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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後
191/933

191 お昼休憩

「本戦一回戦は午後一時半に一斉に開始しますので、参加される方々は十分前までにログインしておくようにしてください。それではいったん解散とします」


 という訳でお昼休憩の時間と相成りました。すぐに三分の二くらいの人たちがログアウトしたことで空間に余裕ができた、と思いきや知人と合流しようと動き回る人たちが続出することに。

 そうなると不思議なもので、さっきまで以上に雑多で高密度な印象を受けることになったのだった。


「さあてと、それじゃあ昼飯を食べにログアウトしてくるかな」

「そうね。一時間くらいはあるとはいえ、それほどのんびりとはしていられないでしょうから」


 現在もうすぐ午後十二時三十分になるというところ。リアルでボクが通っている学校のお昼休みとほぼ同じ時間帯だね。

 そして雪っちゃんたちクラスメイトや中学の時の顔馴染みとお喋りしていて、あっという間に時間がなくなるということは何度も経験している身としては、リルキュアさんの意見には諸手を上げて大賛成。

 さっさと昼食等々を終わらせておきましょうか。


 そしてリアルでの諸々の用事を済ませて、ボクが再度ログインしたのは一時を少し過ぎた頃合いのことだった。


「お帰り」


 そこには既にマサカリさんと遥翔さんの二人がいた。


「二人とも早いですね」

「ガッと飯食って歯磨いてトイレ行くだけだったからな」

「あはははは。まあ、おおむねその通りなんですけど」


 マサカリさんのあんまりな物言いに、苦笑いしながらも同意する遥翔さん。

 凝った料理にでも挑戦しない限りは休日のお昼ご飯なんてそんなものなのかもしれない。


「しかし、早いと言うなら『テイマーちゃん』だってそうだろう。俺たち男連中と違って、女性陣は基本的に準備に時間が掛かると思っていたから予想外だったぞ」


 リアルで外出する際の時間泥棒となる『身だしなみを整える』という行為の大半を省くことができるからね。そう理由を口にすると、二人は揃って「なるほど」と感心したように頷いていたのだった。


 とはいえ、今の段階だと女性の方が少ないというのもまた確かなようだ。人数的にはボクたちがログアウトした時と同じくらいの全体の三分の一ほどだったが、男女比を見てみると五対二くらいの比率だろうか。

 後ほど運営が公表したデータによると、今回のイベントの参加者の男女比率はほぼ同じであったらしいので、全体的な傾向で見ると女性の方が準備に時間が掛かっていたのかもしれない。

 もっとも、この五分後にはほぼ同比率となっていたのだけれど。


「ところで、あれは一体何をやっているんですか?」


 ステージのすぐ側に数十人のプレイヤーたちが集まっており、壇上にいるアウラロウラさんや『笑顔』運営氏と何やら話し込んでいるようだ。


「ああ、あれな。せっかくの祭りなのに屋台の一つもないのはもったいないし盛り上がりに欠けるから、自分たちに露店や屋台をやらせろと要望しているらしい」


 ふむふむ。確かに食べ物関係の屋台とか色々な露店がある方がお祭り感は出る気がするね。

 でも……、本当にそれだけなのだろうか?


「ここで名前を売っておいて、あわよくば新規顧客の開拓につなげようと考えているプレイヤーもいるみたいです」


 なるほど。納得かつ妥当な理由だね。


「ただ、これまでの『笑顔』のイベントでも毎度のように問題が発生していたので、運営としてはすぐに許可を与えることはできないみたいですね」


 イベント、お祭りによくあるぼったくり価格だった等の金銭トラブルに始まり、レベル帯が異なるのでゲーム本編内であれば出会わなかったはずのプレイヤー同士によるもめ事など、イベントに関係ないところで騒動が起こっていたのだとか。

 そのため運営は公式イベントでのプレイヤーが主体となる活動について、慎重な姿勢となっているのだそうだ。


 はっきり言って自業自得な面が強い訳だけど、それでもクリエイター系統のプレイヤーからすれば絶好の発表の機会ということになるから、簡単には引き下がれない部分もあるのかもしれない。


「今回は『笑顔』と『OAW』の合同初開催の公式イベントですから、普段以上に運営も神経質になっているようです」


 これまでならば許可するにしても却下するにしても、『運営』氏の鶴の一声ですぐに決まっていたらしく、このように長々とプレイヤーたちが張り付くようなことはなかったとのこと。

 もしかすると謝罪したあの一件を盾に、プレイヤーたちが要望を受け入れさせようと迫っているのかもしれない。

 ホント、口は災いの元だわ。


「そういえばリアルに戻ってから『コアラちゃん』に連絡を取ったりしたのか?」

「いいえ。別に何の連絡もしていないですけど……?」


 突然のマサカリさんからの質問の意味が分からず、ボクは首を傾げた。


「ああ、別に大した意味がある訳じゃないんだがな。意外な再会だったみたいだから、リアルの方でも何か話をしたのかと思っただけだ」


 つまりは単なる興味本位な質問であっただけということらしい。


「敵対というほどじゃないですけど、明日のこともありますから。話をするにしてもそれ以降になるんじゃないかなと思います」


 まあ、せっかくなので公式イベントが終わってから直接会ってお話ができればいいかなと考え中だったり。

 お盆の時にも会えるだろうけれど、その時はどちらの家族も一緒になるから、どこまで突っ込んだ話ができるのか分からないところがある。

 喫茶店かカラオケに誘うのが定番な気がするものの、勉強のためというカムフラージュができる図書館で会う方がうちの親たちからは怪しまれないかも?


「それがあったな……」


 そういって表情を暗くするマサカリさん。

 そして遥翔さんも困惑しているもよう。


「えっと、どうかしました?」

「明日のエキシビジョンバトルに出るかどうか迷っているんですよ」


 なんでも『笑顔』での知り合いに、ボクと同じチームになっているということがバレてしまったのだそうだ。


「それだけなら問題なかったんだが、どこから聞きつけたのか絶対に勝つと息巻いている連中が『テイマーちゃん』の情報を聞き出せと言ってきているらしくてな。今は様子見しているが、このままエスカレートするようなら、運営に通報しなくちゃいけなくなるかもしれん」


 うわあ……。元々そういう過激な人たちのガス抜きが目的だとはいえ、面倒そうな人たちが出てきたものだ。

 しかも、自分でやらずに他人任せなところがいかにも小物っぽいです。


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