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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十一章 お城での一夜
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124 仲間と一緒に1(雑談回)

 今日も今日とて多くのプレイヤーが集まる『異次元都市メイション』。

 その一角にある酒場『休肝日』に一人のプレイヤーが訪れた。ぐるりと店内を見回した彼は、見知った顔を見つけて慌てたような態度でそのテーブルの空いた席に着いたのだった。


 その様子から何かあると、フローレンス・T・オトロの『情報屋』としての勘が囁いたのだった。



「新情報が出ていたんだが、見たか?」


「なんだ、挨拶もなしにいきなりだな?」


「細けえことはいいんだよ」


「細かくないし!挨拶は大事だって死んだばっちゃんが言ってたし!」


「おい、お前の婆ちゃん、二人とも元気じゃねえか。今日だって田んぼの草抜きしながら駄弁ってたのを見たぞ」


「細けえことはいいんだよ」


「酷いな、お前!?」


「はいはい、話しがおかしな方向に進んでいるわよ。それで新情報って『英傑召喚システム』のことよね?」


「それそれ。あれ、前から開発されているって話の、他プレイヤーを自分のワールドに呼んで攻略の手伝いをしてもらえるってやつだよな?」


「そうだよ。システムの大枠が決まったから正式名称が付いたらしい」


「召喚で分かるように、呼ばれたプレイヤーはサモンモンスターとかと同じような扱いになるみたいだな。具体的に言うと、呼ばれた先のNPCとは会話も出来なければ接触する事もできなくなっているそうだ」


「NPCからだと、召喚されたプレイヤーの細かい動きは見えなくなっているって書かれていたわね」


「ああ。その場で剣を抜いてブンブン振り回していたとしても、ただ突っ立っているようにしか見えないらしい。もちろん非接触だからその攻撃も一切効かないって話だな」


「ええと、プレイヤー側から見ると攻撃が擦り抜けるみたいなんだっけか?……なんだか一昔前のゲームみたいだな」


「まあ、あくまでゲスト、そのワールドのホストプレイヤーのお手伝いってことなんだろう」


「『笑顔』とは違うことを強調したかったのかもしれないな」


「逆にこれでプレイヤー同士の行動に慣れてもらって、『笑顔』の参入者を増やそうって狙いもあるのかもよ」


「あ、それありそう」


「最近は平日のちょっとした時間しか取れない時は『OAW』で、休みでがっつり遊べるときは『笑顔』にログインするって感じになってる」


「俺も俺も。所属していたギルドのメンバーたちも大半がそんな生活だって言ってた」


「エンジョイ勢や規律の緩いギルドのところは『OAW』と二本立てで遊んでる連中が多いって話だ。『笑顔』一本にこだわっているのは攻略組とか、ガチ勢ばっかりだな」


「攻略組なあ……。よく分からん自称攻略組も増えて来たよな」


「こっちに人が流れている今が有名になるチャンスとでも思ってるんだろう。まあ、活気がなくなるよりはマシなんじゃないか。攻略実況という名の爆笑動画も定期的に流してくれているし」


「あれ、本人たちは至ってマジなのよね?」


「おう。真面目も真面目、大真面目にやってるぞ。だから面白いんだよ」


「個人的には『新天地放浪団』の新規エリア紹介動画が好き」


「あの連中、しれっと最新エリアに一番乗りしているよな……」


「『笑顔』のサービス初期から続いている攻略組だからね。名前の通り最新エリアに行くことが目的で、あまりイベントを発生させることはないけど」


「まあ、あそこのやつらは攻略しているつもりがないからな。他所のやつらが攻略組だって言っているだけで、本人たちは異世界のいろんな場所を訪ね歩いているだけって感じだよ」


「そういえば、『新天地放浪団』のギルマスが学生だったっていう話は聞いた?」


「新天地のギルマスというと『コアラちゃん』?」


「なんじゃそりゃ?」


「コアラ耳が付いたフードをいつもかぶっているのよ。だから『コアラちゃん』。今ではプレイヤーネームよりこっちの方が有名よ。それで彼女、リアル受験生だったらしいわ」


「なるほど。それで去年は他のギルドメンバーに比べてコアラちゃんの活躍が少なかったのか」


「ピンポン。当たり。それで『ギルマスカムバック記念探訪動画』っていうのがアップされていたんだけど、すっごい美人になっててビックリしたわ」


「そういえば定期的にキャラクターのリサイズをしているってことでも有名だったな。……ああ、今から思えばリアルの成長に合わせていたのか」


「その体形の方も色々と危険領域に入りかけていたわね。本人によると顔の方は多少いじってはいるそうだけど」


「よし、後で確認しておこう!」


「うむ。トッププレイヤーの動きは参考になるからな!」


「そうだな。これは最重要項目だ!」


「美人の女子を見て目の保養だー!」


「あんたたちね……。自分で振っておいてなんだけど、これだから男ってやつらは……」



 呆れてため息を吐く女性プレイヤーと同じ心境となるフローレンスなのであった。



「あ、いけね。俺まだ何も注文してなかった。……フローラちゃん!『今日のオススメ』とブルーワインちょうだい」


「はーい。ブルーワインと『今日のオススメ』の特選最高級フィレステーキセットですね!」


「え!?ちょっ!マジで!?」


「ふふふ。冗談です。『今日のオススメ』は下町居酒屋風焼鳥セットですよ。あ、でも特選最高級フィレステーキセットがおすすめなのは間違いないですから」


「う……。そ、それはまた今度で……」


「はい。またのご注文お待ちしてますね。それじゃあ、ちょっとお待ちください」


「……び、ビビった」


「フローラちゃんの対応ってどんどんと凄まじくなっているわよね」


「ああ。『異次元都市メイション(ここ)』のNPCの中でもトップクラスだと思うぞ」


「このまま他のNPCの精度も上がっていくといいよな」


「できればワールドの方を先にお願いしたい。NPCたちとパーティーを組んでいても、時々妙に反応が悪くなる時があるから」


「そうか?俺は逆にワールドの方はもう少し手加減して欲しいかな。あんまりリアル過ぎると町の人とかに話しかけるのが辛い……」


「あー……、その辺は最終的にはプレイヤーごとの設定で何段階か変更できるようにするらしい。ただ今は一定水準になるまでAIを成長させているところだから、もう少し先の話になるみたいだけど」


「おうっふ……。コミュ障には試練が続くぜ……」



 そんな会話へ聞くとはなしに耳を傾けながら、技術が進歩することが良いことばかりとは限らないのかもしれない、などと考えるフローレンスだった。


『笑顔』側の話がいくつか出て来たので、あちらの有名プレイヤーについて少し触れてみました。

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[一言] 去年受験生で今年復活...もしかして...
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