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unity

説明の多い話となりました。次回からがつがつ動かしていきたいと思います…!

            ☆


 この世界を統治する大国・ギルアでは年に一度、国を挙げての大会が開かれる。成績優秀者から順番に成り上がっていくシステム。王候貴族の子息を護衛するという使命が与えられる代わりに、富と名誉が得られる。武器、魔法なんでもあり。ただし人殺しはルール違反。



これを聞いたアーティは、すぐさまギルアへと向かった。そして持ち前の銃の腕を生かし、一発で候補者となり、ペアを得て、この大会に参加していたのだった。


 彼は自信があった。それを支える実力もあった。候補者を選ぶ試験でも、彼は周りとの実力を見せつけた。五人一組を作り、その中で最後まで立っていた者が次へと進めるという試験。彼は一瞬で決着をつけた。 彼は自分が一番強く、一番早かったと思っていた。しかし。彼以外にも、疾うに終わっていた組があった。二つ。一つは、長身の男。もう一つは、


「うそだろ……」


 女が、勝ち抜けた。しかもロングスカートという動きにくそうな恰好をした、魔法使いが、だ。

彼女は地面に座り込んで頬杖をついて、憂鬱そうな目で空を仰いでいた。――。


<帽子邪魔だろッ!>

アーティは心の中で叫んだ。

<あともっと喜べ! 莫迦やろう!>

――これが、彼女の第一印象となった。



 そして彼は、パートナーの少女・シーヤと指定された場所へ赴き、説明を受けた。

 さあ、これからが勝負だ、と扉を開けた瞬間待っていたのは、敵の襲撃。

 早速狙われていたのだ。

しかし、彼が故郷で極めた銃の腕は確かだ。簡単にはやられやしない。ましてやこんな卑怯なやり方など、彼が一番許せない方法だった。彼は怒りを抑えてきわめて冷静に、そして素早い動きで敵を倒していった。――が、途中、何を思ったか敵の男たちは標的を変えたのだ。「見つけたぞ! こっちだ!」「早くしろ!」


 それを聞いた彼は、激怒し、後を追った。正々堂々戦ってこそ筋だ。彼の信条がそうだった。だから、彼は襲われるはずの見知らぬ誰かの為に、加勢することに決めた。パートナーの制止する声を黙殺してまで。 アーティは服についた土を払ってから、サラに握手を求めた。


「俺、本当意味なかったなあ。お前が全部倒しちまうんだもんなあ。すげえよ。魔法使いすごいな」

「……はあ」


 その笑顔から悪意は感じ取れなくて、戸惑いつつも、サラは手を伸ばした。

それを和解の印、戦闘終了の合図と受け取ったお互いのパートナーたちは、焦った様子で駆け寄ってきた。シーヤと呼ばれた少女は、不安そうに彼を見上げている。ユエは彼女の顔を心配そうに覗きこんでいる。二人は笑って「大丈夫」と答えた。


「多分悪い人じゃないよ。私たちを助けようとしてくれてたみたい」


 彼女が言うと、ユエはアーティの前に出て、一礼した。アーティは照れたように頭を掻いた。自己紹介を始めるユエを、アーティの体に隠れて少女が窺う。フードを目深に被っていたからわからなかったが、そこから真っ白の髪が流れていた。サラはその糸のような美しさに心惹かれて、そろそろと近寄ってゆく。そして勢いよくしゃがみ込んだ。目線がぴったりと合う。何と、不安げに揺れる睫毛まで白かった。あまりの可憐さに、サラは見惚れてそこから動かない。


「真っ白だろ!」

 アーティが笑う。「あだ名はシロだ。そのままだが、俺がつけた」


 その名が呼ばれた途端、シーヤの顔がしかめられた。


「あんまり、気に入ってないみたいだけれど……」

「そうなんだ。すごく良いと思うんだが、何故だか嫌がるんだ」


 なーシロ、と頭を撫でた彼に、サラは羨ましそうな目を向けた。

シーヤはその手を払い、サラと見つめ合った。サラは自分に目を向けたことに感激しながら、自己紹介を始めた。


「初めましてシーヤちゃん! 私、サラっていうの。よろしく!」

「……え」


 レイチェルさんじゃ……、と首を傾げる彼女に、サラは改名したのと微笑んだ。同時によく知ってるわねと言うと、女のひとだったからと微かな返答が返ってきた。

するとシーヤは、おどおどと視線をさ迷わせてから、サラの肩口の向こうにいるユエの姿を一瞥して、それからすぐに目を逸らした。


何かを勘違いしたサラは、落ち着かない様子の少女の耳元に唇を寄せて、「ユエって言うの。好い子よとっても。――おすすめ!」と囁いた。

彼女の意図が全く伝わっていないシーヤは、ふる、と睫毛を震わせ瞬いた。その可愛さにたまらなくなったサラは、その白の妖精を思わず抱きしめた。ユエの視線が冷たい。


「何してるの」

「えっと、その、衝動ハグを……」

「こら。彼女も困ってるだろ」


 ユエが二人を引きはがす。サラは泣き真似をする。

「強かになりましたねお坊っちゃん」

「お陰様で」

 そこに皮肉の色は見えなかった。本心からそう思っているのだろう。サラはすっかり毒気が抜けてしまった。

冗談はさておき、と立ち上がって再びアーティと向き合う。


「何だかよくわからなかったけれど、私たちを助けようとしてくれたみたいなので、一応感謝を」

「別にいいよ! ――それよりもさあ、魔法の話聞かせてよ! なあなあお前どうやって杖とか巨大化にしたの? やっぱ魔法だよなあ! 是非見せてくれよ、俺、昔から魔法使いとか憧れててさあ……!」


質問攻めにするアーティに、サラは逃げるように言葉を発する。


「そうだ! ユエ、私たち急がなくては! 何てったって遅れを取っているんですもの! アーティさん、シーヤちゃん、名残惜しいですが、ご機嫌よう!」


立ち去ろうとした二人を、アーティが呼び止める。


「お前ら、いいのか?」

「何が?」

「敵から『種』奪っておかないでいいのか?」

「種?」


理解できないサラを置いて、何か心当たりがあるらしいユエは、弾かれたように気を失っている彼らに近づき、腕に触れた。そしてユエは一言呟く。

「ポエト」

と。サラは全く理解できなくて呆然としていると、彼の辺りが円を描くように白く光って、光の粒子が飛び散るように消えた。ユエは倒したすべての男たちに同じ行為を繰り返した。サラは隣にいるアーティに尋ねる。


「彼は何をしているの?」

「何って、相手を倒したっていう証明を」

「証明?」


怪訝にするサラに、問われた方も眉をひそめた。


「だからさ、大会の参加権が、この『種』もしくは種が成長した段階のもの、ということになるんだろう? ――えっとつまり、この大会に参加する為にはこの『種』を持っていなくちゃダメで、ライバルたちはこの『種』を狙って戦いを挑んでくるわけで、俺らはこれを死守しなくちゃいけないってことだろ?」

「……ええ、そうよ、種を守るのは知ってるんだけど――」

「君が知らないのは当然なんだサラ。だって教えてもらっていないんだもの」


仕事が終わったらしいユエが、歩み寄りながらそう言う。首を捻る二人に、ユエは説明してみせる。


「僕が案内人であるシャルから、たくさん聞いたんだ。この種の消し方を」

「消し方?」

「そう。倒した敵がまた復活して襲ってくるのは、ルール違反だろう? 永遠と鬼ごっこ状態になってしまうからね。だから参加権である種を奪う。方法はペアのどちらか一方の人間を気絶させ、その人の肌に触れて『ポエト』と言う。種が身近にあろうと無かろうと、この呪文は成立する。……これで彼らは失格になった。僕らは勝ち進んだ。そうやって競い合っていくんだよ」


その説明を聞きながら、サラは眉間に寄せた皺をそのままに尋ねる。では何故。

「何故私には説明がなかったの?」

「君はすぐに出て行ってしまったじゃないか」

「――それはそうだけれど」

サラの問いは当然だった。ならば、まだ説明が終わっていないと引き止めるはずだ。一応は大会を執行する立場にあるのだから。


ユエは魔族の話を聞いた。そして神を殺したとされるレイチェル=カールースの話も。けれどもこれらは彼女の口から聞いたものではない。確かに、サラに知りたがりのままではいけないと言われたからこそ、シャルに問い質したわけであったが、明らかに知りすぎてしまったとユエは感じていた。彼女が名を騙ったのか、本当にその伝説の人物であるのかは分からないけれども、もしもそれが万一に、本当に、彼女の過去であったならばやはり、耳にしてはいけないことだっただろう。だから、ユエは記憶に蓋をすることに決めた。このことはサラ自身から説明があるまで触れない。絶対に。

――シャルは彼にこの種のシステムを話してなどいない。彼が母国語や人に知られていない単語を口にしたりするので、気が動転したあまり、種についての説明の義務を忘れてしまったのだろう。しかし、ユエは店に置いてあった植物の本に一度目を通している。――彼は瞬間記憶能力の持ち主であった。だから、一息に捲った本であっても、全ページ完璧に記憶していた。よってそこに書かれたメモ書きを見て、この種の持つ力を知っていたのだった。サラは白い光を見て、ユエは白い種を見て、これが魔法でできた種だと理解する。間違っても普通の種にそこまでの反応は起こせない。アーティやシーヤはおそらく気づいていないだろうが、この大会は深く魔法と関わっている。サラは警戒する。油断しては、食われる。おそらくこの大会には魔族が多く潜んでいるのだろう。


(それならそうと、もっと堂々としていてほしいものだわ)

――だとしても、守るものはひとつだ。サラは何かを隠している様子のユエを見やりつつも、決意を改める。


「まあいいわ。じゃあユエ、行きましょう」

「う、うん」

見るからに安堵した様子のユエは、大人しくサラに着いて行こうとした。そこに、細々とした声が掛かる。

「待って」

シーヤだ。彼女は怯えるように前に進み出て、ユエを見据えた。


「もう種は埋めましたか」

「種? まだだよ」

二人の会話を、嬉しそうに見つめるサラに、ユエは少し怪訝そうにしてから言う。

「これから土を探しに行くところ」

「わたしも、なんです」

必死に紡がれる言葉に、ユエでなくサラが落ち着かなくなる。がんばれ、と小声で応援する彼女に、更なる懐疑心を抱きながら、ユエもまたシーヤの声に耳を傾ける。

「その、よかったら、一緒に――行きませんか」

「一緒に?」

「はい。この先に綺麗な泉があります。そこの近くの土壌はよくて、花もたくさん咲いているので、きっとこの種もよろこんでくれると思うので……」

「泉」


ユエは何故かその語に引力を感じた。彼はポケットの中から種を取り出した。そして指の中で転がしてみる。水のせせらぐ音が、聴こえた気がした。もしかすると種もその場を望んでいるのかもしれない。これはあくまで直感だけれど、土を選ぶならば栄養の多い、好い土壌の方が好ましい。折角の申し出であるし、何より悪い人ではなさそうなので、ユエは快諾した。サラは彼が尋ねる前から頷いていた。


「シーヤちゃんがんばれ!」

「? どういう……?」

「いいのよ、大丈夫よ隠さなくって! 私ちゃんと黙ってるわ」


そう微笑みかけて、二組のペアは泉へ向かい、歩いてゆく。

彼女らが進む道に多くの敵が潜んでいるというのは、格好の標的であるサラがいるという時点で、当然の結果である。

そしてまた。彼らが返り討ちにされるというのも、当然の結果というところであろうが。――。




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