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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後
192/933

192 湧いちゃった

 お昼休憩から帰ってくると、いつの間にやら変な人たちが湧いていたらしい。

 身も蓋もない言い方だけど、ひたすら自分の主張だけを押し通そうとするような態度はやはり格好の良いものではないと思うのだ。

 それは露店を出したいと運営に要望する人たち(しか)り、エキシビジョンバトルで有利になるように協力を強要しようとする人たち然りだ。


 段々と周囲の目が冷ややかになっていることに、ヒートアップしてしまった彼らは気が付くことができるのだろうか?

 欲張った結果、かえって自分の首を絞めてしまったとか、不利益を被ることになってしまったというのは教訓話などでは定番の流れの一つであり、リアルでもそれなりによく聞く話でもあるのだけれど。


「騒ぐのは勝手ですけど、せめてボクたちの迷惑にならないところでやって欲しいですよね」

「全くだ。……が、残念ながらそうも言っていられなくなってきたのかもしれんぞ」


 マサカリさんの言葉にいやーな予感がして振り返ってみると、そこには暗い顔をした幼女と青年が立っていた。

 言わずと知れたチームメンバーのリルキュアさんとヤマト君だ。


「お帰りなさい。その顔から察するに二人もおかしな勧誘を受けたというところですか?」


 遥翔さんの指摘に正解だと告げるように首を縦に振る二人。


「ええ。所属しているギルドのメンバーに対して、協力するように話を付けろと言ってきたらしいわ」

「俺の方はゲームを始めたばっかりの頃に色々と教えてくれた先輩とかリアルの友達だな。皆「『テイマーちゃん』と同じチームになれて羨ましいぞ!」って感じで誤魔化してたけど、結構無茶なことを言われたのかもしれない」


 うわあ……、それって気を遣われているのが丸分かりなやつだよね。ストレートに言われるよりも迷惑をかけてしまっていると強く感じてしまうパターンですよ。

 そしてどうやら他の皆も同じような対応をされていたようで、一様に険しい表情となっていた。


 と、そこに残る最後のチームメンバーであるミザリーさんも戻って来た。

 そして何とこちらも浮かない顔というオマケ付きだった。


「まさか、ミザリーさんも?」


 ボクの問い掛けにコクリと頷く彼女。

 こんな時になんだけど、保護欲をそそられそうになるリルキュアさんとは違って、憂い顔がやたらと色っぽいです。

 男性陣三人に至っては余計なことを口走ってしまわないようにと、空気を読んで少し視線をずらしていたほどだ。


 話を戻そう。ミザリーさんによると、彼女は一時『笑顔』でも遊んだことがあるそうで、その関係から『OAW』側としてエキシビジョンバトルには出るなと言ってきているらしい。


「他のプレイヤーたちと協力しながらというのがどうにも性に合わなくて、早々に『OAW』に移行したんですが……。まさかその頃の知り合いを辿ってまで強要しようとしてくるとは思いませんでした」


 ちなみに、ミザリーさんが軽く調べてみたところによると、両方のゲームをプレイしていて、なおかつ『OAW』側から参加しているプレイヤーの多くに同様の強要が行われていたらしい。


「よくそんなことを調べられましたね……」

「詳しくは話せませんが、ちょっとした伝手があったんです」


 ニコリと見惚れるような笑顔を浮かべるミザリーさんです。が、言外に「これ以上の詮索は無用」と言われている気がして、ボクたちはブンブンと首を振りまくったのだった。


「だけど、『笑顔』をプレイしたことのある『OAW』プレイヤーの大多数に強要しているとなると、かなり大きな規模で動いているということになるわよ」

「俺たちに対してもそうだが、運営にバレないように直接的な接触はしていない。それなりに慎重な連中であるとも言えるんじゃないか」


 ただしその反面、口止めをしたり証拠の隠滅をしたりということはしていない。


「穴だらけに感じるのは、今日になって実情が分かったから、なのかもしれません」


 確かに『OAW』と『笑顔』の合同開催イベントだということは開会式での発表の時まで伏せられていた超一級の機密事項だ。


「つまり、しっかりとした計画を練っていられる時間がなかったということね。推測にしか過ぎないけれど納得できる理由だし、その可能性は高そうだわ」

「そうなると運営であれば連中の足取りを辿るのはそう難しいことではなさそうですね。報告だけして後は丸投げしておいても基本的には大丈夫そうなんじゃないでしょうか」


 変に首を突っ込んだことで余計に話がこじれてしまうというのはあり得そうな話だ。

 任せられるのであれば専門家にお任せしておくのに限るというものだろう。


「でも、私たちの立ち位置というか立場は明確にしておく方が良いかもしれないですね」


 これにて一件落着、めでたしめでたし。となりそうだったところに注意を促してきたのはミザリーさんだった。


「あらかじめ態度を明確にして公表しておくことで、これ以上干渉されないように予防線を張ることができますから」


 彼女の場合は『OAW』と『笑顔』の公式イベント自体への参加者数の違いを突くつもりであるらしい。

 これはおおよその対比で言うと一対二となる。そのためエキシビジョンバトルでは『OAW』側のプレイヤーは全員参加なのに対して、『笑顔』側は抽選ということになっている。


「『OAW』の参加者が減れば、当然『笑顔』の参加者も減少することになります。できるだけ多く参加できる枠の数を確保するためにもエキシビジョンバトルへは参加する、とでも言うつもりです」


 単にこちらの要求を通そうとするだけではなく、相手側にも配慮した結果だという形にすることで反論できる隙をなくすという高等技術ですよ。


「それなら向こうも文句を言い辛いな!さすがはミザリーさんだぜ」


 タイムアタックの時にコンビを組んでいた影響なのか、ヤマト君はすっかりミザリーさんのことを信頼するようになっていた。

 まあ、彼女の方もその関係を悪用するつもりは全くないようなので問題はないだろう。


「そっちはそれで良いとして、残るは俺たちだな」


 ええと、確かボクの情報を流せとか言っているのだったっけ?


「スリーサイズは極秘事項ですよ?」

「いやいや。情報と言ってもそっち系統じゃないから。むしろそれなら即通報して終了しているから」


 うむう……。

 せっかく頑張ってボケたのに真面目に返されるのはちと辛いです。


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