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東方魔人黙示録  作者: 怠惰のあるま
混沌に集いし、強者共
162/204

そして...始まる...

やっと執筆完了。

コラボ編第一話!さぁ...年内には絶対終われません!!

ここは地霊殿。幻想郷の地下深く、地底に位置する場所に佇む大きな屋敷。

そこの主は地底で恐れられている覚妖怪の古明地さとり。そんな彼女だが今、普段の落ち着いた雰囲気からは考えられないにやけた面をしていた。その原因は二人の子供だった。


「さとり様!遊ぼう!」

「遊ぼう!」

「わかりました。あとお姉ちゃんですよ」

『は〜い!さとりお姉ちゃん!』


さとりは二人の子供に自分をお姉ちゃんと認識させて幸せを噛み締めていた。

この子供らは双子の姉弟で姉の名は水橋リティア、弟は桐月イラ。とても仲の良い姉弟でいつも一緒にいる。

そんな双子と愛くるしく接しているさとりの元にある訪問者が訪れた。


「あら貴方は...」

「お久しぶりです。さとりさん」

「......どなたですか?」

「あはは、ご冗談を終始終作ですよ」


終始終作と名乗るとさとりは目を見開き、目の前の男をジロジロと観察した。

さとりが知っている終始終作とは違い、白いタキシードを着用し一切服に乱れもない。口調も礼儀正しくとても紳士的であった。


「ほ、本当に終作さんですか...?」

「はい。ああ、今は普段のようなおちゃらけな態度ではないので戸惑っているのですね?」

「は、はい...」


さとりはとてもやり辛そうにしていた。彼女はいつものおちゃらけな終作の方が接しやすいのだろう。なぜなら似た者同士だから。


「それで本日はなんのご用で?」

「そうでした。アルマさんに会いに来たんです」

「アルマにですか?でしたら自室でダラけてますので、ご案内しますよ」

「ありがとうございます」


案内をしようとするさとりにイラとリティアは不機嫌そうに頬を膨らませていた。


「さとりお姉ちゃん遊んでくれないの!」

「すいません。すぐ戻ってきますから」

「すぐだよ!すぐ!」

「こちらの双子は...?」

「そういえば初対面でしたね。この子達はアルマとパルスィの子供です」


二人の子供と知ると終作は目を見開いた。そして、ジロジロと見つめると、確かに似ている...と呟いた。イラとリティアは終作を見るなりさとりの後ろに隠れた。

やはり初対面の相手だから警戒心があるのだろう。


「こんにちは私は終始終作と言います。イラ君とリティアちゃんでしたっけ?よろしくお願いします」


礼儀正しく挨拶をする姿を見たさとりは笑いそうになるのを耐えるように口を手で押さえていた。そんなことをつゆ知らず終作はニコッと二人に笑顔を向けるとイラとリティアは顔を合わせ、小さく頷くと満面の笑みとなって二人は口を揃えて言った。


『うん!よろしくね!』

「ああ......可愛い......!」

「さとりさんも大概ですね」

「貴方には言われたくないです」


やっぱり紳士的な終作は苦手だと思ったさとりだった。






△▼△






終作を連れて地霊殿のアルマの部屋に向かっているさとり。その後ろを付いて行くようにイラとリティアが歩いていた。時たま、終作にちょっかいを出して窘められていた。

そんなこんなでアルマの部屋の前に着くとさとりがノックをし戸を開けると、どうやら着替え中だったようでアルマは上着を脱ぎ掛けている状態であった。それを手伝うように側でパルスィが服を持っていた。


「あれ?さとり様どうしました?」

「お客様ですよ」

「お客さん?」

「お久しぶりです。アルマさん」


丁寧に挨拶をする終作にアルマは口を開けてポカーンとしていた。パルスィも同様に口を開けていた。


「どうかしましたか?」

「こっちのセリフだ終作!!なんだその口調は!?」

「今は終見記と言うモードですので...それよりも今まで二人への無礼の数々...申し訳ありません」


頭を深々と下げ謝罪の意思を伝えると、アルマとパルスィは紳士的すぎる終作にやりにくさを覚えた。ただ、アルマは彼が心の底から反省していることを理解する。ヒシヒシと感情が伝わるのだ。


「でもなんかなぁ...」

「うん。いつもの終作の方が良い」

「そう言ってもらえると嬉しいです」


やっぱりやりにくいと思うアルマは後ろを付いてきていたイラとリティアに気づき、ニコッと笑うと二人は嬉しそうにアルマに飛びついた。


『パパ〜!』

「よしよし。パパが好きなのは分かるがこれからこの人と大事な話をするからママと一緒にいてくれ」

『は〜い』


元気に返事をすると今度はパルスィに飛びついた。そんな彼女はいつものツンとした顔ではなく優しく微笑み二人の頭を撫でていた。

その光景を幸せそうに見つめるが、すぐに真剣な表情となり終作を連れて地霊殿の外に出た。

ある程度、地霊殿から距離を取った場所に移動するとアルマは終作にあることを聞いた。


「準備はしてくれたか?」

「何が起きても大丈夫な様に他世界の強者達に仕掛けてきました」

「......お願いしたわけじゃないのね」

「はい」

「はぁぁ...責任は俺が取るから良いや...」


面倒くさそうに呟くと終作にある物を突き出した。アルマが持っているのはスペルカードに似た札。そこには見たことのない字で作られた魔法陣が描かれていた。


「これは?」

「......まあ、記憶の札って奴だ。これを全員に見せて発動させろ。そうすれば今回、集めた理由の説明を省ける」

「記憶をする込ませるというわけですか」

「そうゆうことだ。使い方はパルスィが知ってる」

「わかりました。ただ...一つだけ聞きたいことが」


少し重い雰囲気を出している終作にアルマは真剣な面持ちとなる。


「アルマさんは一人で魔王の集会へと行くのですか?」

「ああ、一人だ」

「.........死ぬ気じゃないですよね?」


その言葉にアルマは一瞬、言葉に詰まった。言いにくそうな顔をしたが、すぐに嘲笑うような笑みに変わった。


「ギヒッ!どんなに紳士的になろうとお前は冗談が上手いよ。それにお前は言わなくてもわかってるんだろ?」

「まあ、そうですが......」

「お前が見た俺の本心は誰にも伝えるな。バレそうになっても誤魔化してくれ。得意だろ?」


小さく笑い、意地悪な笑みをする。そんなアルマを終作は心配そうに見つめたが彼の気持ちを知った上で自分ができることをしようと決意する。

終作は返すようにいつもの意地悪な笑みを見せて右拳を突き出した。それに答えるようにアルマも同じく拳を突き出し、終作の拳と合わせた。


「帰ったら宴でもしようぜ?」

「はい。待ってますよ」


なんだかんだで仲の良い二人であった。








△▼△








地霊殿に戻った二人。終作は魔王の集会が始まる頃にまた来るとだけ伝え、次元の狭間へと消えていった。

そして、アルマはパルスィに手伝ってもらいながら着替えをしていた。武装されていたズボンはところどころに穴が空いたダメージジーンズへ履き替え、白いタンクトップの上に半袖の黒いフード付きパーカーを羽織っている。首には赤と青のチョーカーを装着。

着心地を確かめ、準備をするアルマにパルスィが心配そうな声で聞いた。


「本当に大丈夫なの...?」

「なにが?」

「魔王の集会に一人で行くことよ」

「ああ...大丈夫だろ。死ぬわけじゃないし?」


冗談で言ったのだろうが、パルスィは少し怒っていた。


「当たり前よ!!死んだら映姫に頼んで殴りに行ってやる!!」

「お、怒んなよ。冗談だって...」


プイッと顔を逸らしいじけるパルスィ。アルマは困ったように頭を掻き、小さくため息を吐いて彼女の頭を優しく撫でた。


「約束したろ?もう離れないって...」

「うん......」

「絶対に戻ってくるさ。安心してくれよ」

「......わかった。でも、戻ってこなかったら迎えに行ってやる」

「ギヒヒ...それは怖ぇな」


小さく笑い、アルマは部屋の戸を開いた。


「それじゃあ、いってきます」

「うん。いってらっしゃい」


パルスィの顔を一目見て、部屋を出るとアルマは魔界へと向かった。









△▼△









こことは違う別の次元。

そこは全てから隔離されたように何もない空間に浮いていた。

一言で言うとその部屋の周り全ては無であった。概念も存在も何もない。

この次元にあるのはただ一つの部屋。城の大広間のように広い、その部屋には大きなテーブルを囲うように七つの席があった。

それぞれの背もたれには色が違う宝石が埋め込まれており、そこが誰の席か表しているようだ。

この部屋には名はないが、皆口を揃えてこう呼んでいた。


『魔の王の溜まり場』


全次元で名のある魔王が集まることから呼ばれるようになったらしい。

魔王の集会が刻一刻と迫る中、部屋には五名の魔王が集っていた。

それぞれがただの人の姿であったり、少し悪魔よりの者、異形な姿をした魔物...姿はバラバラだが、五名それぞれに共通して言えることは、桁違いな強さであるという事だ。

今か今かと集会が始まるのを待つ中、一人の女性が席から立ち上がりテーブルを叩いた。


「暇よ!!」


大声でそう言うと隣に座っていた少々、歳を食っている人間よりの姿の男が静かな声で嗜める。


「落ち着け...いつもの二人だろう?遅いのは毎回のことだ」

「だからこそよ!!なんでいつもあの二人のせいであたしが待たなきゃいけないの!?」

「豪傑の魔王ちゃんは相変わらずせっかちだね〜」


向かい合うように座っていた魔物よりの姿をしていた男がのほほんとした調子で喋った。豪傑の魔王と呼ばれた女性はキッ!と魔物よりの男を睨むと口笛を吹きながら目を逸らした。


「あたしをその名で呼ぶな!あたしはレヴィ・ドルイドだ!」

「二つ名は事実そうだろう?それと雷風の魔王。お前も煽るんじゃない」

「だって〜面白いんだもん〜!あと僕はベルナ・コロキア」


楽しそうにケラケラと笑う雷風の魔王ベルナ・コロキア。

困ったようにため息を吐く人間よりの男は向かいに座っている気怠そうにしている少女に助けを求めた。


「全く...あんたもなんとか言ってくれ堕天の魔王」

「ん〜...?今はだるいから後で〜...あと私はルシファー・ドルイギア〜」

「...ルシファーなんとかしてくれ」

「わかったよ...暇だと言うなら私が相手をしてあげようじゃないか。豪傑の魔王」


その言葉にビクッと体を震わせる者がいた。それは先ほどまで机に突っ伏していた赤黒い肌を持つ悪魔の男。ゆっくりと起き上がり、ルシファーの方を睨んだ。


「集会中の戦闘はご法度だぞ...?」

「大丈夫大丈夫。集会は全員が揃ったらだろ?さぁ殺ろうじゃないか豪傑」

「つくづくあたしをイラつかせるねぇ......堕天の魔王!」

「ふふふ...その感情の昂り...いいよぉ...?」


怒りを見せながら襲いかかるレヴィに何処か高揚しているルシファー。

それが気に食わないレヴィは何もない空間を思いっきり殴った。ピキッという音と共に空間にヒビが入り、ルシファーに向かってヒビが広がって行く。

だが、透明な壁がレヴィの攻撃を防いだ。ルシファーは不敵に笑いながら彼女を見下していた。


「その傲慢な感情がイラつくのよ!!」

「私は貴女の憤怒の昂りが心地いいわ...!」


ルシファーとの距離を一気に縮め、透明な壁に激突するがレヴィは壁を破壊するために見えない壁を殴った。その滑稽な姿にルシファーは小さく笑う。

二人の戦いを側から見ていたベルナは面白そうに笑っている。


「いいないいな〜!僕も入りたいな〜!逆境の魔王もそう思うでしょ?」

「もう少し生死を分かつ戦いだったらよかった...」


逆境の魔王ギャバンはため息をし、興味無さげにまた机に突っ伏してしまった。それを見てベルナは面白そうに笑った。


「相変わらずギリギリで生きてるね〜...博識の魔王は?」

「...ルシファーとはやりたくないな。第一、あいつとまともにやり合えるのは感情の魔王ぐらいだろう?」


博識の魔王カイル・クルトの意見にベルナはつまらなそうな顔をした。それには彼もため息をつくばかり。まるで、手の付けられない子供を相手にしている気分なのだろう。

そんな中、ルシファーとレヴィの戦いに異変が起き始めた。圧倒的な力でレヴィを追い詰めたルシファーの表情は狂気に満ちていた。博識の魔王はそれに気づいた。


「おい...ルシファー?何をしている...?」

「何って...豪傑の魔王を殺すだけだよ?」

「は...?」

「堕天の魔王ちゃん...?それは冗談が過ぎるよ?」


ベルナの言葉にルシファーはトチ狂ったように体を仰け反り、部屋に笑い声を響かせた。


「ふふふ........ふふ!ふははははははは!!!私が冗談を言うわけないだろう!!君らは能天気だなぁ......死ぬんだよ...君らは!母なる神...アザトースの贄としてな!!」

「お前...前々からおかしいと思ってたがとうとう狂ったか...」

「私は正常だ!逆に君らは母なる神アザトースの贄となるこの上ない至福がわからないのかい!?」


何を言っても無駄だと魔王達は悟りそれぞれの得物を持って目の前の狂気の魔王に向けた。ギャバンは大剣を両手に、ベルナは大量の鎖、カイルは分厚い本を手に持った。

だが、カイルに勝てる自信はなかった。七つの大罪を操る天使にして堕天の魔王。彼女に勝てる者はそうそういない。いるとすれば...感情を操れる者だけだ。


「全く...君らも素直に贄となりなよ」

「オレ達を贄にするというが...目的はそうじゃないだろう?何を企んでいる?」


カイルがルシファーに問いかけると嘲笑っているのか、単純に褒めているのか、拍手をし、ニコニコと笑っていた。


「内緒だよ?まあどのみち君らはここで死ぬから知る必要なんてないよね?」

「オレ達を甘く見るなよ...堕天の魔王!」


ギャバンが鋭い目つきでルシファーを見ると、嘲笑うように見つめ返す。

それが気に食わないギャバンは自分を嘲笑うルシファーに二本の大剣を振り回し、襲いかかった。


「死ね!堕天野郎!!」

「うふふ...無駄だよ?」


ギャリィィィン!!

透明な壁とギャバンの大剣がぶつかり合い火花を散らした。決して切れることのないバリアに怒りを露わにするギャバン。それがルシファーを高揚させる。

ギャバンに続くようにベルナも持っていた鎖を操りバリアを壊そうと奮闘していた。だが、結果は変わらず手持ちの鎖が壊れていくばかり。

その後ろで手を拱いているカイル。ルシファーの嫉妬によるバリアは決して敗れることはない。まさに最強の盾。半ば諦めかけていた時、部屋に二人の来訪者が現れた。


「おいおい...何やってんだよお前ら...」

「まあ...いつものことだろう?」


その声に気付いたカイルは来訪者の方へと顔を向けた。そこに居たのは感情の魔王桐月アルマと少し、魔族よりの人型の男だった。


「感情の魔王!!」

「その名で呼ぶなよ...で?ルシファーさんよ。魔王の集会での争いはご法度だろ?それに対してのペナルティも忘れてないよな?」

「くっ...」


潔く引き下がったルシファーに怒りが収まらないギャバンとレヴィの二人は未だに得物をおさめようとしないでいた。それに気付いたアルマはため息をする。


「お前らもだ。武器をおさめろ」

「だが...!」

「はぁぁ...俺が相手をしていいんだぜ?」

「そ、それは......わかった、わかったよ」

「あんたとは戦いたくないわよ...」


二人は渋々と武器をおさめた。

それを確認したアルマはどかっとテーブルを囲う椅子の一つに座った。それに続いて、六人の魔王も自分の椅子へと座った。

全員が座ったことを確認し、アルマは隣に座っているカイルに視線を送った。


「それでは...これより《魔王の集会》を始める」





魔王の集会が開会!

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