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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第一章 『OAW』へようこそ
17/933

17 ブラックドラゴンをやり込めよう

「偉大なドラゴンなんだから、勝負の内容や条件なんかもこちらに合わせてくれるよね?」

「良かろう」


 はい、言質貰いました。

 そして勝ちも貰いましたー。


 ブラックドラゴン、チョロ過ぎ。

 ほら、こちらの勘の鋭い人たちは、彼が詰んでしまっていることに気が付いたのか「うわぁ……」という感じの何とも言えない顔をしている。


 そんな人たちに向けて、内緒にしてねという意味合いを込めて、唇に人差し指を一本当てて「しー」と言っておく。

 大丈夫だとは思うけど、念には念を入れておくべきだ。すると皆、明後日の方を向いたり視線を足元へ落としたりしていたので、こちらの要望は理解してくれていたと思う。


「それで、どんな勝負をするのだ?まあ、何をやったところで我が勝つのは分かり切っているがな」


 道化も度が過ぎると面白くないどころか、可哀想になってきてしまうんだなあ……。


「そうだね……。それじゃあ、これからボクが出す問題に答えられるかどうかにしようか。間違えた時や答えられない時はボクの勝ち(・・・・・)ということで。後、負けた方は勝った方の言うことを一つきくこと」


 さも今考え付いたかのような言い方をしたけど、全部先に考えてました。


「パーティーや打ち上げとかの余興に使えるネタは、あらかじめ考えておくと便利よ」


 とは、我が麗しの従姉妹、里っちゃんのありがたいお言葉です。

 でも、余興用だから簡単かというとそうじゃない。こういうものは基本的に当たっても外れても場を盛り上げられるように、ひねくれていているからだ。


 ついでに言うと、先ほどの条件が通れば負けることが絶対になくなる。

 ボクの狙いを理解した何人かが危うく吹き出しそうになっていたから、念押しをしておいて正解だったね。

 で、チョロいやつ代表クロオオトカゲさんはというと……、


「ふん!そんなこと造作もないことだ」


 これまた読み通り乗ってきてくれたのでした。


「では、さっそく問題!……の前に、ブラックドラゴンさんはお金のことをどれくらい知っているの?」

「金、人間種を中心に物の交換の際に使われるあれのことか。単位はデナー。一デナー鉄貨、十デナー銅貨、百デナー銀貨、千デナー大銀貨、一万デナー金貨があるな」


 おおう!意外なことにちゃんと知っていた。てっきり「矮小な人間の行いなど知ったことか!」とか言ってくるかと思っていたのだ。

 補足しておくと、金貨の上位にはさらに百万大金貨というのもあるのだけど、そちらは基本的に国単位での交渉事などでしか使用されていないらしい。


 ちなみにリアルのお金と比較すると、一デナー当たり十円くらいだそうだ。

 クンビーラのみでしかも一カ月という期限付きではあったけど、一時滞在証という仮の身分証明が五千円で手に入るというのは、ゲームならではの破格だと思う。


 後は物価だけど、生活必需品は安く抑えられている反面、嗜好品の類はお高くなっているそうですわよ、奥様。

 あらまあ、大変。ワタクシとしては武器や防具、それにアイテム類のお値段が気にかかりますわ。

 ……などと思わず脳内で寸劇をしてしまうほどの価格差があるとのこと。なので、冒険で使用する品物に関しては他のプレイヤーと交流できる専用の街に行けるようになれば、そこで購入するのが定番ということになっているそうだ。


 閑話休題。

 ともかく、そこまで詳しく知っているのなら、お金が出てくる問題もアリだね。


「了解。それじゃあ、問題を出すよ。『お小遣いを百デナー貰ったジョニー君は、一個十デナーのリンゴを二つと、三個で十三デナーの飴を買おうとしています。おつりはいくらでしょうか?』質問があれば受け付けるけど?」

「……ふん。金についての質問をしてきたから、どんな小細工をするかと思えばこの程度だったとはな!」

「御託はいいから、早く答えて。それとも何か質問があるの?」

「ふん!愚かな盗人に尋ねなければいけないことなど何もない!答えは、六十七デナーだ!」


 自信満々に答えたドラゴンに対してボクは、


「ぶっぶー!はーずれー!!」


 イラッ☆とする口調でそう言ってやった。


「うわ!?可愛いのに何だか腹が立つな!?」

「横で聞いているだけでムカついてくるとか、どんだけだよ……」


 騎士さんや衛兵さんたちにも好評?なようで。


「な!?どういうことだ!百デナーからリンゴ二個と飴の金額である三十三デナーを引けば、残るは六十七デナーではないか!」


 まあ、小学校一年生の算数の問題ならそうなるかもね。


「正解は銅貨四枚(四十デナー)で支払って、鉄貨七枚(七デナー)のお釣りをもらう、だよ。いくら孫大好きなお爺ちゃんでも、三歳のジョニー君に百デナー銀貨を渡すようなことはしないよ」

「なんだそれは!ただの屁理屈ではないか!」

「ふぅ……。あのねえ、ボクは問題を出した時に「質問があれば受け付ける」とちゃんと言ったはずだよ。それを無視しておいて、後から文句を言うなんて。まったく……これだから愚かなドラゴンは」

「ぐぬぬぬぬ……!!」


 まあ、質問されたところで正解になんてさせない(・・・・)んだけどね。二個のリンゴの内の一個が虫食いだったので一個しか買えなかったとか、飴を二個にしてもらう代わりに一個当たりを十デナーにまけてもらったとか、まだ買おうとしている段階なのでお金を支払っていない等々、どうとでも言えてしまうのだ。


「ボクの勝ち、だね」

「ぬぬぬぬぬうううう……!!なんと卑怯な盗人だ!!」


 ふふん!今さら何を言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえませーん。


「おいおい、ドラゴン相手に交渉を持ちかけただけでなく、手玉に取ってしまったぞ……」

「いや、交渉のように見せかけていただけで、あの時点で彼女は絶対に勝てるように先手を打っていた」

「そして、勝負の内容を提案した時にそれを確実なものとした。気付いていなかった者もいるようだが、お嬢さんはあの時、自分の勝利条件しか口にしていないぞ」

「な、なんだと!?」


 騎士さんたちによる種明かしに、ブラックドラゴンは目を見開いて驚いていた。

 後、騎士さんや衛兵さんたちの半分くらいも同じように驚いていたのは、問題なんじゃないだろうか。口八丁で誤魔化したり丸め込んだりしようとする悪いやつだっているだろうに。


「相手を見下して確認を怠ったあの時点であなたの負けは決まっていたという訳。どんなに強大な力を持っていても、どんなに膨大な知識を蓄えていても、適切に使いこなすことができなければ、無知で無力なことと変わりはないんだよ」


 まあ、全部里っちゃんの受け売りだけどね。


次回投稿は明日の朝6:00の予定です。

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