表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

今宵の月の…

(どうしよう?これから…)


会社を首になってから数週間が過ぎた。高橋は、元会社から少し離れた公園のベンチに座っている。右手に豆が少し入った小袋を引っ提げて、左手で、地面に蒔く。この動作をすると何処からか鳩が近寄ってきて、豆を食べ出す。高橋は、この作業を数週間繰り返していたのだ。鳩を見ながら、高橋は考えていた。


会社を首になったことは、家族に言っていない、いや、言えない。軽い気持ちで(会社を首なったわぁ)と言ってしまったら、妻や娘はどんな顔をするだろうか?


こんな自分を置いて、妻は家を出ていってしまうだろうか?


それとも、包丁とかを持ってきて襲いかかるだろうか?



想像する全ての結末に恐怖感を覚えながら、溜め息を吐いた。


(いいよな。お前らは悩みなんてないだろ?)


高橋は餌をつついている鳩に話しかけた。勿論、鳩は返事などをしないで、餌に夢中になっている。毎日与えていた影響だろうか?増えている。高橋は餌をやりつづけた。



夕日が傾いた頃に、高橋はベンチから立ち上がった。それに驚いて、数匹の鳩が飛び立っていった。(あいつらにも帰る場所とかあんのかな?)と思いながら、鳩を見送った。折り畳んでいたスーツの上着を着て、長年使い込んだ鞄を小脇に抱え込んで、足早に家に急いだ。誰も丸一日

公園で鳩に餌やりをしていた暇な男とは思わないだろう。明らかに仕事帰りの男に変身をしていた。


ふと、空を見上げると月が登り始めていた。言葉を失いながら、ぼんやりと見上げた。(めちゃくちゃ綺麗だなぁー今まで気づかなかったわ。)とうっすら思いながら、妻と子供が待つ家にたどり着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ