《虹色に輝く吸血の羽》
ここは幻想郷と呼ばれる妖怪やら神やらが有象無象している場所である。今宵はどこか不気味な紅の霧が漂う中、一人の少女と引きずられた少年が道中を急いでいた。
俺です。今日も平和に掃除ができるんだと思っていた時期が私には昨日までありました。絶賛ひきづられ中です。
「ほら見えてきたぜ!」
「どーでもいいっす」
なぜこうなっているかというと、文の情報で変な屋敷が現れたらしいので魔理沙は探検をしに行くらしい。
え?俺は彼女が神社に寄った時に霊夢がめんどくさいから行きたくないと言ったので代わりに俺が捕まったわけですよ。
「で?どうやってはいんの?」
「窓から入るぜ!」
「そんなあっさりと.........もうちょっと考えよう?」
「まてぇぇ!!」
「またか...........」
後ろから声がしたけど、まだ追いかけてくんのかよ。さっきいい感じに追い払えたと思ったのに、強情な奴らだ。
「アタイから逃げられると思ったら大間違いだよ!」
「やめようよ!チルノちゃん!」
うん、しつこい。
俺を追いかける二人の妖精は、威張っているのが氷精チルノ。心配してるのは大妖精だ、本名は知らない。まあ構ってる暇なんてないから交渉にでよう。
「後で金平糖やるから、今日は勘弁してくれ!」
「ならしょうがないね!アタイは寛大な心を持ってるから許してあげる!」
金平糖で撒けたあたりやっぱり子供だな。
チルノをまいた俺たちは大きな屋敷に辿り着いた、どうやらここが文の言っていた建物らしい。魔理沙の考え通りに窓から入ることにした。
門には別段人がいる感じではなかったけどなぁ。
窓から入ると、生き物の気配を感じない。留守なのか?とりあえず、屋敷の中を歩き回ってます。魔理沙について行くと、気がついたら地下に降りてるんだけど。
「おいおい、こっちであってんのか?」
「なんだよ?わたしの勘が信用できないのか」
「勘を信用しろと言われてもねえ.........」
だいぶ降りただろうか。目の前には強固な扉があった。なぜかこの先から人間の血の臭いがする。嫌な予感しかしないじゃないですかヤダー。
「ほら見ろ!わたしの勘が当たっただろ?」
「はいはい、すごいですねえ」
「褒められてるのかぜ?」
「さあて、行こうか」
「無視するな!」
魔理沙は無視して、部屋に入ったが、これと言って、珍しいものはないな。
何かあるとすれば、でけえベットの上の棺桶ぐらいかな?あと足元がねちょねちょするけどなにこれ?
「よし!開けてみようぜ!」
「辞めた方がいいと思うの俺だけ?」
「開けるぞ!」
「人の話聞け!!」
俺の言うことなど聞く耳持たず、魔理沙は棺桶を開けた。その中身は無く空っぽであった。
「空っぽ?」
「何だよおどかせやがって」
すると、突然部屋に光が灯った。
驚いていると、後ろからただならぬ気配を感じ振り向いてみれば、6、7歳ぐらいの見た目で背中からは虹色に輝く綺麗な羽が生えた少女が頭を下げ、人形を抱えていた。そして、下げていた頭を急に上げ、うわっ!と声を張り上げた。急に来たものだからびっくりしてしまった。
「あははは!面白ぉい!それで、あなたたち誰?」
「お、おどかすなよ。わたしは霧雨魔理沙!探検家だ」
「あなたは人間?」
そう言って少女は魔理沙に近づいた。そして、顔を確認するようにジロジロと舐め回すように眺めた。動くたびに羽がキラキラと輝き見惚れてしまった。
「生きた人間を見るのは、初めてだわ」
よく見ると彼女の口や服には赤い液体やシミがついていたが、なんだあれは?
周りを見渡してみるとそれが何かすぐにわかった。あれは血だ。先ほどまで暗くて気づかなかったが部屋の床に人間だったであろう原型をとどめていない物体が無造作に転がっていた。あの時のねちょねちょするものは血が溜まってできた血だまりだったようだ。
血を食しているあたり、この子は吸血鬼か?
「お前こそ誰だ?」
「あたしはフランドール・スカーレット。この部屋で暮らしているの。外に出れないから」
病弱なのか?それとも日光に弱いから?本当に吸血鬼なのか?
しかし、こいつから感じる魔力の量が半端じゃないな。
「.........お兄ちゃん、あたしと同じ魔力の匂いがする」
「な、なんのことだ?」
こいつ俺の魔力に気づきやがった。だが、どうゆう魔力かはわかってないようだな。まったく魔力を感じることができる奴は本当に苦手だ。
「ねえ?フランと遊ぼう?」
「遊ぶ?弾幕勝負か?」
「うん.....フランね....遊ぶ相手もいないし.....おもちゃもすぐ壊れるから.....」
なんだ?フランの持ってる人形から嫌な音がする。まるで無理矢理、硬いものを握りつぶしているような感じだ。
少しの時間音が続くと人形は耐え切れなくなったのか破裂してしまった。その光景に二人はギョッとした。
「魔理沙とお兄ちゃん.........一緒に遊ぼう!」
「俺はお兄ちゃんじゃねぇ!」
「ふふふ...........あはははは!!」
フランが不気味に笑い始めると、体から分身が出現した。そして、一斉に手をこちらに構え魔力を集中し始めた。
徐々に魔力は集まり巨大な弾幕と化した。
「魔理沙逃げろ!」
「でも!」
「いいから!!霊夢もたぶん向かってるはずだ!」
あいつなら絶対来る。逆にあれだけやって来ないことの方が異変だ。
「わ、わかったぜ!がんばれよアルマ!」
「逃がさない!」
逃げようとする魔理沙に弾幕を一斉にうちはなった。逃げる魔理沙と弾幕の間に立ち、俺はスペルカードを取り出した。
「防符【矛盾点】」
地面から現れた大量の矛が盾となり弾幕を防いだ。そのおかげで魔理沙は部屋から脱出することができたようだ。
フランは弾幕を止められて悔しかったのか、顔が少し怒りで歪んでいた。
「悪いが、お兄ちゃんと二人で遊んで貰うぜ?」
「本当は魔理沙でも遊びたかったけど.................いいよ!お兄ちゃんと遊ぶ!!」
フランは一瞬で俺の視界から消えた。周りを見渡そうとしたが、なぜか首が動かせない。床の影を見ると、どうやらフランが俺の頭を押さえているようだ。
「なんて力だよ!」
「叩きつけてあげる!」
一瞬、体が浮いたかと思うと床に叩きつけられた。起き上がろうとするが、骨に軽くヒビが入ったようだ。部分部分を動かそうとすると、軋んだ音がする。内臓も軽くやられ、口の中に血が溜まってやがる。
口から溢れ出た血を拭こうと手を動かそうとしたがフランに何故か抑えられ、血を舐め取られた。
「...........甘い.........お兄ちゃんの血甘い!」
「やっぱり吸血鬼かよ!てか、勝手に舐めるな!」
「もっと........ちょうだい!」
目が血走ったように赤くなったフランが飛びかかる。
俺はとっさによけようとするが分身のフラン達が四肢を拘束し、動かすことができない。
弾幕で弾き飛ばそうにも、もうすでに遅く、フランが俺の首に噛み付いた。
首には軽い痛みが走るが、その後に何かを吸われる感触があった。快感と気持ち悪さがあった。無理矢理血を吸われているからか、感触が気持ち悪いが、吸血鬼の能力なのか、気持ちいいなにかがあった。
「ぷはぁ!美味しい.........!」
「き、気持ち悪い体験させやがって......」
「酷い!女の子に気持ち悪いなんて、デリカシーがないよ」
勝手に人の血を飲んだお前に言われたくない。それに、まだ吸い慣れていないのか、口から血が垂れてしまっていた。
「はぁぁ......仕方ねえな。遊んでやるが俺が勝ったら無闇に相手を襲うな」
「.......うん!わかった。じゃあ、あたしが勝ったらお願い一つ聞いて?」
「ああ、いいけど。その願いって?」
フランは少し迷った顔をしたような気がしたが気のせいであろう。考えがまとまったのかフランは願いの内容を話した。
少しないように驚いたが、子供らしい可愛らしいお願いじゃねえか。負けても勝っても、得はあるかな?
「それじゃあ......行くぞぉ!!」
「どれぐらい持つかな〜?」
二人の弾幕が部屋の中でぶつかり大爆発が起こった。