

 十分を過ぎた頃になって、ようやくそのことに気が付いた他のチームが反攻に出始めたけれど後の祭り。しっかりと防衛線を築いていたボクたちを抜くことはできなかった。


 一撃必殺のマサカリさんは言うに及ばず、ミザリーさんとヤマト君コンビは遠距離と近距離の攻撃を使い分けて翻弄しながら着実に敵プレイヤーたちをスタート地点へと送り返していく。


「ふふふ。さあ、直接戦闘か『じゃんけん勝負』か選びなさい」

「ぐ、ぐぐ……。じゃ、『じゃんけん勝負』だ!」

「いいわよ。それじゃあ、私が相手になってあげるわ」


 リルキュアさんは最前線のロボットマスに陣取っては『じゃんけん勝負』なら自分で、直接戦闘ならロボットと一緒になって戦うことで、侵入者を撃退し続けていた。


「ぎゃーす!?絶対パーだと思ったのにー!!」


 あ、また負けた人が悲鳴を上げながら消えていったよ。


「残念だったわね。時間があるならまた来なさい」


 外見を見て(あなど)るのか、それともロボットよりは勝ちやすいと高を括ってしまうのか、レベル差に気が付かずに彼女に『じゃんけん勝負』挑んで返り討ちに会う人の多いこと多いこと。

 もしかすると対プレイヤーの勝利数が一番多いのはリルキュアさんかもしれない。


 え?皆が活躍している間にボクは何をしていたのかって?

 当然勝利のために頑張っていましたとも。


 〈敏捷〉の値が高くて足の早いボクと遥翔さんは、隙を突いては他チームの陣地となっているスイッチマスを自陣へと変化させていた。

 早い話が嫌がらせと時間稼ぎだね。


「あああ!また『テイマーちゃん』にやられた!?」

「ふっふっふっふっふー。また会おう、タケチ君」

「だからタケチって誰なんだよ!?っていうか、もう来るな!」


 戦闘になっては勝ち目がないので、捨て台詞を残してさっさと退散です。


「くっそー!誰か手の空いてるやつ、復旧頼む!」

「ちょっ!?無理だって!こっちは『ラグナロク』と『ロゼッタ』の二チームを相手にしてるんだから!」

「むしろこっちを手伝ってー!」


 四チームによるバトルロイヤルだということも追い風になったね。

 もっとも、ここで三チームが一旦停戦をして一斉にボクたちの敵に回ったとしたら逆転されていた可能性は高い。よって、このシステムが絶対的にボクたちの有利に働くわけではないということは肝に銘じておかなくちゃいけないだろう。


 そして、「ビーーーー!!」という電子音が響き渡り、長い十五分間は終わりを告げる。


 ボクたち『テイマーちゃんと愉快な仲間たち』は、三十五マスという全体の三分の一以上のマスを制して勝利し、二回戦へと駒を進めることになったのだった。


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