後日談その二
お久しぶりですね。
こんなに長く書いたの本当に久しぶりです。
それでは本編どうぞ。
さぁてと全回復したから宴に参加しよう。
「いや、可笑しいだろ!?」
「霊斗。言っただろう? 俺はコメディの住人なんだって」
「知るか!! そんな理由で納得できると思うな!!」
「えぇ〜...」
そんな理由ってコメディの住人ってだけでだいぶ理由になると思うんですが。
コメディ系のお話って一話進めば何事もなかったようにお話進むじゃん? それと一緒。つまり俺が一話前に死にかけていたとしてもコメディの住人である俺が完全回復してても断じておかしくないんだよ。
「もう言い返す気にもならねぇ...」
「アルマに常識は通用しないには分かってるだろ?」
何処か呆れた様子の幻真がそこにいた。
というか俺の勘違いじゃなければ絶対にバカにしてるよね?
「まあそんなことはどうでもいいんだ。アルマ頼みがあるんだけどさ」
「やだ」
「俺に感情解放について教えてくれ」
「無視ですか...そうですか...」
しかし...感情解放について教えてくれ、か。別に教えてもいいが。なんでまたこいつは教わりたいの?
「あの戦いで感情解放が戦いに使えそうだと思ってさ。俺も使えるようになりたいと思って」
「なるほどね。じゃあ、辛い方と楽な方どっちがいい?」
「逆に聞くがどう違うんだ?」
「覚える過程の辛さ」
「楽に覚えれるんだったら覚えたいが」
「じゃあ楽ね」
よし。手っ取り早くて済む。ラッキー!
後でふざけるなって言われても俺は悪く無い。本人が言ったことだもん。オレ、ワルクナイ。
「なんだなんだ? 楽しそうなことやってるな」
「あ、磔。いや、幻真が感情解放について教えてっていうからさ。これから教える」
「ほう。面白そうだな。俺にも教えてくれよ」
「え? 別にいいが」
この調子だとあと数人は増えそうだ。
まあ、別に俺はいいんだけどね。俺がやる事は感情解放の使い方を教えるだけ。その後のことはこいつら次第さ。
ぶっちゃけ感情解放を使いこなすのむずいと思う。感情に呑み込まれないように理性を保ちつつ戦うんだ。並大抵の精神力が無いと無理だと思うぜ? と、言ってみたがそれについては大丈夫か。こいつら無駄に精神力あるし。
さてさて...さっそく場所を移して教えるとしようか。
△▼△
「アルマと〜」
「パルスィの〜」
『感情解放講座〜!』
『......あ、はい』
みんな冷たいです。なんだよお前ら〜! 俺とパルスィが折角、教えてやるっていうのにノリが悪い! まあいいや。
それで我々は地霊殿の裏庭にやってきました。今回、俺に教えを請う生徒達はこいつらだ。
幻真、想起、火御利、磔、春姫、桜、そしてなぜか終作。
「あーうん。終作? なぜお前がここにいる?」
「いや〜! 面白そうじゃん?」
「あっそ。んじゃあ早速始めようか」
別に学ぶのであれば気にはしない。
他にも見学してる奴らが数名いるが...どうせ酒の肴にしようとしてんだろ。全く見せもんじゃねえぞ。というかこいつらいつまで飲む気だ。酒だって無尽蔵じゃねえんだぞ。
あの量だと地霊殿にあるお酒全部飲み切る勢いだろ。まあ、無くなった時はその時で考えよう。
今は教えることに集中しますか。
「とりあえず、感情解放がどう言ったものかだいたいわかると思うが...あれは感情の昂りを利用した強化だ。ただ、一朝一夕で覚えれる程簡単なもんじゃない」
「でもお前、さっき楽な方法があるような言い方しなかったか?」
「ん? それはあれだ。今からお前にやってやるよ」
首を傾げる幻真に向けて俺は指を鳴らした。すると、急に頭を抑え込み苦しみ始めた。
うん。やっぱりそうなるよね。幻真の異変に想起が焦った様子で言った。
「お、おいアルマ! 幻真に何したんだ!?」
「強制的に感情解放を起こさせた。一番手っ取り早いし、感覚も掴める。ただ苦しい」
「ぐぅぅ...! なんだ...これはぁぁ...!?」
苦しみながらも何かに抵抗するように頭を横に振ったり、強く頭を押さえ込んだりしている幻真。ガンバレ〜。
心の中で応援していると変化が訪れる。今まで幻真の中で感じられた感情が弱まっていき一つの感情だけが色濃く残った。
「げ、幻真...? 大丈夫...?」
「ハラが...」
「え?」
「ハラが...減っタ...」
紫色に輝く虚ろな瞳を俺たちに向けてヨダレを垂らす幻真。うん。暴食の感情解放を起こしてみたが適応したか。
ひとり頷いていると口から紫色の炎を纏う舌を出していた。ああ、これはヤバイな。
心配で近づいた火御利を抱きかかえて幻真から離れると彼女が立っていた地面が歯型が付くと共に抉れた。
おぉ...暴走してるね。こうなるとアレだね。
「桜〜おねが〜い」
「はぁ...全く...私をそうゆう係みたいに扱わないでくれる?」
桜が幻真の足元に魔法陣を出現させると、そこから結界が生成。幻真を取り囲み閉じ込めた。
暴食の感情解放は相手にするのめんどくさいから幻真の暴走が収まるまで封印しておくとします。
「さぁて、今のが手っ取り早い感情解放の覚え方だけど。どうする? ゆっくり覚える?」
見本として幻真を使ったが、楽な方とめんどくさい方の違いは時間がかかるか、かからないか。たったそれだけ。つまり、特にメリットもデメリットもないよ。まあ強いていうなら楽な方は感情の荒波に飲まれて苦しむことがデメリットかな?
「俺はゆっくり覚えるとしよう...」
「正直幻真みたいになりたくないから同じくゆっくりで...」
「私もゆっくりと感情解放について教えてほしいわ。詳しく知りたいから」
「俺は楽な方かな〜! 逆にどんな感じか体験したいし?」
「俺も終作に賛成だ。短時間で覚えられるなら修行する時間があるわけだしな!」
「お父さんと同じがいいですが...苦しいのは嫌なので私はゆっくりでお願いします...」
別れたね〜。まあ、終作と磔は想像してたからいいけど。意外なのは桜かなぁ。てっきり短時間で覚える方を選ぶかと思ってた。知識を深めたいという考えあっての選択なんだろうな。
まあいいか。とりあえず、幻真と同じ様に終作と磔にも感情解放を強制発動させる。磔も最初は苦しそうにもがいていたがすぐに変化が現れ目の色が金色に変わり、高慢な態度となっていた。傲慢は磔と相性が良かったみたいだ。さっきと同じ様に磔も結界に閉じ込める。
さて...終作だが正直な話びっくりしている。今、あいつは青く冷たい輝きを放つ瞳に変わり蒼炎を両手に宿している。
こいつ、感情解放を使いこなしてるんだよ。強欲の感情解放を強制発動させたが苦しむ動作も見せず悠々と感情解放を使いこなしてた。
「はっは〜! やっぱりこの力凄いな! 何もかも手に入れたくなるぜ!」
「やっぱりって、まるで感情解放を使ったことがある様な言い分だな」
「まあな。感情の炎を俺が奪った時に感情解放と同じ状況になったんだよ」
なるほど。こいつの適正する感情は強欲であり、俺の能力で感情に呑まれた霊斗の世界の誰かの感情の炎を奪い一時的な感情解放状態になったのか。そりゃあ一度でも発動すれば感覚を掴めるか。しかし、なんか悔しい。
「もっと苦しむ姿を見せろよ」
「そうよ。苦しみなさいよ」
「二人揃って辛辣ぅ! あっはっはっは!!」
「とりあえずだ...お前はその状態の感情の昂りを覚えろ。そして、発動、維持、解除を繰り返せ」
「はいは〜い」
軽い返事をすると俺たちから少し離れた位置で練習を始めた。
それでは残りの奴らに講義を始めますか。
「できるだけ分かりやすく説明するつもりだがわかんなかったら後で聞いてくれ」
「ええ、わかったわ」
「ならいい。それじゃあ感情解放を教えたいと思うがその前に......お前ら広がれ」
「なぜだ...?」
「いいからいいから」
俺の言葉に疑問を抱きながらも想起達は等間隔に距離を取った。もうちょい広がって欲しいが大丈夫か。
「離れましたけど。私たちは何をすればいいのでしょう?」
「なんでもいいから感情を昂ぶらせろ」
「感情を?」
「悲しいとか楽しい、腹立たしいとかなんでもいい。強く感情を抱いて昂りを感じろ」
「そんなこと言われても...急に言われたって」
「本当に小さなことでいい。何か感情を強く抱けることを思い浮かべろ」
それぞれが言われるままに目を閉じて強く感情を抱く。まあ、春姫の言う通り急に言われたところでできるほど簡単じゃない。それでもこうゆう地味な方が安全であり使いこなせる。
と、なんだかんだ言っていたがコツを掴む者もいるわけで。やっぱりと言うか桜から強い感情を感じた。
うん。感情をうまく昂らせたんだ。
「意外に...キツイわね...!」
「だいぶ昂ぶっているが、まだいける。もっと昂りを感じろ」
「まだいけるって...なんかもう少しで爆発しそうなんだけど...!」
「それでいい。爆発するまで昂らせろ」
桜は不安そうな感情を浮かべるが俺の言う通りに感情をさらに昂らせていく。バチバチと黒い稲妻が彼女の感情のエネルギーが溢れて周りに放電していた。
昂らせていくうちに体がはちきれそうな感覚があるのだろう。両手で体を押さえ込むようにしている。もうちょいか。この感じだと被害がやばそうだ。
「お前ら俺の後ろに隠れてろ。パルスィはちょっと手伝ってくれ」
「わかったわ」
「さ、桜から異常なエネルギーを感じるぞ...!?」
「何が起こるんですか!?」
「ん? 感情爆破」
「感情爆破って...あなたが使うアレよね」
「そうそう。桜が昂らせて押さえ込んだ憤怒が一気に放出されるぞ」
想起達が心配そうな感情を浮かべているが俺とパルスィが防ぐから大丈夫さ。観客達はこの爆破如きで死にはせんだろ。死んだら? どんまいとしか言えないね!
そんなことはさておき。もう爆発しそうだ。
「もう...抑え...!!」
「パルスィ」
「私はいいわよ。アルマは?」
「いつでもいける」
「そう。ならやるわよ」
『依存 壊せぬ二人の絶対領域』
桜を中心として黒い光が迸ると共に爆音が鳴り響いた。
想像以上の爆発に俺は驚いた。一つ間違えば地底が消し飛ぶ威力の憤怒の爆発。守りに入ってなかったらと思うとゾッとするぜ。まあ間に合いましたけどね!!
俺とパルスィの合わせ技で結界みたいなのを張った。これね。絶対に壊せない程の頑丈さです。二人の依存の度合いが強ければ強い程、頑丈になる。つまり壊せない。何故なら。
「お前らに俺らの依存関係が壊せるわけねえだろぉぉ!!」
「壊せるわけないだろぉぉ!」
『あっはっはっはっは!!』
俺とパルスィが大声で叫び高らかに笑った。
周りからドン引きされているが知らん。事実だもんね。
「あーっと...アルマ。上機嫌なところ悪いが...桜がシンドそうだぞ?」
「はっはっは! ...ん? ああ、だろうね。あんだけの感情のエネルギーだ。疲れない方がおかしい」
サラッと答えるとそれが気に食わなかったのか桜が弾幕を当ててきた。痛いです。
「はぁ...はぁ...! こ、こうなるって分かってたなら先に言いなさいよ...!!」
「言ったらお前やらなかっただろ?」
「当たり前じゃない!! こんなに危ない技だって知ってたらもっと慎重にやってたわよ!!」
「怒るなよ。また爆発するぞ」
「もうコツは掴んだから爆発せずに抑え込めるわよ!」
「ならいいんだ。それで感情解放を使えるはずだ」
キョトンとしていますが俺が意味なく感情を爆発させたとでも思ってるのか? そんなわけないだろ。感情爆破は感情解放を行う上での基礎となるものだ。
そもそも感情解放は昂ぶった感情を抑え込み、その状態を維持するんだよ。抑え込まずに爆発させるのが感情爆破。つまり、一回爆発させて感覚を掴ませるために爆発させたんですよ。
「ならそう言いなさいよ」
「言ったら面白くないだろ」
「あんたのそういうところ嫌いよ」
「まあまあ...それで俺たちにも同じことをさせるために広げさせたのか?」
「正解! 想起君ってば冴えてる〜」
「でも、今みたいなのを連発させたら危なくないかしら?」
「......桜さんお願いします」
「絶対に言うと思ったわよ...」
そんなこんなで残りの三人には桜さんの結界内でそれぞれ感情爆破してもらう。一緒にパルスィも入ってもらい俺の代わりに指導を頼む。さて、次はあの二人だな。
最初に閉じ込めた幻真を結界から出してもらい、幻真の姿は飢えた獣のように瞳が紫色に輝き、時折見せる紫色の炎を纏う舌が出ていた。炎が体を覆いそうになっているがどうにか抑えてるように見える。
ちょっとまだ危ういが最初よりは感情を操れているようだ。
「よう幻真。気分はどうだ?」
「異常な空腹感で気が狂いそうだよ...」
「そりゃあ暴食だからな。使いこなせそうか?」
「実際に動いてみないことには...」
「なら実戦だ。桜、磔も出してくれ」
「はいはい...」
磔も結界から出してもらうと黄金の炎を纏い、金色に輝く瞳。どこか気品を感じさせるオーラを発していた。どうやらこっちは完全に使いこなしてるみたいだ。センスがあって羨ましい限りだ。
「おうアルマ。俺はだいぶ使いこなせるようになったぜ?」
「みたいだな。しかし、傲慢を使いこなすとは...お前、元から傲慢なのか?」
「さぁな。それで? 雰囲気的に手合わせと受け取っていいか?」
「察しが良くて助かるよ。手加減なしで来いよ?」
「最初っからそのつもりだ!」
磔は両手に金色の炎を纏うと俺に向かって攻撃を仕掛ける。俺は素早く後ろに下がるが、驚く事に磔は両手に纏わせていた炎を放出し距離を取った俺を炎の手で捕まえたのだ。
「マジか!?」
「結界の中でも試したが本当に便利だな! 遠距離、近距離どちらとも対応できるぜ!」
「その発想力が腹立たしい!! 感情爆破! 憤怒!」
拘束から逃れる為に憤怒の爆発を起こし、磔の金色の炎ごと破壊した。
「やるなぁ」
「まだまだ初心者には負けねえよ」
「俺も混ぜろ! 暴食 飢え消えぬ獣!」
横入りするように幻真が紫色の炎を放出。炎はこちらに近づくと狼に似た獣の形に変わっていき俺と磔に襲いかかった。
牽制も兼ねて弾幕を投げると炎獣は口を大きく開いて弾幕を捕食した。どうやら暴食の力をフルに活用してるようだ。
「やるじゃん」
「いいのか? そんな悠長に構えてて」
「お前如きの暴食で俺の暴食に勝てると思うなよ。暴食 闇喰いの陽炎」
パチン! と指を鳴らし暴食の炎をあたり一面に放つ。迫る幻真の暴食の獣を一瞬で捕食した。驚いている幻真に向けて間髪入れず攻撃を加えたいが磔がそうさせてはくれなかった。
「傲慢 気高き者の鉄槌!」
傲慢の炎を膨張させ巨大な拳に変化。それを俺に向かって振り下ろした。その姿は罪人へ下された鉄槌のように見えた。
「避けるの怠いぜ...感情爆破...怠惰...」
俺の怠惰を爆発させ赤い炎を撒き散らす。それは空中で止まり炎同士が赤い線で繋がるとドーム型のバリアを作り出した。
金色の鉄槌が俺のバリアと激突するとバリバリとぶつかり合う音が鳴った。正直、怠惰は硬いが傲慢の力も伊達ではない。防ぎきれるかは賭けだ。
俺の中で怠惰を昂ぶらせていると突然、怠惰のバリアが跡形もなく消滅した。
その原因は一瞬感じた強欲の力でわかった。元凶を睨むとそいつはヘラヘラと笑って怠惰のバリアを手で弄んでいた。
「アルマくんには悪いけど〜奪っちゃった!」
「終作ぅぅぅ!!」
「ナイスだ終作!」
「クソガァぁぁ!! 感情解放! 憤怒!!」
憤怒を解放し黒炎を右手に纏わせ磔の鉄槌に向けて殴りかかった。爆音と共に鉄槌を思いっきり弾き返し俺はその場から離れた。
「さっすがアルマ君だね〜!」
「てめぇら!! 三対一とかセコすぎるだろ!?」
「おいおい。初心者の俺達にハンデをくれてもいいだろ?」
「そうだそうだ〜!」
「それに俺たちだけに集中してていいのか?」
そう言うと後ろから真神剣に暴食を纏わせた幻真が斬りかかる。暴食の紫の炎。触れたモノ全てを喰らう捕食者の剣。
「喰らえ!」
「防御 矛盾点!」
大量の矛を地面から出現させ巨大な盾とするが幻真の剣が触れると歯型を残して消滅した。捕食する剣とか怖すぎるだろ!?
「防御無視の剣。いいね」
「短時間で物にしやがって...!」
「どうしたどうした。熟練者さんの力はこんな物か?」
「はぁぁ...調子に乗るのもいい加減にしろよ...?」
バチバチとアルマの背後に電撃が起こると空間に亀裂が走る。その亀裂から真っ黒い手が現れると空間を引き裂き姿を現した。
「黒い目をした憤慨の怪物」
アルマの憤怒を媒体とし具現化した黒眼の怪物が腕を組み佇んでいた。その真っ黒い眼には怒りだけが感じられた。
「おい主人よ...何用だ?」
「黙れ怪物が...!! 俺はキレてんだよ!!」
「...ほぉ? これは面白い。我自身がここまでクッキリと具現化するのが不思議だったが、なるほど怒っているのか」
「意味は分かるな?」
「ああ、分かっているとも。この憤怒の化身。我が主人の為に力を尽くそう」
黒眼の怪物がアルマに重なるように取り込まれると二重となった声が響いた。
『感情憑依』
黒い靄がアルマを囲んで行くと完全に見えなくなった。その光景に固唾を飲む者もいれば期待の眼差しを向ける者、面白そうに笑っている者、多種多様な感情がこもった視線が注がれる。
そして、靄に亀裂が入った。
そこから現れたのは真っ黒なローブを纏いフードを深く被ったアルマであった。
一見、服装が変わっただけにも見えたがフードの中から見えた瞳に対峙する磔達は背中に冷たいものを感じた。
黒い。ただただ黒く瞳を染めていた。
「お〜怖っ!」
「な、なんかヤバくないか!?」
「おいおい怖気付くなよ。俺たち三人なら余裕だろ!」
そう言うと磔は金色の炎をアルマに向けて放つと有無を言わせず直撃し、あたり一面に爆炎が広がった。高らかに笑う磔だったが爆炎が晴れるとギョッとする。そこにいたのは無傷で立ち尽くすアルマがいたからだ。
『耳障りなハエだ...!』
「嘘だろ!? あの爆発で無傷かよ!!」
「気づいてないようだけど。あの爆発はアルマが起こしたものよ」
「はぁ!?」
桜の言う通り、磔の攻撃にアルマが触れた瞬間に爆発が起こった。しかし、爆発したのはあくまで磔の放った炎だけだ。爆炎が飛び散ったように見えたのは磔の感情の炎が四散したものだった。
「ならあの力を奪うまでだよ〜ん!」
青い炎を手に纏いアルマに向け、腕を振るう。だが次の瞬間、終作の手が爆発を起こす。
「うっそ〜ん...!」
『俺に触れる者、危害を加える者、全ては爆発する』
「怖すぎるだろ!」
「実戦とか言って熱くなりすぎよ。感情解放 強欲」
終作と同じ青い炎を身に灯した。頭からは獣耳の炎とお尻のあたりからは十本の炎の尻尾が生えていた。
「感情解放だと幻術が無効になるのね」
「凄い強そうだな」
「悪い気分じゃないわ。さて、強欲 全てを貪るもの」
手をかざすと強欲の炎が壁となって灯る。
それの危険性を察知したアルマは終作に接近した。
「あれれ、何用かな?」
『すぐ終わる』
終作の右腕を掴むと桜が作り出した青い炎壁に叩きつけた。
壁に触れた途端に青い炎が終作を包み込むとすぐに離れた。一瞬包まれた終作はげっそりとしておりまるで抜け殻のようだった。
「な、なぜ俺がこんな目に...?」
『なるほど触れたモノの全てを吸い取る感じか』
「ええ、そうみたいね。そして吸い取った力は全て私の力となる」
『それだけの知と力を持ってさらに欲するか...まさに強欲だよ』
「そうね。私もそう思うわ」
桜はソードブレイカーを持ち、青い炎を纏わせる。強欲の青い炎。斬りつけた者の知と力を奪う強奪者の剣。
同じく磔も真桜蒼剣・改に黄金の炎を纏わせた。傲慢の金色の炎。全てを自身の思うがままに切り裂く王者の剣。
「これで終わりにしてやるよ」
『暴食...強欲...傲慢...目の前にすると怖いもんだな。さて、終わりにする? こっちのセリフだ』
「この状況で随分と余裕だな? 勝機はゼロだろ」
『お前らは気づいてないようだが俺の勝ちは確定してる』
「はっ! その減らず口を叩けないようにしてやる!!」
磔を筆頭に三人が一斉に攻撃を仕掛ける。
それをただ傍観するアルマ。そして、何を思ったのか感情憑依を解除する。
それが彼らには理解できなかったがチャンスを逃さないと言うように渾身の一撃を放とうとした。
だが、次の瞬間。磔達の纏っていた感情の炎が一斉に鎮火した。突然の出来事に驚く三人は体に力が入らず地面に倒れ伏した。
「な、なんで...?」
「お前らなぁ...あんだけ感情の炎を燃やせば燃料となる感情が尽きるに決まってるだろ?」
「そうゆうの早く言ってくれる...!?」
「まあ忘れた。そう言えば火御利や想起はどうなったかな?」
俺はぶっ倒れている幻真達を放置し想起達のいる結界を壊して中の様子を見た。すると、案の定三人ともぶっ倒れてますね。どうせパルスィの仕業だろ。
「あ、アルマ。そっちは終わったの?」
「ああ、今ちょうど終わった。そっちは?」
「私もちょうど今終わったわ。みんなが感情解放使えるようになったから実戦したらこの状況」
「パ、パルスィが本気を出すからよ...!」
火御利が震えた声で訴えてきた。
悪いな火御利。パルスィって手加減を知らないから。それに感情解放中のこの子俺と同等か上だからね?
「死ぬかと思ったぞ...」
「わ、私も...」
「うん。結果オーライだね」
『どこがだ!!』
全員に批判された。アルちゃん泣きそう。
そんな俺の頭を優しく撫でてくれるパルスィまじ天使。
「よしよし」
「ああパルスィは優しい...」
「また始まった...」
「もう勝手にやってろ...」
「なんか無駄に疲れた...」
各々が愚痴をこぼしているが...君ら失礼じゃね?
「なんだよお前ら! 教えてやったんだからお礼ぐらい言え!!」
『アリガトウゴザイマシタ』
「うわ〜全然感情篭ってな〜い」
そんなこんなで俺は疲弊しきったこやつらを地霊殿に運んでアルマとパルスィの感情解放講座を終了した。
まあ、あとは勝手に使い慣れてくれって感じだ。
次回、アルマ君がイジメられます。
たぶん