178 再会
訂正!
準々決勝に残っているチームの数を勘違いしておりました。ごめんなさい!
誤 32チーム ⇒ 正 64チーム となります。
決勝戦が4チーム、準決勝が16チームなので、準々決勝に進んでいるのは64チームになるはず……。
最近、自分の算数能力に不安を感じてしまってます……。
大まかなルール説明が終わったけれど、アウラロウラさんたちの話は続いていた。
「最後に背景設定についてだが、簡単に言うと銀河のある宙域を支配している国が圧制を繰り返しており、民衆が助けを求めてきた、という。まあ、ありがちな展開だな」
「それを言ったら担当者が泣きますよ。毎日遅くまで居残って特別映像まで作っていたんですから」
「いいんだよ、本人たちは趣味丸出しで喜々としてやっていたんだから。それよりも俺は行政から残業を繰り返させるブラック企業認定されないか気が気じゃなかったぜ……」
いきなり話が重たくなったんですけど!?
プレイヤー全員ドン引き状態ですよ。というか、生々し過ぎて本当に起こりそうだから勘弁して下さい。
そして件の特別映像ですが……。うん。余計な先入観なしで見ればとても楽しめたと思える出来栄えだったんじゃないかな。
「おーし、この後の予定を発表するぞー!」
運営氏の話をまとめると、本日の午前中はチーム分けと作戦を練る時間に当てることになるようだ。五掛ける五マスの練習用フィールドが用意されているので、有効に活用して欲しいとのことだった。
ただしこちらへの挑戦は二回までで、さらに成績に応じて景品も用意されているということなので、ある意味前哨戦という扱いと言えそうだ。
そしてお昼休憩の後、いよいよ本番の開始となる。
四チームごとの変則的なトーナメント方式で進めていき、準々決勝戦となるベスト六十四チームが決まったところで明日へ持ち越しとなる予定だ。
それでも参加する総数が多いので、かなりの過密スケジュールと言える。もしもリアルでやろうとするならば、複数の会場を抑えた上で、一週間以上の期間が必要となるのではないだろうか。
肉体的な疲労を気にする必要がなく、会場の移動を一瞬で行えるVRゲームならではの強硬日程だね。
「本戦の準々決勝以降並びに表彰式などは明日の昼から行いますので、参加する側に回れるように頑張ってください」
アウラロウラさんの激励にプレイヤーたちのやる気がみなぎっていく。どうせ挑戦するなら上位を目指したいものだものね。
しかし、のんびりとスケジュールについて聞いていられたのはここまでだった。
「それと明日の午前中だが、『笑顔』選抜プレイヤー対『OAW』プレイヤーによる超大人数でのエキシビジョンバトルを予定している。メンバーを同数にするために『笑顔』のプレイヤーは抽選となってしまうが、どうか了承してもらいたい」
「壇上にいる『コアラちゃん』と『テイマーちゃん』にはそれぞれのチームのリーダーを務めてもらうことになります」
「なんですと!?」
「聞いてないわよ!?」
さらりと告げられた衝撃の事実にボクと『コアラちゃん』の驚きの声が重なる。
が、非難じみた目で睨まれても担当の二人はどこ吹く風という様子……、あ、運営氏の方はわずかながらに居心地が悪そうにしているから、多少の罪悪感は持っているみたいだ。
一方のアウラロウラさんはAIということもあって、完全に感情が隠れてしまっていた。ぬぬう……。普段はあんなに感情豊かで人間臭いというのに。
後から聞いた話によると、本選で協力することによってお互いのゲームとプレイヤーを認めさせると同時に、エキシビジョンバトルで目に見えて分かる形での対立させることで、鬱憤晴らしやガス抜きをさせる狙いがあったらしい。
事実ステージの下では一部プレイヤーたちがすっかり殺る気になってしまい、バチバチと火花散るにらみ合いが始まってしまっていた。
何にしてもいきなりリーダー役を押し付けられたボクたちからすれば、いい迷惑でしかなかった訳だけれど。
「それでは少し早いですが、お互いの健闘を祈って、二人には握手をしてもらいましょう」
今から異論を唱えても聞き入れてはもらえそうにもない。
ボクたちは半ばあきらめ気味にその言葉に従ってお互いの距離を詰めていった。
いくら目深にかぶっていたとはいえ、さすがに至近距離ともなるとその顔が見えてくるものだ。
コアラ耳付きのフードの下にある彼女の顔を見た瞬間、ボクは頭が真っ白になってその場に立ち尽くしてしまった。
「ぼ、ボクがいる……?」
「ど、どうして私と同じ顔なの……?」
しかし、それは『コアラちゃん』も同じだったのか、目をまん丸くして呆然としてしまっていたのだった。きっとボクもまた彼女と同じ表情になっていたに違いない。
なぜなら、『コアラちゃん』の顔はリュカリュカとそっくり、まさに瓜二つだったのだから!
突如間近な距離で見つめ合い立ち止まることになってしまったことで、何が起きたのかと会場内がざわつき始める。
尋常ではないボクたちの様子に異常事態だと察知したのか、残る壇上の二人が慌てて駆け寄ってくる。
「リュカリュカさん、どうかしましたか?」
「ユーカリちゃん、何があった?」
それぞれ相手へと呼びかけたのだろうけれど、ほんの数歩の距離ではお互いに丸聞こえとなってしまった。
そしてそれは、それぞれのキャラクターの名に隠された二つの名前の存在を気付かせることになるのだった。
「……ゆうか、り?」
「……りか、ゆか?」
いやあ、人間の目って思っていた以上に大きく見開けるものなんだね。既にこれ以上はないというくらいだった彼女の目が、さらにまん丸になってしまったのだ。
もちろん、それは鏡写し状態のボクにも言えることだったのだろうと思う。
ふらふらとまるで夢遊病か何かのようにおぼつかない足取りで最後の数歩を詰めたボクたちは、お互いの顔へと手を伸ばして、頭を覆っていたフードをずり下げた。
「ええええええええええええっ!?!?!?」
白日――いや、厳密にはお日様じゃないけどさ――の元に晒されたボクたち二人の顔に、会場中から一斉に驚愕の叫び声が轟いてくる。
AIであるアウラロウラさんですら盛大に顔をしかめてしまうほどの騒がしさだ。
運営氏に至ってはボクたちのことも含めて衝撃で完全停止してしまっていた。いや、もしかすると一時的にログアウトして、運営のデータベースなどを利用して色々なことを調べているのかもしれない。
何にしてもリアルでなくて良かった。イベント用に建てられた特別な会場でなければ、きっと周辺から騒音の苦情が何軒も寄せられてしまっただろうから。
そんな音の暴風が吹き荒れる中で、ボクたち二人はお互いの頬へと手を添えて、額が触れるほどの近さでささやき合っていた。
「り、ちゃん……なの?」
「本当に、ゆう、ちゃん……?」
同時にコクリと頷く。
こうしてボクと従姉妹の里っちゃんは、まさかの場所で予想外の再会をすることになったのだった。
『コアラちゃん』の話を出した時に、中の人が誰なのか見当がついていた読者の方はいるでしょう。
が、さすがにユーカリというキャラクターネームまでは予想していなかったのではないか、と思っています。
主人公のリュカリュカと同じく、優華と里香の二人と『コアラちゃん』を結びつける良い名前だと気に入っていたりするのですが、読者の皆様から見てどうでしょうか?
色々感想等もお待ちしておりますです。