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寝付けないヒョンはゆっくりと目を開け殺風景な天井をじっと見つめていた。

まだ、日も明けない夜中の3時だ。

「・・・。」

父の病気、母への負担、妹のスギョンの心境、全ての事が頭の中を駆け巡ってずっと寝付けずにいた。

自分ではどうしようもできない歯がゆさに苛立ちを感じながら体をスッと起こす。

そんな、やるせない思いの先は、パン工房へと向かう。

生地をゆっくりとこね始めるが、何度なく手が止まってしまう。

作業を止め、部屋の片隅にある古びた椅子に腰掛けると大きな溜め息をもらす。

最近の身の回りの変化にヒョンは、疲れ果てていた。

(父さん・・・、俺はどうしたらいいんだ?)

そんな、頭を抱え込んだ姿をそっと、覗いたのは母親である。

母親は、そっと近づいてヒョンの肩を抱き寄せながら言った。

「明日、みんなで病院行きましょう。現実から目をそらしてたら、いつまでも前には進めないから・・・。スギョンもわかってくれると思うわ。」

母親は、目に涙を一杯浮かべ、ヒョンに言った。

そんな、母親の顔を見つめながら、ヒョンも溜まっていたものを吐き出すかのように、泣き叫ぶ声はいつしか暗い暗闇から明るい日差しへと導いていた。

朝を迎え、家族が食卓に集まると、母親はスギョンに話始めた。

「スギョン、今日は学校を休むと連絡をしておいたからね。」

「エッ?何で?」

キョトンとした顔で母親を顔を見つめていると、ヒョンは話始めた。

「みんなで、父さんのいる病院に行くんだ。俺も今日は仕事は休むんだ。」

その言葉を聞いたスギョンは、沈んでいた。

「スギョン、そんな顔するな。父さんに会いに行くのに、そんな顔を見せたら、父さんが悲しむぞ。」

今のヒョンが言える精一杯の言葉。

「うん、わかってる。わかってるつもりだけど・・・。」

スギョンはスッと立ち上がり、部屋に戻って行く。

「スギョン、ご飯は?」

そんな母親の言葉はスギョンには届かない。

母親とヒョンには沈黙した時間が、流れていくだけ・・・。

「母さん、やっぱり・・・。」

とヒョンが話を切り出すと、スギョンが部屋から出て来た。

「お兄ちゃん、いつまでご飯食べてるの?早く行かないと、お父さんが待ってるでしょ!」

そんな、スギョンの精一杯の姿に、二人は心から喜びそして泣いていた。

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