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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十五章 『銀河大戦』1 一日目午前
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182 問題点と対策

 レベル的には随分とばらけているボクたちのチームだけれど、純粋な戦闘力だけを見るとマサカリさんただ一人がずば抜けて高い状態だ。

 特に高レベルの二人、遥翔さんとリルキュアさんが戦闘力皆無というのが痛い。


「技能熟練度は高いんだから問題ないんじゃねえの?」


 ボクの危惧にヤマト君が疑問の声を上げる。

 確かに『じゃんけん勝負』であれば最も高い技能熟練度が適用されるから、一見すると十二分に対処できるように思える。

 が、実はここに大きな落とし穴が隠されていたのだ。


「こちらが対戦方法を指定できる対ロボット戦なら特に苦労もせずに勝利することができると思うよ。でも、対戦方法の選択権が相手にある場合はどうかな」


 ここまで言った時点で指摘したい点に気が付いたのか、メンバー全員がハッとした顔になっていた。


「困るのは対プレイヤー戦、しかも『じゃんけん勝負』か通常戦闘かを選択できるレベルが低いプレイヤーを相手取った場合か!」

「自分、前にバトルマニアだけどレベルが半分のプレイヤーにPvPで負けたことがあります……」


 多分、本当に戦闘に特化させたキャラクターだったのだろうけれど、それでも遥翔さんの告白はなかなかに衝撃的なものだった。


「運営の統計によると、『OAW』ではトッププレイヤーと言われる人たちでもまだレベル三十五には到達していなかったはずです」


 そしてミザリーさんから聞きたくなかった新たな事実が明かされる。


「つまり私も挑戦される側ってことね」

「……勝てそうか?」

「一応、使い捨ての護身用アイテムは持ち込んではいるけれどね。ただ、中の人のプレイヤースキル次第では通用しないことも考えられるし、本当のところかなり厳しいと思うわ」


 と、愁いを帯びた顔で答える美幼女ことリルキュアさん。


「一マスの大きさが二十メートルで、それが十マスだから、他のチームとの距離は二百メートルもないのか」

「対角に位置するチームでも三百メートルはありませんから、慣れたプレイヤーなら格好でおおよそのレベルや職業を見抜いてきそうですよ」


 使用される素材には適正レベル帯とでもいうべきものが存在するため、武器や防具を見れば装備者のレベルの見当が大まかにだけれども予想できるのだそうだ。

 そして特に鎧や服などには職業ごとのセオリーがあるので、ある程度の経験者であれば服装や格好から職業をこれまた予想できてしまうという訳だ。


「言われてよくよく考えてみれば、非戦闘系のプレイヤーはかなり不利なイベントってことになりそうね。これは後から批判が噴出しちゃうかもしれないわよ」

「技能熟練度を『じゃんけん勝負』のベースに持ってきたのは良い考えだっただけに、このミスは惜しいですね。『OAW』側や低レベル帯のプレイヤーに配慮し過ぎたのかもしれません」


 あらら、リルキュアさんとミザリーさんは完全に粗として認定してしまったようだ。でも、戦闘込みのイベントだということは事前に分かっていたことなのだから、多少戦闘系の職業が有利なのは仕方がない気もするのだけれど。

 それに何より全く何一つとして対策の手がない、という訳じゃないんだよね。


「うーん……。確かに不利ではありますけど、どうしようもないってほどではないと思いますよ」

「えっ!?」


 ボクの言葉にひたすら驚いているメンバー一同。知らずに行動してしまうとあっという間に壊滅ということになりかねないから、いの一番に指摘したんだけど、少々効果があり過ぎたのかもしれない。


「何とかできるのか?」

「絶対とは言い切れませんけどね。落ち着いて考えれば皆さんもいくつか思い付くはずですよ」


 そう前置きしてから浮かんできた対処方法について説明していく。

 鍵となるのは勝利条件である『より多くのマス目を自陣とすること』だ。


 ぶっちゃけてしまうと、プレイヤー同士で戦ったところで何一つとして得られるものはないのだ。

 まあ、戦闘不能に追い込まれたプレイヤーは初期マスに逆戻りとなる上、しばらく行動できなくなるというペナルティが課せられるようなので、敵対チームの行動を制限することには繋がるようだけど。


「ただ、勝利そのものには全く貢献はしていないんですよ。例えば、AとBという二つのチームがプレイヤー同士で戦闘をやり合っている間に、他のCやDチームがどんどんと自陣となるマスを増やしていったとすると、結局勝利するのは後者の内のどちらかということになりますよね」


 説明にコクコクと頷くチームの皆。


「なので対策その一は、ひたすら他のチームのプレイヤーから逃げ回ることになります。そのついでに自陣のマスを増やせればなお良しですね。〈敏捷〉が高い遥翔さんにオススメな方法だと思います」

「ふむふむ。逃げながらスイッチを押したり『じゃんけん勝負』でロボットを倒していくんですね。それなら自分でも活躍できそうです」


 上手く引き付けることができれば敵対チームを撹乱(かくらん)させることもできるかもしれない。

 ただ、『じゃんけん勝負』は勝ってもしばらくの間はそのマスからは移動できない仕様となっているそうなので注意が必要かも。

 練習用フィールドで確認しておかなくちゃいけない最重要項目となりそうだ。


「私も〈敏捷〉は高い方だけど、ゲーム内であまり走り回ったりはしていないから逃げ続けるのは厳しいかもしれないわ」


 リルキュアさんの場合、ゲーム内ではピグミーなのでリアルとは著しく体格が異なる。そのため違和感なく体を動かすためにはそれなりの訓練が必要となってしまうのだ。

 似たような事はセリアンスロープのキャラクターでも発生しており、ケモミミや尻尾を自在に動かせるようになるまで、早い人でも数日の練習が必要になるらしい。


「パッと見幼女を追いかけ回すっていう絵面的には事案そのものだから観客を味方につけることはできそうですけど、対戦相手が考慮してくれるかというと疑問ですよね」


 それで諦めてくれるのであれば、元よりリルキュアさんをターゲットにはしていないだろうからね……。

 それはさておき、もちろんそうした逃げ回ることができない場合のことも想定しておりますとも。


「そんな時は対策その二の出番です。長時間逃げられないならすぐに逃げ込める先を作っておけばいいんですよ」


 ロボットの配置されたマスを自陣に変えて、そこを拠点にするという方法だ。倒したロボットとは共闘関係となるため、リルキュアさんに通常戦闘を挑めば必然的にロボットも相手取らなくてはいけなくなる。

 仮にロボットとの戦闘を嫌がって『じゃんけん勝負』を選択したとしても、リルキュアさんの方がレベルが高く、しかも高い技能熟練度のために有利に進めることができるという寸法なのだ。


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