《正義の怪物》
はぁい。コラボ最終回でぇす。
うん。平常運転な終わりだ。
前回のあらすじ〜強制的に授業受けさせられて今度は俺が教える番になりました〜以上〜。さぁて、地霊殿に戻って、イラの様子を見に行くとしよう。
「ねぇ。一話って何よ」
「まだ聞くのそれ」
「気になるじゃない!」
そんなこと言われてもコメディの住人じゃない君にそんな話をしたところで理解できんよ? 俺の世界の管理者と出会うことになっちゃうけどいいの? 君も毒されるよ?
まあ、絶対に会わせる気はないし、教える気もない。
「気にしたら負けってことで諦めろ」
「何よそれ。まあいいわ。いつか問い質してやる」
「はいはい。いいですよ〜。絶対に答えないから」
というか。俺が説明できる訳でもない。
説明できないことを聞かれても、ただ面倒くさいだけですし? こういうのは有耶無耶にするのが一番ですよ。
では、改めてイラの様子でも見に行こうか。
△▼△
地霊殿のイラが居るであろう部屋に向かうと、何故かは知らないが破月さんにイラが膝枕させてもらって居るのだが、どういう状況ですか?
「あ、お父さん、お母さん。おかえりなさい」
「ただいま。それで...どういうこと?」
「ああ、これは...」
「俺が破月姉に膝枕してもらいたかった! それだけだ!!」
「ああ...うん...そうか...」
何故だろう。我が子が段々自分にそっくりな性格になりつつある。いや、考えてみろよ。俺みたいな依存精神者が量産されてみろ? 世の中崩壊の一歩を辿ることになんぞ。
自分だけならまだしも、我が子まで精神異常者になられても困るんだよ。
「残念な方に似つつあるわね」
「そんな冷静に認めたくない事実を言わんでくれ...」
「あら、気にしてたの?」
そりゃ気にするよあんた。
自分の息子が自分のダメなところそっくりになっていって喜ぶ親が普通います? いないでしょう!?
「アルマは自覚性の精神異常者だから。自分みたいになって欲しくないのよ」
「何そのパワーワード」
「とにかくアルマも自分の所為でああなったんじゃないかと責任を感じてるの」
「ああ...やっぱりパルスィだけだ...俺の事を理解してくれるのは...」
「何年妻をしてると思ってるの?」
軽く二人だけの世界に入りかけて居ると桜が咳払いした。
ああ、ごめんね。そんでまあイラの見たくなかった現状も確認したし、そろそろ彼女の知りたがっていることをお教えしましょうか。
「さてさて、異法についてはもう教えんでも理解したろ?」
「ええ、あれだけ見れれば原理は理解できたわ。あとはあなたの怪物だけよ」
「本当に知りたいの?」
「言わなくても感情で分かるでしょ?」
はぁぁ...ヒシヒシと伝わりますよ。罪深き強欲が。分かったよ。
「そこまで言うなら教えてやるよ。ただ、後悔するなよ?」
「あなたと行動して後悔しなかった時なんてないわ」
そんなこと言う? 確かに桜には色々とご迷惑をお掛けしましたが、だからと言って教えて貰う立場でそんな風に言わんでも良くない? まあ気にせず教えてやるけども。
「はぁぁ...俺の怪物は感情から生まれるのは知ってるな?」
「らしいわね。前にもあなたが言ってたわ」
「アイツらは感情を持つ生き物すべてに潜んでいる」
「じゃあ、もしかして私の中にも?」
「ああそうさ。そして、お前は怪物を自分の中で少なからず認識したな? そう言うわけで頑張って来い」
桜が俺の言葉に疑問を覚える前に意識を失った。
さぁて、どうなることやら。大丈夫だとは思うが......頑張ってくれ桜。
△▼△
あれ...? 私は一体...どうしたと言うの...?
確か、アルマに感情の怪物について教えて貰おうとして、また遠回しに意味のわからないことを言われて...それで...ああ、何故か急に目の前が真っ暗になったんだ。
ここは一体どこ? 意識はあるのに眠っているような不思議な感覚。まるで実態のない存在になった気分。でも、どこか落ち着く。
もしかして、ここは私の深層心理なのかしら。だとしたら、アルマがまた説明も無く送り込んだと考えるべきね。戻ったら叩きのめしてやる。
そんな事を考えていると私の目の前に誰かが立っていた。
「ヤァ、やっト会えタね」
どこか片言な喋り方をするその者はニコニコと笑っていた。
「あなたは誰?」
「アれ? 私ガ分かラないか。う〜ン...ここにキたッてことはそうイウ事かと思ッタのに...」
一人でブツブツ言っているけど。本当に何者? 私の深層心理にいるってことは私の一部ではあるのだろうけど。
「ねぇ、あなたは私なのよね?」
「半分当タりデ半分マチがい。私は怪物...《正義》の怪物」
怪物って...こいつが!? 怪物だから禍々しい見た目か、もっと大きな体をしているかと思ったけど。そう言えばアルマの怪物にも人型はいたし、おかしくはないのか。しかし、何故怪物の姿が認識できないの? そこに居るのは分かるのに姿が見えない。まるでまだ姿が出来ていないかのように。
「タシかニ私は主の《正義》が具現化サレた怪物。けど、怪物は別に主のモのではナイヨ?」
「まるで私はあなたの道具じゃないと言われてる気分ね」
「あら、わかってるジャない」
「アルマの怪物だけが特別に主を嫌っているかと思ったけど。そう言うわけではないのね」
「うふフ! 怪物は全いンが自分の感情に素直なの。だから感情の怪物なのよ?」
素直...ね。アルマの怪物が主である彼に反抗的な理由が理解できたわ。でも、そうだとしたらパルスィの怪物は何故あんなにも彼女に素直に従うの? 素直にも色々あるってことかしら。
「それであなたはその事を私に教えるために現れてくれたの?」
「まさか! 私はこのチャンスを待ってたの。私を認識するこの瞬間を!」
徐々に喋り方が流暢になってきた怪物は両手を広げると黒一色だった世界を反転する様に白一色の世界へと変えた。
そして、認識出来なかったはずの怪物の姿が少し幼い姿の私へと変わっていた。
「さぁ! 私を使役したいなら主の正義を見せてごらん!」
「私の正義...ね...」
正義の怪物の言葉に桜は不気味に笑っていた。
その笑みは一体何から来るものなのか、怪物には分からなかった。ただ一つ言えるとすれば、歪んだ何かが笑みに隠れていることだけ。
「正義とは何を持って正義なのかしら? 人を守れば正義? 人を救えば正義? 悪を倒す事が正義? 世界を救うのが正義? 正義なんてその時によって変わる。結局は大衆心理に正義は塗り潰されるのよ」
桜は淡々と語る。
これまでの自身の境遇から考えさせられた正義というものを。
正義の怪物は怯えていた。正義を具現化したとも言える自分自身を否定されているようだったから。完全に怯えきった怪物に桜は近づき、手を差し出した。
「けどね。私は自分の正義を貫く。周りからどれだけ否定されようと私は私が信じた正義を裏切らない。だから、あなたという私の中の正義を裏切らない」
怪物は目を見開いた。正義とは時に否定されるもの。況してや周りに感化され正義は容易く崩れ、変わってしまう。だから怪物は認められたかった。自分という存在を、自身の正義を。
「私を受け入れてくれる?」
「ええ、我が主よ。その正義が崩れぬ限り、力の限り主を助けると誓いましょう」
「そう。期待してるわ」
正義の怪物が目の前から消えると同時に私の意識は、また闇へと沈んて行った。
△▼△
布団に寝かせた桜を見守る事数分。彼女は目を覚ました。とりあえず俺は全身を硬化させておく。案の定、殴り掛かってきた。
硬化していたせいか、桜は殴った拳を抑え震えていた。痛かったみたいですねぇ。まあ、まさか殴ろうとした相手が鉄以上の硬度だなんて思っても見なかったようです。
「この...!」
「はいはい落ち着きましょうね〜。で? どうだった?」
「......あなた。やっぱり分かってたのね」
「認識した瞬間に怪物は主を深層心理に引っ張っていくんだ。説明不足で悪かった」
「反省してるならいいわよ。それで、怪物はどうすれば出てくるの?」
「安心しろ。もう出てる」
俺が桜の背後にちょこんと座っていた彼女の怪物であろう者を指差した。それに気づいた桜は少々、驚いた様子。
「な、なんで?」
「いや〜外に出れるようになったから早速出て見たくなって」
「主の許可なく出れるものなの!?」
「出るぞ。俺の怪物も時々出てくる」
「それって問題あるんじゃないの...?」
「さぁ? 時間経てば帰ってくるからそこまで深刻じゃないんだよね」
強いて言うなら、完全に体から怪物が抜け出していると、その感情を抱く事はない。前に俺の中から怠惰の怪物が抜け出た時に珍しく本気になったあの時みたいな状態。
アレのせいで勇儀さんを本気にさせてしまいボコボコにされたなぁ。
俺が遠い目をしていると、桜にある質問をされた。
「ねぇ、もし正義の怪物を私が否定していたらどうなっていたの?」
「簡単だ。お前は二度と目を覚ますことなく深層心理に閉じ込められていた」
「何よそれ...一歩間違えば死と同等じゃない!」
「だから言ったろ。後悔するなよって」
自分の負、闇、罪を受け入れることができない奴に怪物を使役できるわけがないだろう。器の大きさを問われる試練なのさ。
俺も同じ試練を受けたけど、ここまですんなりと怪物には認めてもらえなかったな。
真剣に自分自身の罪などを認めた結果ってところか。俺? クソどうでもよく返答したらめちゃくちゃ時間かかったよ。だから怪物達も俺に反抗的な態度を取るんだよね。困ったもんだ。
「兎に角だ。お前は怪物は怪物を認識し、味方とした。その後のことは自分自身で頑張れ」
「ホンットに適当な男ね」
「ここまで教えて貰えるだけありがたいと思えよ。俺は本来なら怪物の存在をバラしたく無いんだよ」
「あら、どうして?」
「わかってて聞いてんだろ...」
さっき桜が言っていた通り怪物の認識は死と同等だ。一歩間違えば意識は二度と深層心理から浮かぶこと無く廃人と化す。つまり、感情の死を表す。
この事もそうだが、もう一つ理由がある。怪物はそれぞれの世界に複数存在してはいけないんだ。えっ俺とパルスィだけで九匹もいるだろうって? 複数というのは感情の事だ。考えてもみろ。憤怒の怪物が十匹もいたら世界が憤怒の爆破で壊れるぞ。
一匹だけでも危険なのに複数いたら世界が耐えられん。だから感情一つにつき怪物は一匹しか存在してはいけない。
感情というのは生き物すべてに存在し、それぞれ個人の感情の性質がある。もし世界の全てが怪物の存在を確認することになったらやばいことになるだろ。
まあ、そんな訳で危険がいっぱいな怪物を大量生産するわけにはいかんのだ。
「分かったか」
「ええ、十分」
「ならいい。さて、もう俺に聞きたいことはないか?」
「ないわ。有意義な時間をありがとう。ここらで私は帰らせてもらうわ」
「そうか。じゃあな」
「いや、もう少し止めたりしないの?」
めんどくさ。
何この人。止めたら止めたで絶対になんか言うくせに止めなかったら止めなかったで文句言うの? 本当にめんどくさい。
「桜先生帰るの?」
「ええ、あなた達の成長も見れたから」
「また来てくれますよね!」
「きっと来るわよ。今回みたいな謎の力が働かない限りね」
俺を見るな俺を。今回は俺のせいじゃないです〜! バ管理者のせいだし〜!
「さてと...そろそろ行くわ」
「ああ、今回は色々とありがとよ」
「こちらこそ。それじゃあまた」
そう言うと桜は目の前から消えました。
うん。一瞬で消えました。移動の術式やらなんやらで移動したと言うことにしよう。
え? 適当だって? 知らんよ。
「さぁて...寝よう」
「寝るの...?」
「え? うん」
なんかパルスィが寂しそうな顔してる。そういえば今回はパルスィと全然イチャイチャできてなかったなぁ。
「やっぱりパルスィともう少しイチャイチャしようかな」
「アルマが言うなら仕方ないわ。イチャイチャしましょう」
嬉しそうな顔をしてるくせに平静装ってるんじゃないよ。全く可愛い子だ。
そんな訳で、今回のコラボはアレだ。いつも通り適当に終わるんだよ。