《異質な淫魔の側近》
妖夢達が城に入るのを見届けると、幽香は一人歩き出す。
その行動に気づいたパチュリーは問う。
「どこに行くのかしら?」
「どこって...あのバカのところ」
その言葉に小悪魔は驚く。
「え!?で、でも大人数で行くのは良くないって......」
「そうよ?あいつの能力で絶対にバレるはず。だからあの子達は囮」
「へ?」
その場にいた全員は拍子抜けした。
彼女はアルマの意識をまぬがれるために妖夢達三人を囮に使ったというのだ。
アトラスでさえ、度肝を抜かれた。
「で、でも他に道は...」
「城にはいる方法はもう一つあるのよ?アトラスあなたも知らない...ね」
「う、嘘だろ?」
「まあ、その道を知ってるのは私かアルマ、あと他に二人」
「二人...?」
「内緒よ。ほら行きましょう」
自由な彼女はその入り口へと向かう。
そのあとを仕方なくついていくパチュリー達であった。
その頃、妖夢達は。
入り口すぐの大広間にいた。
そこは名前の通り、とても広く舞踏会でも開けそうな広さ。
彼女達はその広さに目を奪われた。
だが、そんな広間には使用人どころか生き物の気配は感じられない。
その違和感に妖夢は気づく。
「使用人の一人もいないなんて......」
「もしかして...罠とか?」
「罠なんて、仕掛ける意味がありません」
紫の言葉に反応した声の主は妖夢達と向かい合うように立っていた。
執事のようなタキシードを着ているが、その髪は肩まで伸び。左右不対象のツノ。片翼の蝙蝠の羽。妖艶な魅力を放つ女性であった。
こちらの様子を伺うように見つめる目は吸い込まれそうなほどに赤い。
何かを確かめ終わると彼女はゆっくりと三人に近づく。
「私はリリス。サキュバスと呼ばれる種族です。今は、魔王様の側近を務めさせてもらっています」
「魔王様?ああ、アルマね」
リリスと名乗る女性は、礼儀正しく頭を深々と下げる。
その行動と、姿に紫は少し疑問を持っていた。
「サキュバスって確か淫魔よね?服装は露出度が高く、結構自由奔放な性格をしてるって噂だけど」
「私はすこし他の淫魔と違うので...本題に入りましょう。今からあなた方には魔王様について詳しく知ってもらいます」
その言葉に、三人の動きは止まった。




