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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十二章 ここからはボクたちのターン
136/933

136 リアルでの情報収集

 うおっと!騎士団に捕まえられているおじさんのことより、闘技場関係者が『竜の卵』イベントにどうかかわっていたのかを調べないと!

 脱線する思考をレールの上へと引き戻し、調査を続けていく。

 その結果、ボクがエッ君と遭遇した時と似通った状況になりそうなイベントをいくつか発見することができた。


「この『逃げられた魔物退治』とか『密猟者を捕まえろ!』なんかが怪しそう。でも予想通りだとすると、こっちの『ペット大暴走』とか『悪意の落とし物』という線もありそう」


 どれも共通点として、本来は起こらないようになっているはずの街中で魔物との戦闘が発生するという点が挙げられる。


 順番に軽くその内容を説明していくと、捕まえてきたはいいけれど街に戻ってきたことで油断して逃げられてしまった魔物を倒すというもの。

 様々な理由で捕えたり倒したりするのを禁止している魔物を捕まえては売り払うという悪徳密漁組織を叩くというもの。

 そうした禁止されている魔物を密かに購入または飼育していたのだが、何らかの理由で暴れ出して手が付けられなくなって討伐依頼が発生したもの。


 最後のものは少し毛色が違っていて、子どもやメスの魔物を置き去りにすることで意図的に魔物の襲撃が発生するように仕向けられているのを、何とかして防ぐという内容だ。

 攻略法にはいくつかパターンがあって、街中に放置された魔物を倒してしまうと外で暴れている魔物たちの動きが止まらなくなるという、悪辣な展開の場合もあるのだとか。この辺りは卵を無事に帰さないと大暴れするブラックドラゴンに通じるものがあると言えなくもないのかもしれない。


「明らかに最後のやつが大当たりな気がしてきたよ……」


 ただ、これは闘技場関連のイベントというよりは都市国家間や領地間の抗争に近いイベントだ。

 実際にこのイベントに遭遇したプレイヤーの大半が、各地の貴族が覇権をめぐって争い合っているという設定の『火卿エリア』でゲームスタートした人たちだった。


「クンビーラとヴァジュラってボクが思っているよりも仲が悪いのかな?」


 どこのサイトにもそんな記述もなければ、ゲーム内でそれらしき話も聞いたことがなかったのだけど。裏設定?

 そういえば黒幕のことをエルフちゃんが「『武闘都市ヴァジュラ』の支配者の片割れ」とか言っていたような。公主様たちも納得していたところから、もしかすると個人的に目の敵にしていて、そうした事情は一般には流出しないように極秘扱いされているのかもしれない。


 この『闘技場主』バドリクについても調べておくべきか、悩みどころだ。

 あんまり詳しく調べ過ぎてネタバレになっちゃうのも嫌なんだよね。かといって、ゲーム内だとクンビーラ側の意見しか聞けない状況だから悪評しか出てこない気もする。

 立場の違いということで割り切ってしまうべきなのかな?


 悩んだ末、大雑把な人物評だけを見てみることにした。

 ……のだけど、


「おんやあ?ヴァジュラの公主の人については書かれているけど、『闘技場主』については一つも記述がない?」


 『武闘都市』として名高いヴァジュラは、『自由交易都市』のクンビーラや『迷宮都市』のシャンディラと並んで『風卿エリア』では有名どころだ。そのため、人物評もかなり細かい所まで網羅されていた。

 でも、道具屋の看板娘さんの推定バストサイズまで記されているのはどうかと思う。


 ……話を戻そう。それにもかかわらず、件の『闘技場主』については一つも書かれていなかったのだ。それ以前に項目すら作られていなかった。


 余談だけど、クンビーラの支配者層については公主様一家だけでなく、従姉妹のミルファに至るまで記入されていた。なぜだか情報提供者の欄に『テイマーちゃん』と書かれていたけど。

 後、名前だけ登場したのか配下の貴族たちも項目だけは作成されていた。


「つまり他のプレイヤーのシナリオでは、名前すら登場していないっていうこと?」


 なんだか途端にきな臭い雰囲気になってきたような。アウラロウラさんからは何も言われていないから、以前のようなストーリー管理システムの独断暴走ではないとは思われる。

 とはいえ、不気味なことに違いはない。別のプレイヤーが突入したことのないシナリオ展開に、足を突っ込んでしまっているのかもしれない。


 これから先、どうなってしまうのかは全く分からないことを覚悟しておくべきだろう。

 慎重な行動が求められることになりそうだ。


「差し当たっては、NPCの人たちの安全の確保が一番重要だよね」


 幸いにしてエルフちゃんというその道の専門家をこちらの陣営へと引き入れることができている。この利点を使わない手はないだろう。

 侵入する側の観点から近衛の人たちや侍従の皆さんに指導してもらえば、いくら『毒蝮』といえども城への潜入はこれまでとは比べ物にならないくらい難しくなると思う。『闘技場主』自身は簡単に身動きが取れる身分じゃないだろうから、情報の流出にさえ気を配っておけば何とかなるのではないだろうか。


「代わりに記念式典の情報についてはジャンジャン流してもらうようにすれば、嫌でもこの時に集中するしかなくはず」


 と考えていたところに、ふと疑問が湧く。


「あれ?無理に向こうから仕掛けてくるのを待つ必要ってないよね」


 そりゃあ、準備万端整えていた相手を正面から打ち破ることができれば、とっても爽快な気分になれると思う。

 でも、ですよ。その分迎え撃つこちらの危険も増すことは間違いない。


 もしもその戦いで衛兵や騎士の誰かが命を落としたりしたら?

 クンビーラの民衆の誰かが巻き添えになってしまったら?


 多分、ボクは耐えきれずにやり直し(リセット)を選択してしまうのではないかと思う。


 被害をできるだけ発生しないように、起きたとしても可能な限り軽傷で押さえられるようにしたい。そのためには相手の裏をかくことが重要となるはずだ。


「ふみゅ。いっそのことこちらから仕掛けてみるとかどうだろうね?」


 これまでの展開からして、今の『毒蝮』は襲う側だと自分を意識しているはずだ。ここを突くことができれば、再び捕えることもそう難しいことではないのではないだろうか。

 ボクの不意打ちを避けることができなかった程度の戦闘能力だ。騎士さんたちに掛かればフルボッコにすることも十分可能な気がする。


 これは公主様たちとの最重要相談案件になりそうですよ!


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