153 特色ある依頼
えー、どうやら昨日の時点でPVは30万人を超えていたもようです。
ところが、ブックマークの方は減少して、500人を割り込んでしまっていました!
うーん、まさかこんなオチがあるとは(苦笑)。
まあ、それはともかくとして、今日の更新分も楽しんでもらえれば幸いです。
コロンブスの卵的なボクの素晴らしい発想の転換に、おじいちゃんたちは呆気にとられた顔をしていた。
それはつまり、荷台に乗ったボクのことを見ているということで……。えーと、いくら平坦で一本道の街道を進んでいるとはいっても、いい加減前を見ていないと危ないよ?
「やれやれ。才能を開花させる、とはの……。これが若さというやつか」
「いや、あれはリュカリュカだからだろう。若いってだけであんな発想ができるものかよ」
なんだか微妙に失礼なことを言われているような気がするんですが?
まあ、二人の間に変なわだかまりが残ることがなくて良かったと思うべきかな。高等級冒険者同士の諍いなんて、他所からすれば格好の攻撃材料になってしまうもの。
大元である『冒険者協会』自体は独立した組織だけれど、各町や村に置かれた協会の支部はそれぞれ所属する国や都市の影響を受けてしまうものなのだ。
同じ釜の飯を食うわけではないけれど、同じ場所で暮らして、時には同じ脅威に立ち向かうことになるのだから、そうなるのも当然と言えば当然だろう。
そのためか同じ冒険者協会と言っても国を跨いだ支部同士となると良くてライバル関係、悪いと敵対者同士という間柄になってしまうこともあるのだとか。
いかにしてそれぞれの国や都市の介入を防ぐかが『冒険者協会』の今後の課題ということになりそうだ。ただし「ある程度の協力関係を保持しながら」という前提条件をクリアしないといけないので、各支部長やお偉いさんたちは相当難しい舵取りを迫られることになるだろうね。
その点クンビーラのデュランさんは飄々としながらも、公主一族を始めとした権力側とは適切な距離感を保っていくことだろう。あの人の場合、愚痴や泣き言ですら情報を仕入れるための餌として使用していそうなところがあるし……。底知れないとは、ああいう人のことを指すのだろうね。
まあ、そういう部分もあって、「攻撃のネタにされないように注意が必要だ」というこの話題の冒頭へと話が繋がってくる訳です。
「ゾイさん、東の町にも冒険者協会の支部か何かはあるんですか?」
「支部じゃなくて出張所があるぞい」
「歩きでもクンビーラから一日の距離でしかないからな。町の規模からしてもあることの方が珍しい部類だぜ」
それでも出張所が存在しているのは、国境がほど近いためなのだそうだ。
「国境周辺の巡回を常時依頼として張り出しているんだよ。本来であれば騎士や衛兵の仕事になるんだろうが、国境近くを騎士や兵士がうろついているだけで邪推する輩もいるからな。下手に刺激をしたり、余計な口実を与えたりしないためにも冒険者を雇って代わりを務めさせているという訳だ。この手の依頼は国境や領境が近い街なら割とよくある類のものだから、覚えておくと便利かもしれないぞ」
常時依頼な上、その内容も境のある側を監視しながら巡回するだけなので、冒険者の中では比較的割の良い仕事として認知されているそうだ。
ただし、『火卿エリア』のようにお互いが喧嘩腰で睨み合っているような場所だと突発的に衝突が起きる可能性が高い、といった事前情報を仕入れておかないと危ない面もあるのだとか。
「もしかして、おじいちゃんもそういう危険な目に合った経験あり?」
「……ああ。新しい町に移動してきたばかりだったんだが、宿代や諸々にするつもりの素材が予想以上に安く買い叩かれたことがあってな。当面の宿代のために仕方なしに受けたんだが、表面上はともかく水面下では境を越えてお互いの領地を荒らし回っていやがった」
うっわ!とてもじゃないけど冗談事ではすまないレベルだよ、それ。
「その上で自領の軍が相手側のふりをして略奪行為を行うなんてことも横行していてな。実際その時の巡回では五回襲われたんだが、そのうち二回はこちらの兵士たちが扮したものだった」
結局その連中こそが付近を荒らし回っていたそれぞれの主力だったらしく、一旦は平穏になったのだけど、その地域は今でも変わらずに仲が悪いままであるらしい。
「お、思った以上に危険な内容でビックリだよ……」
しかもことごとく返り討ちにしたとかで二度ビックリです。
「リュカリュカ、今の話はディランデュランの逸話としては軽いものだぞい」
「そうなの!?」
ゾイさんの言葉におじいちゃんの方へと向き直ると、特に気にした様子もなく「まあ、そうだな」なんて言っておりますよ。
「気になるなら冒険者協会に置いてある『記録の魔道具』で調べてみるといいぞい」
人伝の方は面白おかしく脚色してあることが多い、というかまず間違いなく誇張されているので、話しのネタを集めるのならばともかく情報や資料とするならばお金を払ってでも『記録の魔道具』を利用した方が良いそうだ。
「戦いの部分に関してはリザードモールの時と同じだから、参考にはできないと思っておいた方が良いぞい」
一事が万事あの状態なのだとしたら、参考にはできないだろうねえ……。
一方で、目指すべき理想の一つとするには具合が良いかもしれない。まず差し当たっての目標としては〔槍技〕技能の熟練度を上げて【ペネトレイト】の闘技を習得することになりそうだ。
「うーむむむ……。でも、それだけでいいのかなあ?」
「どうした、リュカリュカ?」
「ちょっと、このままでいいのかと不安になりまして」
もしかすると二度とこうした機会はないかもしれないと思い、ボクは〔槍技〕技能の熟練度がなかなか上昇しないことや、もしかすると武器技能全般にそれが当てはまるかもしれないことを正直に話していった。
「という訳で、根本的な戦い方自体を構築し直すべきなのかな?と思っている次第でして……」
「確かにリュカリュカは魔法の方が得意なようには見えるぞい」
「そこは俺も同意だな。だが、魔法のみを強化していく方面へ転向することには安易に賛成できない」
「それはどうして?」
「一つは職業の問題だぞい。<テイマー>は<マジシャン>に比べるとどうしても魔法の扱いでは一歩劣ることになるんだぞい」
魔法系技能の熟練度一つを見ても、上昇の速度が明らかに異なってくるのだという。
「それに今のパーティー構成からすると、リュカリュカの後衛寄りの中衛という立ち位置は噛み合っていると思えるぞい」
「そうだな。そしてその場所に求められるのは一点に特化した能力ではなく、様々な状況に対応できる力だ。武器も魔法も使えるリュカリュカには相応しいだろう」