《絶対零度の殺気》
この城はどれだけ大きいのでしょうか。
だいぶ歩いていますが今だにアルマさんの部屋に辿り着ける気配がありません。
しかし、歩くたびに廊下の先から感じる冷気が強くなって来ている。近づいている証拠なのでしょうか?
さらに歩き続けると、大きく禍々しい扉が見えた。
「ここが魔王様の.....!!」
何かを言いかけたリリスさんは扉から感じる気配に怯えていた。
扉から感じる気配は廊下を歩いていた時に感じていた冷気とは比べ物にならない。
そして、近づいてわかったのは冷気の正体がものすごく鋭い殺気と怒りであった。
「あらあら、鋭い殺気が隠しきれずに溢れてる」
「相当お怒りのようですね.....」
扉から溢れ出ている殺気に怯えたリリスの声は震えている。
「いまさら会えないとは言わないわよね?」
「大丈夫です......覚悟はできていますから」
震えた手で扉に触れた。
開かれた部屋の中からパチンッ!という音が鳴る。同時にリリスは人形のように床に崩れ落ちた。
駆け寄ろうとした妖夢は部屋から溢れ出す冷気によって動きを止めた。
それは極寒の大地に立たせられた錯覚に陥れられるほどの冷たさ。
冷気に耐えられない妖夢は床に腰を着いた。
「そうとうお怒りのようね」
「当たり前だろ?」
部屋の奥にいたのは肘掛に頬杖をし、足を組み気怠そうに妖夢達を睨むアルマが玉座に座っていた。
その姿はまさに魔王と呼べるものであった。
その目を見るだけで妖夢は魂を奪われてしまうんじゃ無いかと恐怖する。
玉座に座りながら妖夢達を見つめるようにゆっくりと右から左に視線を泳がせた。
そして状況を把握したように大きなため息する。
「はぁぁ......俺は帰れって言ったはずだ」
「帰れと言われて素直に帰ると思う?」
「だろうな.........穏便に済ませたかったが仕方ない。力ずくだ」
玉座から立ち上がり手を振り上げると、床を突き破るように武器の群れが現れた。
それぞれの武器が意思を持った生き物のようにぐねぐねと動き、その目は獲物を見据えている。
気がつけば、溢れ出た武龍は妖夢達を囲んでいた。
「今から俺は......魔王として、お前らを魔界から追い出す」
アルマはあげていた手を振り下ろすと武器達が妖夢達に矛先を向け一斉に襲い出した。
妖夢は刀で襲いかかる武器を弾き武龍を防ぐが、相手は間髪入れずに彼女達を襲う。
紫とレミリアも弾幕で応戦するが、数は一向に減るように思えない。
「う、受けきれない!!」
「さあ...どうする?」
しかし、その猛攻は横から放たれた弾幕により止められる。
直撃した武龍は跡形もなく破壊され、地面に音を立てながら崩れた。
弾幕が放たれた先を見ると、アルマはさらに怒りを増す。
そこにいたのは別の入り口から侵入した幽香だった。
「相変わらず無駄に強い力ね?」
「幽香......!!懐かしい入り口を使いやがって...!!!」
「小さい頃よくみんなで城の出入り口にしてたわよね」
ギリリ...と歯ぎしりが鳴る。
「......お前は傷つけたくない!」
「相変わらず優しい魔王様。けど......」
ニコッと笑う彼女は愛用の傘を向けた。
傘の先に魔力が集中する。
幽香の笑顔は消え、目が赤く染まり怒りに満ちた。
「昔のように...消えようとするな!バカアルマ!!」
溜められた魔力が一気に放出された。
巨大なレーザーがアルマを襲う。めんどくさそうに頭をかく。
右手を突き出し、同等のレーザーを撃ち放った。
ぶつかり合うレーザーは相殺。
舌打ちをし、アルマは追い打ちをかけるように武龍を召喚した。
しかし、今度は遅れてきたフラン達によってまたも破壊される。
「てめぇらもか...!!」
「やばそうな雰囲気」
「お兄さまぁ!今度は逃がさないよ!」
「ああぁぁぁあ!!!めんどくせぇぇ!!なんなんだよてめぇら!」
怒りが昂ぶるにつれ、アルマの周りの大気が震えていた。
何か爆発する前兆のようにも見える。妖夢はその違和感に気づいた。
両手に魔力を集中させながら自分達の目の前に現れた幻想郷の者たちに言い放つ。
「次から次に......何で俺のところに来る!!俺に何をさせたいんだ!!」
彼の怒りを無視するようにレミリアは言った。
「だから言ってるじゃない。連れて帰るって」
「俺は帰らねえよ......何があってもな!感情爆破!憤怒!!」
アルマが両手に集中させた魔力をぶつけた。
その瞬間、魔王の部屋は妖夢達を巻き込むほどの大爆発を起こした。




