181 仲間たち
それでは、チームメンバーの紹介!
まずはパワーファイター風のおじさんこと<ヘビーウォリアー>のマサカリさん。ドワーフらしい筋骨隆々な体格で、浅黒い肌に短く刈り上げた黒髪という外見だ。立派なおひげも健在ですよ。
ただ、身長は高めに設定してあるのか、ヒューマンだと言われても気が付かないくらいだ。実際ボクたちもヒューマンだとばかり思っていたもの。
そして『笑顔』側のプレイヤーでレベルは何と驚きの五十五!
これはあちらでもトップクラスのレベルであり、職業もファイター系統の二次上位職なのだとか。
武器は名前の通りと言うかなんというか、巨大な両手持ちの戦闘用斧。リアルだと実用性に難がありそうなロマン武器だった。
重量系の武器のために当たれば強いけれど小回りが利かないというのはゲームでも同じらしい。後、金属製の頑丈な鎧を着こんでいるため走る速度が遅いのだとか。
良くも悪くも見た目の通りのようです。
次に糸目お兄さんこと遥翔さん。彼もまた『笑顔』プレイヤーだ。
ちなみに、名前の漢字についてはスルーして欲しいとのこと。どうやらちょっとしたお茶目で付けたはいいものの、キラキラっぽいということで結構からかわれた経験があるみたい。当時のことを思い出してしまったのか、自己紹介の途中からどんよりしてました。
が、撃たれ弱いのは精神面だけではなく何と身体の方もだった。
遺跡やダンジョンの探索に必須の職業とも言われている<シーカー>である彼は、その能力を十全に活かせるように〈敏捷〉と〈知性〉ばかり成長させていたのだ。
動きは素早いけれど攻撃力皆無で紙装甲。マサカリさんと足して二で割ったらちょうど良くなるのでは、というのはボクたち残るチームメンバー全員が考えたことだった。
それでもレベルは四十三でマサカリさんに次ぐ高レベルだというのだから世の中分からないもので。
外見的には細身の体に濃い茶色の髪と、糸目なのを除けばどこにでもいそうなお兄さんという感じ。これは<シーフ>系統の職業に進めるか迷った名残だという。
余談だけど、<シーカー>や<シーフ>は特定の技能を習得すればどの基本職業からでもクラスチェンジすることができる変わり種の職業系統だったりします。
ただ、能力値や技能ボーナスとの兼ね合いから<ファイター>もしくは<シューター>からなるというのが一般的なようだ。
さてさて横道に深く入り込まない内に話を元に戻しまして。
男性陣最後はボクと同じくらいの外見年齢である男の子、ヤマト君だ。金髪をゲームや漫画でしかお目に掛かれないようなツンツンと尖らせた髪型にしていて、これまた創作物でしかお目に掛かれないほどの美形のお顔と、完璧に狙った外見をしております。
そしてこれまでの言動から気付いた人も多いだろうけれど、彼も『笑顔』プレイヤーだ。
とは言ってもマサカリさんや遥翔さんとは違ってしばらく前に始めたばかりのまだまだ初心者組で、後もう少しでようやく一次上位職にクラスチェンジできそうなのだとか。
現在はレベル十九の<ファイター>で、スタンダードに片手剣と盾に動きやすさ重視の鎧という装備らしい。
成長に関しても物理攻撃寄りのオールマイティーなキャラにしたいということで全ての能力値を満遍なく上げているそうだ。
攻撃系の魔法だけでなく〔回復魔法〕まで使えるあたり、目指しているのは古き良き時代の勇者、主人公タイプとみて間違いないだろう。
どちらかと言えば近年のMMORPGでは尖った能力値で一芸に秀でたタイプのキャラクターの方が活躍することが多い。そういう面からするとヤマト君はこれから先も苦労するかもしれないが、本人もそのことは理解しているようなので他人がどうこう言うべきことではないと思う。
ゲームなのだから楽しんだ者勝ちなのだ。
それでは待望の女性陣の紹介へと移るとしましょうか。
一人目はリルキュアさん。女の子向けのアニメを彷彿とさせるような可愛らしい名前だけど騙されちゃいけません。
なにせ彼女がVRゲームを始めた理由というのが、「家に居ながらにして世界中のお酒を飲むことができるから」なのだ。
今ではその野望は潰えるどころか逆に拡大してしまっていて、「リアルにはないお酒も飲む」ことになっているそうだ。
そんな彼女の職業は<アルケミスト>。戦闘能力こそほとんどないけれど、レベルは三十八とうちのチームでは三番目に高く、毎日のように繰り返されている怪しい酒造りによって〔錬金〕の技能を習得したほどの猛者だったりするのだ。
ここで少し<アルケミスト>と〔錬金〕について解説をば。
〔錬金〕は他の技能のようにゲーム内での訓練や勉強、もしくはオーブの使用でも習得することができない特殊な技能だ。
習得方法はただ一つ、生産系の技能をマスターして上位技能を覚える時に派生先として出現することがあるだけ。
しかもただの上位職ではなく、派生先として別の名前の技能が現れ、それをマスターすることでようやく出現する場合もあるという何とも難易度の高いものなのだ。
一応、生産技能を使用する際にMPを使用することで出現率が上がるらしい、という検証結果が出ているけれど、『笑顔』の方でも確定には至っていないそうだ。
そんな風に難易度が高いためか、どんなレベルであっても〔錬金〕を習得した時点で<アルケミスト>になることができるのだそうだ。
職業に関しては現在まで<クリエイター>系統の人しか〔錬金〕技能を派生することができていないので、制限があるのではないかと言われているけれど……。ぶっちゃけ検証不足の感は否めなかったり。
そんな訳で、まだまだ謎の多い職業なのでした。
ところでリルキュアさんの外見だけど……、ピグミー種ということで色々と問題がありそうな絵面となっております。
しかも童顔で前髪ぱっつんのおかっぱ頭に極めつけの幼児体形。ある意味こちらは名前の通りと言えないでもないけれど、ヤマト君とは別方向に狙い過ぎだよね……。
ボクを除いたチーム最後の一人はエルフ――ただし褐色肌のダークエルフ仕様だ――のミザリーさん。なんと同郷の『OAW』プレイヤーだった。
古式ゆかしいエルフを体現したようなスレンダーな体形で、アッシュブロンドの髪は腰まで届く長さだ。豊かな髪からぴょこんと飛び出した笹の葉型のお耳がぷりてぃーだね。
そして何より動きやすいようにとローブに入れてあるスリットから時折覗く生足がせくしーです。
そんな彼女だけどレベル二十五で<マジシャン>の一次上位職である<ウィザード>へとクラスチェンジ済み。なのにゲームを開始したのはボクとほとんど変わらない頃だったとか。
つまりボクたちのチームは高レベルの熟練者から低レベルの初心者まで幅広い人材が集まってしまったようだ。