かおり
たとえば一つだけ。
たった一つだけ君の嫌いな所を見付けたら、私は君のすべてを嫌いになるだろう。
うん。
酷いよね。
私って。
でも、それくらい君は完璧な私の王子様で。
あの日の夜のキスした場所や回数の、はっきりと鮮明に覚えてるし。
重いかもしれないけど、君もそれくらい私の事好きだったし。
重い想いがちゃんと平等だった事も分かる。
きみが愛して止まない、毎日欠かさず付ける香水のにおいも覚えてる。
久しぶりに買い物に行った時、それを見付けて買っちゃったんだ。
つい。
本当に、本当の衝動買い。
目にとまったかと思えばレジに並んでて、そして綺麗にラッピングもされて私の鞄の中に収まっていた。
君の誕生日なんてとっくに終わってるのに。
クリスマスはもっと先で、バレンタインデーはもっともっと先なのに。
私は君に、プレゼントを買ったよ。
…1万円だって。
意外に高いんだね。
その所為で、今日の夕飯はハンバーグから野菜炒めに格下げだよ。
そんな事言ったら、君はきっと笑いながら怒るんだろうな。
…。
でも、そんな君はもういない。
あの最期の瞬間から、私は止まったままだよ。
末期の癌。
それが君の死んだ理由。
別の男と幸せになれって言われたのに、君のかおりがする男性とすれ違うたび君と間違えるんだ。
…知ってるよ、女々しいことくらい。
去年の5月5日の子供の日に亡くなった君。
まだまだとても愛しいよ。
君を追って行くことは出来ないけど。
きっと君以上も以下の人も現れない。
だって、私は君に愛されるために産まれてきたんだから。
死なないよ、私は。
最後の瞬間まで、君を想うから。
…あ、君のかおりだ。




