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東方魔人黙示録  作者: 怠惰のあるま
最終章《魔王は魔人の夢を見る》
201/204

《気高き獅子と虚ろう孔雀》

漸く投稿

不定期更新どころではない失踪未遂の愚者帰還

太陽は全てを照らし、虚飾に隠れし者を炙り出す。


月は全てを照らし、傲慢なる者を優しく包み込む。


磔は輝いていた。まるで太陽のように荒々しく。


豊姫は輝いていた。まるで月のように穏やかに。


『なるほど...』

『雰囲気が変わったねぇ...』

『こちらも覚悟を決めねばな』

『僕はいつでもいいよ』

『......わかった』


どこか悲しみを帯びた声を出すと、ルシファーは異空間から刀身のない剣を取り出した。


『さらばだ』


ズブという音が聞こえた。

柄だけの剣の刀身部分であろう方をアザゼルに向けていた。

見えない刀身でもあるのかそれは確かにアザゼルの心臓を貫いていた。


「あいつ、仲間を!」

『虚ろう孔雀を気高き獅子は喰らい、その美しきメッキを我がモノへ...』


透明の刀身が赤黒い液体と化すとアザゼルを飲み込む。ぐちゃりぐちゃりと怪物を咀嚼する音が響いた。

刀身が徐々に小さくなると先ほどまで透明だった剣は真白の刀身を持った。


『虚飾と傲慢は二つとなりて大罪の頂に君臨す』

「合体したってことか!?」

「違うわ。元々一つだったのが二つになってただけよ」

『その通り。我と虚飾は元々、一匹の大罪(かいぶつ)だった。だが、いつしか意思は二つとなり、二匹の大罪(かいぶつ)を生み出した』


虚飾の刀を振り回し、切っ先を向けた。


『さぁ、我が主に仇なす者らよ。ここで斬り伏せてやろう』

「磔」

「一人でやるなんて言わないさ。二人で確実に倒すぞ!」


豊姫は静かに頷く。

二人が得物構えると同時にルシファーは縮地で接近した。

振り下ろされた虚飾の刀を磔が防ぎ、その背後から豊姫が扇を振るった。

扇からは風は起きず、代わりに空間が歪んだ。

次の瞬間、二人の姿が消え、ルシファーの刀が空を切った。


『虚飾の力か。なら...』


右手に黄金の炎を纏うとルシファーは目の前の空間を殴り付けた。

空間にヒビが入るとメッキが剥がれたかのように二人の姿が現れ、磔が剣を振りかぶっていた。


「遅い!」

『貴様がな!!』


右手に炎を纏わせたまま、磔の刀を掴み左手に魔法陣が現れた。


『傲慢 傲水蒼玉サピロス・ザ・スプラッシュ!』


魔法陣からサファイアが放出され、磔に襲い掛かり後ろの方へと吹き飛ばした。


『油断はしない! 傲水蒼玉!!』


今度は両手に魔法陣を作りサファイアを放出した。

休みなく放たれ容赦なく磔を追撃する。数秒以上打ち続け、ようやく攻撃が終わったかと思うとルシファーは縮地で彼に近づいた。

刀を振り下ろすとそれを無傷の磔が防いだ。


『事象をねじ伏せたか』

「ああ、お前が実践してくれたおかげでな」

『減らず口を叩くな。強がってるのはわかっているぞ』


くるっと向き直ると、後ろの空間を切り裂いた。

そこには右腕を負傷した磔がいた。


「くそっ! バレたか!」

『まだ輝きが弱いようだな。もっと輝き、事象を焼き消さねば意味などないぞ!!』


付け焼き刃で教わった力の使い方を教えるかのようにルシファーは言った。

その言葉に豊姫は違和感を覚えた。


「あなたは何がしたいの」


彼女の言葉にルシファーは首を傾げる。


『何を今更。我は貴様らを止めるのが役目だ』

「なら、どうして磔に助言をするの? 本当に止めるつもりなら力の使い方を教える必要はないわ」

『思い違いも甚だしい。傲陽金剛アルマース・ザ・サンシャイン


神々しく輝く金剛石が地面から突出した。


『我が傲陽の前では全てが無力なり』

「そんなことはあり得ない。それは月の光となりて平等に全てを照らす」


豊姫が言うと傲慢の金剛石は輝きを失い、淡い月光を放った。


『やるではないか。ならこれはどうだ?』


虚飾の刀を天高くに向けると、それは白い輝き、否、無色透明な光を放った。それは色がなき光。

全てをまやかしで包み込み、使用者の思い通りの世界を作り出す不平等の光。


虚慢輝煌(バニッシュ)


光が3人を包み込み、やがて光が収まるとそこは壁も床も黄金のように輝く部屋であった。

磔と豊姫の視線の先には同じく黄金で出来てる玉座に座るルシファーがいた。


『ようこそ。我が王の間へ』


手を広げ自身の部屋を自慢するかのように嘲笑う。


「また幻覚か」

「いえ...これは...」

『幻覚であり現実だ』


パチンと指を鳴らすと彼らの足元が盛り上がる。そこから金色の剣と銀色の剣が出現した。

咄嗟に飛び退いた二人だが、退いた先には同じく金と銀の矢が数本飛来した。


「何だってんだ!」


そう口にして磔は金銀の矢を斬り落とす。


「これがこの空間の力みたいね」


扇を振りながら豊姫は空間の力を見抜いた。


『今のはまだ序の口だ。ここからが面白くなるところぞ』


右手を天井に向けると指を鳴らした。すると、メッキが剥がれるように天井が消えていき、そこには宇宙が広がっていた。


『星の爆発を味わったことはあるか?』


天井の宇宙に一際強く輝く星があった。それは徐々に輝きを増し比例してエネルギーも増していた。


「星の爆発って...まさか...!!」

『信念を貫きたければ防いで見せろ。傲星爆破(ビック・バン)


指を鳴らすと同時に二人の視界が光に包まれた直後、耳を劈く大爆発が起きた。

周りの壁や柱を悉く破壊し、何もかもを吹き飛ばす。光が晴れる頃にはルシファーの周り以外の全てが灰と化していた。

しかし、灰と化した世界に人影があった。


『星の爆発は常人では防ぐことなど不可能。故に貴様が生きているのも必然か』

「死ぬ寸前だったがな」


全身から血が吹き出し、満身創痍の磔はそう言った。


『五体満足な時点で十分の強者だ』


ピキッという音が聞こえた。

周りの空間にヒビが入っていた。それがピキピキと広がっていくとガラスのように砕け散り、元の風景に戻った。


『ふむ。姿がないと思っていたがこの空間を砕くか』

「磔が防いでくれなかったら無理だったでしょうね」

「正直全ての爆発を受け切るのはキツかった...」

「でも、あなたなら守り切ってくれるって信じてたわ」


その言葉に磔は笑った。


「さて、終わらせようぜ。ルシファー」

『いいだろう』


ルシファーは右手に虚飾の刀を握ると黄金のオーラを刀身に纏わせた。


『我の一太刀で貴様らは死ぬ。これは絶対だ!』


暗示のように宣言をするとオーラは一層輝きを増して虚飾の刀を包み込んだ。


「いいや。お前は攻撃を外し、俺の一撃を持って倒れる。これは絶対だ!」


同じく磔も宣言をすると両手にルシファーと同じ黄金のオーラが現れた。

果たしてどちらの傲慢が上か。今決まる。


「エンドナイト!」

『天上天下唯我独尊!』


瀕死の状態であるからこそ発動できる超技術が一つエンドナイト。磔に限界以上の力が溢れ出した。

全てにおいて自分が上だと傲慢の感情が乱気流が如く昂った時、発動される天上天下唯我独尊。それは磔と同じく限界以上の力をルシファーに与えた。


『傲慢の極 秩序斬り!』


世界の秩序を切り裂き、絶対に防ぐことができぬ一太刀が磔を襲った。


「傲星!」


超技術が一つ桜星に傲慢の感情を込めた防御不能の一撃。

同時に放たれた剣と拳。それがぶつかり合いバチバチと二人の傲慢が黄金の火花を上げていた。

均衡しあっていたそれは一つの些細なきっかけで崩れ去った。

磔が消えたのだ。突如、鍔迫り合いをしていた目の前の男が消え、代わりに豊姫がルシファーの刀を扇で受け止めていた。


『なっ!!』

「さっき騙してくれたお返しよ」

「俺は言ったよなぁ! 一人では戦わないってよぉ!!」


エンドナイトは本来感情に変化が乏しくなり、連携を取りにくくなるという欠点があった。が、その欠点は豊姫の虚飾が改竄し、エンドナイトも使用時は感情が豊かになると書き換えていた。

背後に回っていた磔の一撃がルシファーの背中に突き刺さった。

メキメキという音が聞こえ、逆9の字となったルシファーは数百メートル吹き飛び、地面の上を転がった。

それでも辛うじて立ち上がろうとするルシファーだったが、諦めたように仰向けの状態で横たわった。


『我の負けだ』


清々しいほどに怪物は負けを認めた。


「さぁ、教えろ。アルマは何が目的なんだ!」

『......主は運命のままに』

「運命...?」

『ようやく運命を終わらせようとしている。何千回と苦しんで...苦しんでようやく...ようやく...!』


ルシファーの目から涙が流れた。主の運命を悲観するように。


『アルマは...解放されるの...』


気づけば口調が変わり、彼、いや彼女は地獄の審判を行う閻魔の姿へと変わっていた。

ルシファーの本来の姿に二人は目を見開いた。

謎は未だ深き霧の中。


△▼△


一方その頃-----


「はぁ...はぁ...どんだけ湧くんだ!」

「まだ無数に反応があるぞ!」


空間の割れ目から湧き出すように異形が現れる。

それを斬り伏せながら竜神は止むことのない敵の出現に疲労と苛立ちが出てきた。能力で割れ目の中の生命反応を探知する黄泉は全く減ることのない反応に焦りを感じていた。このままではジリ貧だ。


「どうする桜さん」

「大丈夫よ。今、あいつが来たから」

「何を言ってーーーー」


桜の落ち着いた言葉の真意を問おうとした儚月だったが、突然目の前の異形達に光の柱が降り注いだことで、それは遮られた。

光の柱が消えると、そこには異形達が元からいなかったかのように割れ目と共に消え去っていた。


「な、なんだ今のは!?」

『俺様の力だ。喜べ馬鹿共』


背後から傲慢な態度と自分を馬鹿と呼んだ声に竜神は怒り気味に声の主を睨んだ。


「誰だてめぇ!」


後ろにいたのは刺々しい頑丈な武装ズボンを履き白いタンクトップ。黒髪のショートカットで、前髪がツノのように反り上がる癖っ毛が目立つ男がいた。

男の姿を見た黄泉と仙我は目を見開き、桜はどこか呆れたように言った。


「遅いわよ」

『助けてやったのにその態度はねぇだろ。流石に怒るぞ』

「はいはい」

『それで新月少年と仙我はどうしたんだ』


男は二人の反応に首を傾げる。

それに対し、戸惑った反応を見せながらも仙我は答えた。


「い、いや...ある人にそっくりだったから」

「そっくりというか、もはや本人だろ」

『残念だが、似て非なる者だ』


誰とは聞かずに察したのか男は否定した。


「とにかく。助けてくれてありがとう。えーっと...」

『名乗ってなかったな。とりあえず俺の事は雁来(がんらい)と呼べ。呼び捨てでいい』


そう言い男-雁来はどこから取り出したのか、木製の椅子の背もたれを前にして気怠そうにもたれかかった。


「なあ雁来。聞きたいことがある」


そんな緊張感のない雁来の姿に警戒を持ちつつ、仙我は疑問を投げかけた。

それに対し、雁来は半目の状態で言った。


『答えれる範囲であれば答える』

「あんたが桜さんの言ってた管理者って事でいいのか?」

『ああ、そうだ。俺はずっとこの世界を管理してきた』

「...聞きたいんだけど。管理してたってことはこの世界の生まれた瞬間も知ってるのか?」


竜神の素朴な疑問に雁来は考え込むように腕を組みながら答えた。


『時間概念で当てはめれるものじゃないが、強いて言うならこの世界はアルマが天使どもと対談した瞬間からだ』



語られるは驚愕の事実

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