ヘタレ
パルスィが寝たので、部屋からそっと出てさとり様のところに向かう。あと、なんかモヤモヤした感じがさっきからするんだけど、病気かな?
さとり様がいる部屋に着くと、こいしもいた。前よりは、心が開いているようだ。こいしが俺に気がつくと、嬉しそうに抱きついていた。相変わらず、認識できないなと思いながら、そっと頭を撫でてあげることにする。
「パルスィは、寝たのですか?」
「ああ、寝るまで離してくれなかったけど」
「愛されてますね」
「・・・・そうかな」
「お兄ちゃんは、パルスィの彼氏なの?」
唐突でどストレートな質問が、俺に飛んできてしまった。俺たちは【付き合ってはいない】これを簡単に言えたなら、いいんだけど、言うのを少しためらってしまうんだ。だって、なんか嫌だ。
「二人はね?とても仲がいいけど、恋人同士と言うのは関係ないの」
「うーん・・・よくわかんない!フランのところに行ってくる!」
そう言い残し、こいしはいなくなった。認識できないために、瞬間移動したように見える。
それよりも、すいませんさとり様、俺の代わりに誤魔化してもらって、後で何かお礼します。
「気にしないでください。あなたのヘタレさは、一緒に暮らしてよく知っているので」
「うっ・・・・」
「何ヶ月も一緒に暮らしているのに、進展が無いなんて、ヘタレ以外の何があるんでしょうね?」
「反論の余地も無いです・・・・」
俺だって、少しぐらいは進展したいよ。けど、どうしても、軽い態度をとってふざけてしまうんだ。じゃないと、何を言うかわかったことではない。恥ずかしさと言う後悔が残るだけだ。それだけは、絶対に嫌だ。
まあ、昔よりは進展してると思うけど。
「そんなにゆっくりしていると、誰かに取られてしまいますよ?」
さとりは冗談で言ったのであろうが、アルマは、それを聞いた途端、どす黒いオーラを発した。さとりは、背筋が凍る感覚を覚えた。
「そんなことさせねえよ」
「ア、アルマさん?」
「・・・・あれ?俺なんか言いました?」
「(無意識・・・?いえ、今の感じは・・・まさかね・・・・)いいえ、何も言ってません」
「そうですか?」
気のせいか?一瞬、意識が黒い何かに埋め尽くされたような。それに、さとり様もなんか、具合悪そうだし、何が起こったんだ?まあ、気にしても仕方ないか。
「とりあえず、俺も寝ます」
「わかりました。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
アルマが部屋を出て行くと、さとりはため息をついていた。
「まさか、こんな奇妙なことが起きようとは、入り変わるなんて・・・・」