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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十五章 『銀河大戦』1 一日目午前
189/933

189 勝利の余韻?

 タイムアタック終了後、元の個別空間に戻ってきたボクたちの中で最初に口を開いたのはヤマト君だった。


「凄え……。本当に一分以内でクリアできちまった……」


 皆が全力を尽くしてくれたこと、そして何よりお互いにフォローし合おうとしてくれたことが一番の勝因だろうね。


「まあ、かーなーり、ギリギリだったけれどね」

「ああ。それと、出現したロボットとのかみ合わせも良かったんだろうな」


 苦笑しながら言うリルキュアさんに続いて、マサカリさんも見解を口にしていた。

 危なげこそ全くなかったが、一回目の練習では仕留めるまでに数発の攻撃が必要なこともあったのだ。そのため毎回一撃で倒すことができた今回は、上手く低レベルばかりを引き寄せることができたと言える。

 恐らくその分は他の人たちに回ったのだろうけれど、遥翔さんとリルキュアさんのどちらかが『じゃんけん勝負』でさっくり勝利したというところじゃないかと思う。


「自分としてはそれぞれの能力に沿っていて、しかもギリギリながらも破綻することのない作戦を生み出した『テイマーちゃん』に脱帽でした」

「そうですね。後少しでも厳しければ誰かが失敗して台無しになってしまっていたでしょうし、逆に緩ければ、ここまでの好タイムは出すことができなかったように思えます」


 ちょっと、遥翔さんや。結局はあなたのところに負担が掛かってしまって、破綻しかけていたんですけど。マサカリさんの予定以上の快進撃がなければ失敗していてもおかしくない状況だったよ。

 だからミザリーさんもあまり褒めないで。


「それよりもあれだけ時間が押している最中(さなか)だったというのに、冷静に作戦を思い付き、しかもそれを元に俺たちを説き伏せてしまったってことが驚きだったぜ」

「言えてる。俺なんてとりあえず当たって砕けろ!くらいにしか考えてなかったから、あんな作戦が飛び出してくるとは思わなかった」


 居心地が悪くなってしまい訂正の言葉を口にしようとしたところに、まさかのさらなる追撃が!?


「確かに残り時間は少なかったけれど、マサカリさんが言うほど切羽詰まってはいなかったように思うんだけどなあ」

「いやいや、挑戦する時間も含めて二十五分しかなかったんだから、十分切羽詰まった状況だと言えると思うぞ」


 ポロリと飛び出した台詞に、すぐさまマサカリさんが反論してくる。そして他の人たちも同じ意見なのか、苦笑しながらもしきりに頷いていた。


「そこは意識の持ち方の違いということなのかな」


 時間の流れは一定だけど、その感じ方は当然ボクたちに依存している。物事に熱中している時とただ待っているだけの時では時計の進み方が違う、というのは誰しも体験したことがある事だろうと思う。


「例えば試験で「これだけしか(・・)残っていない」と考えた時と、「こんなに()残っている」と考えた時では、同じ残り時間でも結果に大きな差が出てくるはずです」


 そしてこの考え方に関わってくるのが心や意識の持ちようであり、そこに大きく影響を与えるのが「いかに事前に準備をしてきたか」ということ、要は自信の元になることなのだ。


「理屈は分かりますが……」

「まあ、普通はなかなかそこまでの境地には至れないわよね」


 それは同意します。少なくともボクの周りでは里っちゃん以外にそんなことができている人は一人もないのだから。


「ただ今回の場合は、一回目の挑戦でこちらの戦力と練習用フィールドの仕様の大部分を把握することができました。これが自信の元となり、焦ることなく作戦を思い付くことができたという部分が大きいですね」


 つまり、皆の努力があってこそのことなのだ。


「後、これは里、じゃなかった。『コアラちゃん』からの受け売りなんですけど、常日頃から時間に余裕を持って行動していると、自然と落ち着きと自信が生まれてくるらしいですよ」


 自信がないから心のゆとりをなくしてしまい、時間が足りなく感じてしまう。

 これを逆説的に捉えて、時間に余裕を持った生活を行うことで自信の核となる部分を育てよう、ということであるらしい。

 そうすることでいざという時にも焦ることなく、時間がないという感覚にもならずにすむのだとか。


「ちょっと待て。言いたいことは至極真っ当でその通りではあるんだろうが……。それは完全に自分を律せているというか、ある意味悟りを開いた状態じゃないのか?」


 マサカリさんの言葉にひきつった顔で頷くメンバー一同。

 まあ、その気持ちは分からないではない。


「そこは目標の最終到達点だとでも思っておけばいいんじゃないかと」


 苦笑いを浮かべながらそう答えておく。

 実際これに関してはボクはおろか、里っちゃんだって完璧にはこなせていないのだ。悟りを開くだなんて、十代の小娘にはどだい無理な話ってもんですよ。


「なあ、今の話からするともしかして、『テイマーちゃん』よりも『コアラちゃん』の方が凄い、のか?」

「プレイヤー、ゲーマーとしての部分は良く分からないけど、少なくともリアルでは勝てた試しがないかな」


 本気の彼女を相手にして勝てたという記憶はないから間違いないと思う。

 そしてゲームに関しても里っちゃんに一日以上の長があるから、下手をすると勝負にすらならない可能性もある。


「まあ、『笑顔』でも有数のギルド、『新天地放浪団』のギルドマスターだからなあ。有名プレイヤー十人の中にも必ず入って来る人だし、下手ってことはあり得ないわな」


 「興味があるなら見てみるといい」とマサカリさんが教えてくれたのは、『笑顔』公式サイト内にある『コアラちゃん』たちが動画を公開しているアドレスだった。

 公式サイト内ということでアクセスするには無料の会員登録が必要ということだったけれど、どうやら同じ会社が運営しているということで『OAW』のプレイヤーであればそちらの登録情報を流用することができるようになっているらしい。


 ちなみに、逆も同じようになっているそうで、『笑顔』プレイヤーたちの中には何かしら新情報や隠し情報に繋がりそうなことがないかと、『OAW』側へと覗きに来ている人たちもいるのだそうだ。

 『笑顔』プレイヤーたちの間に『テイマーちゃん』についての情報がそれなりに浸透していたのには、そういう背景もあったみたいです。


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