《行方不明の自称人間》
今回からオリジナルストーリーです!!
異変により訪れなかった春の風が幻想郷に吹き乱れてから一週間、幻想郷の半数は春の訪れを喜んでいる暇はなかった。冬の終わりとともに忽然と姿を消した男、桐月アルマを探すために彼女らは幻想郷中を探し回っていた。
そして、その一週間後である今日。一度博麗神社に集まってそれぞれが得た情報を共有することになった。
「それで...何かわかった?」
その場にいる全員の顔を見つめ、霊夢は問いかけた。すると、代表するように紅魔館のメイド長 十六夜咲夜が答えた。
「今だにこれと言った情報は何も......ですが美鈴には探索を、パチュリー様には居場所の捜索を続けてもらってます」
「そう...魔理沙は?」
その言葉に両手を上げて首を横に振った。どうやら彼女もお手上げの様子だ。
ここにいる全員の力でもアルマの手がかりは誰一人として掴めていなかった。そんな彼女達の中で一人ずっと黙っていた妖夢を見て幽々子はあることに気づいた。
「妖夢......何か知ってるのよね?」
幽々子に思わぬことを言われ、彼女は驚いて目を見開くが観念したように閉じていた口を開いた。
「アルマさんは.........魔界へ行くと言ってました」
『魔界!?』
予想もしていなかった行く先に彼女らは驚いていた。
幻想郷で言う魔界とは悪魔や魔物が生きている世界で魔法使いなどが好んで修行をする場所でもある。
妖夢の言葉を確かめるように霊夢は聞いた。
「魔界って、あの魔界よね...」
「詳しくはわかりませんが...魔界に行くとだけ言っていました」
妖夢は申し訳なさそうにしていたが一同は彼女に感謝した。
「居場所はわかった! さっさとアルマに会いに行こうぜ!」
「意気込んでいるところ悪いけど、行く方法はあるのかしら?」
紅魔館の主であるレミリアの言葉に魔理沙はうっ! と唸ると腕を組み考え込んだ。
実際のところ一人を除き、ここにいる全員が魔界への行く方法がわからないのであった。
「あら? お困りのようね」
その声に全員が振り向く、その視線の先にいたのは何もない空間に大きなスキマを作りそこから上半身を出している女性がいた。
「なんであんたがここにいるのよ...紫」
彼女の名は八雲紫。この幻想郷の創造者である。スキマ妖怪とも言われ、幻想郷では一番とも言える大妖怪である。
「なにかお困りのようだったから、助言でもしようかと思って」
「何か知ってるのか?」
魔理沙が聞くと、クスクスと小さく笑い霊夢の顔を見て言った。
「私は知らないけど魔界の入り口は霊夢が知ってるはずよ?」
紫の一言でその場にいる全員が霊夢に視線を移した。皆に注目され諦めたようにため息をした彼女は白状した。
「.......知ってるわ。けれど、あそこは人間が行くような場所じゃない! 長くいたら危険なのよ!」
「人間じゃなければ大丈夫でしょ?」
「私達に任せてください」
咲夜の言葉にレミリアは真剣な顔で言った。
「咲夜は来ちゃダメよ。人間なんだから」
「ですが.....」
主を守るべき従者が安全な場所で待つだけでいいのか、そう考えている咲夜の気持ちに気付いた妖夢は立ち上がって提案をした。
「咲夜さんの代わりに私が行くのはダメですか?」
「そうね...それがいいわ。咲夜もそれでいいわね?」
「.......わかりました」
こうして、魔界にはレミリアとフランの吸血鬼姉妹、後から合流するパチュリーと小悪魔、そして咲夜の代わりに妖夢が入ったメンバーで魔界へーーーーー
「面白そうだから私も行こうかしら」
それと幻想郷の主、紫も共に魔界へ行くこととなった。




