相談
高校生活にも慣れ、はや二年。
高校二年生というやつだ。
授業もテストも、友達関係も家族関係も、
何もかもとは言わないけれど、
そこそこ普通に上手くいっている。
あ、いや、本当に何もかもとは言わないか。
二年生になっても、そんな奴は山ほどいる。
もっと言えば全校生徒のうちのほとんどの生徒がそうだ。
僕もその大部分のうちのほんの一部分。
――部活動をしていないのだ。
この言い方だと微妙な差異、多少の誤差があるので、一応細かい注釈をしよう。それでいてはっきりとしよう。
――部活に所属していないのだ。
その二つの言葉にそれほど違いがあるとは思えない、そんな一行空けて言うほどのことかと、誹謗中傷を言われそうだが、まあ言うほどのことでもないかな。
生徒の中には部活に所属していても、部活動に参加していないという人もいる。その点、僕は所属すらしていない。
特に何か面白そうな部活というのがなかったような
気がするし、
ただ単に部活動案内を見てないだけか。
「だったら、心霊研究部なんてどう?」
「心霊研究部?」
何か面白そうな部活はないのかと、小学校からの友人である佐百合に、僕は相談を持ちかけた。
その結果、佐百合自身も入部しているといわれる
心霊研究部を紹介されたのだった。
「幽霊とか亡霊とか、お化けに妖怪、UMAに至るまで日夜研究しているんだってさ」
「へぇ、そりゃあ凄いな…ってUMAも含めたらオカルト研究部になっちまうだろ!」
幽霊とUMAの違いや線引きについて問われたとしても、僕にはそれを正確に答えられる気がしない。
だが、幽霊とUMAは心霊というジャンルに一緒くたにはされまい。
「え?んー…あははっ、確かに言われてみればそうかもしれないわね。そんでね、今月の部活のテーマは学校の七不思議」
「今月って、毎月変わったりするのか」
「そうだよ。月末には新聞部との協力でテーマの結果発表をしたりするのよ」
「ふうん、で、今月は学校の七不思議と」
「そう七不思議。階段の段数が一段増えるとか、
美術室の絵とか石像が夜中に動き出すとかのあれよ」
「なんとベタなものばかり」
「まぁまぁ、そういうのを学校の七不思議って言うんだから。…あ、そういえば最近面白そうな七不思議が追加されたのよ」
「追加!?」
学校の七不思議って追加されるのかよ!
七越えるやん。
「誘拐する幽霊とか、独り言をする生徒とか」
「え?後者はただの根暗な生徒じゃ…」
などと馬鹿げたやり取りをしながら、
僕は佐百合の説明を聴きながら、
たまに聴き流しながら、
僕は放課後すぐに佐百合に案内されて、
心霊研究部の部室に来てしまった。
部室の扉の前で佐百合と二人で立っていた。
すげー緊張する、なんだこれ。
ビビるな僕。恐れるな僕。
あ、誤解されてそうだから最初に言っておく
別に幽霊が怖いわけじゃないんだよ。
ただ、何の理由も無しに部活動を
見学しに来たっていう事実が嫌なんだよなぁ。
なんかこう、『舐めてるのかテメェ』みたいな。
まぁ、佐百合もいる事だしなんとかなるかな。
「じゃあ入ってみよっか?」
「…お、おう」
佐百合に促されながら扉のドアノブを握る。
その時――
「おい!!」
廊下の向こうから大声がした。
ビクッとなった。電気でも走ったかのように。
やめてくれやめてくれ、こっちは絶賛緊張中なんだからさ。大声とか勘弁してくれ。して下さい。
でもこの時の僕は驚くにはまだ早かった。
その大声の主から発せられる次の台詞で、
僕は心の底から勘弁してくれと思うことになった。
「そこで『一人』で何している!?」
お待たせしました。第二話です。