手違い→天気予報
目を開くと、視界に入ってきたのは「青色」だった。
それは、空。
時雨は、空中へとログインしてしまった。それも、かなり高度の高い場所に。
完全に、ツバメの手違いである。
「……おい」
「……申し訳ありません……」
落下しながら、時雨はツバメを睨みつける。
しかし、本当に参った。この高さからでは、人間などペシャンコだろう。
ツバメは《日本燕》のメダルがある以上飛べるが、時雨にはまだメダルを渡していないのだ。
慌ててツバメはメダルをスロットにセットし、空に浮く。
『セットオン。ニホンツバメ。コンプリート』
ふわり、と身体が浮き、自由に空を駆ける人間大の日本燕と化す。
だが、凄まじい速度で落下していく時雨にはメダルは届かなさそうだ。
どうしようか。
思考を最大限巡らせ、必死に方法を考えていると、時雨がとんでもない行動を起こした。
腕を振り、ウィンドウを開いたのだ。
ウィンドウは本来、自分のメダルとの相性ーーつまりはシンクロ率やステータス、アイテムの収納や引き出しのためのものだ。だが、ウィンドウは、壊れない。
ウィンドウを開くと、時雨はそのウィンドウを掴み、ぶら下がる。
ツバメは唖然として、その様子を見ていた。
まさか、ウィンドウにこんな使い方があろうとは。
というか、知っていたのだろうか。
「し、時雨さーん、大丈夫ですか!?」
「なんとかな。しかし、お前は後でぶち殺しまくる」
「私の命は一つですからね!?」
「世の中にはゾンビというものもある」
「生き返らせる!? あ、じゃなくて! 時雨さんはウィンドウの仕組みを知っていたのですか?」
しゅんと項垂れ、すぐにバッと顔をあげて時雨に問いかけるツバメ。それに対し、時雨はなんでもないような顔で。
「あん? 知ってるわけないだろ」
即答した。
時雨はそのままなんでもないような顔で、同じ操作を繰り返して着地する。
「……本当にゲームか? 土の感触とかしっかりあるんだが」
「ふふ、ゲームですよ……あなたの身体もゲームの中、ですがね」
くすくすと楽しそうに笑うツバメ。時雨はニヤリと笑い……。
「ああああ!?」
めりめりと音を立て、ツバメの頭を鷲掴みにした。
「ほう、この俺を笑うとはいい度胸だ」
「なんて理不尽!? あいたたた!? ごめ、ごめんなさい!」
「で? 俺の身体ごとってのはどういう意味だ?」
ギリギリと締め付ける力は弱めず、涙目で暴れるツバメに問う。
ツバメは痛みに耐えながら、必死に答えた。
「いたたた! そ、それは時雨さんの身体がいたた、ゲームの中に転送されていたた、今は0と1の記号の塊になってるんですよ痛い痛い痛い!」
説明を受けた時雨はパッ、と手を放す。当然ながら、ツバメは重力に逆らわずに落ちた。
「ひゃぺ!」
「ふん、それよりここはどこだ?」
時雨の周囲には青々と生い茂る樹木、伸び放題の蔦や雑草などのジャングルが広がっていた。
奥地に見えるのは、ボロボロの城跡らしきもの。かなり不気味で、夜中とかは幽霊とか出そうだ。
「あぁ、えっと、その……」
「なんだ、言いたい事があるなら早く言えよ」
あからさまに目を泳がせるツバメ。確実になにか、隠している。無理矢理吐かせても構わないが、それでは面白味にかける。
ちょっと困り、考えていると。
「「きゃあああああああああ!?」」
空から、甲高い女性の声が重なって聞こえた。
時雨は頭の中で、こんな事を考える。
ーー晴れ、時々女性が降るでしょう。
成る程、厄日か。




