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魔族


【レイチェル=カールースって魔族知ってる?】


この言葉にシャルは驚きをあらわにする。


「お前なんで……その言葉を」


【僕がわざわざこの言語を選んだ意味、よく考えて】


ユエはちらりと扉の方を一瞥する。おっかなびっくりといった様子ではあるが、シャルはゆっくりと自身の故郷の言葉を唇にのせる。


【びっくりした、あんた何でまさか俺の国出身か? ……いや、まさかな】

【僕のことはどうでもいいんだ。聞きたいことは二つ。君はどこ出身の魔族か、と――】


話の途中で遮られる。


【魔族……?! あんた ちゃんと意味わかって言ってるのか――?】


ユエは溜息をつきながら、渋々答えた。


【わかってるさ。魔族直々に教えてもらったんだから。……まあ、何でわかったかといえば僕にも特技があるって、それだけのこどなんだけどね。――さっきの魔法の、所謂残り香みたいなものを追ってみれば、君にぶち当たったんだよ。サラにはわからないように更なる魔法をかけてるみたいだけど、魔法は魔法。魔法を使った形跡は残る。それが僕にはわかる】

【――あんたまさか】


絶句するシャルに、ユエは自分の問いに答えるよう催促する。


【それで! レイチェルはどんな人なの? それが知りたいんだけど】


まだ驚きを隠せずにいるシャルだったが、ひとまず落ち着こうと深く深呼吸し、ユエを見据える。サラはまだ帰って来ない。


【――あんたが言う名は、あまり口にしない方が賢明だ】

【何故】

【誰がどこで聞いているかわからないからだ】

ユエは眉をひそめる。【どういう意味】

【――まず、俺が魔族だからといって、どんな奴でも知っているというわけではない。魔族といっても色々ある。大まかに、青のヴィヌス、赤のサラマンド、緑のシルクの三つに分けられるんだ。俺はヴィヌス族だが、あんたが言うレイチェルがあの『レイチェル』であるなら、あいつはシルク族に当たる。つまり系統が違う魔族だってことだ。だから、詳しくは知らない。ほとんどが嘘か本当かわからない噂から仕入れた情報だ】

【前置きはいいよ】


吐き捨てるように言うと、シャルは口調をやや荒くした。


【莫迦野郎、これから魔族と付き合っていくなら、ちゃんと知っておけ。――レイチェルは、シルク族の中で揉め、恐ろしい過ちを犯したと聞く】

【過ち?】

【――神殺しだ】


響く言葉に、ユエは首を傾げる。


【三つの魔族には、神聖化した生き物を神に見立てて育てるんだ。シルク族は確か……鯨。勿論ただの鯨じゃない、魔法で限りなく神に近付けたものなんだからな。それを奴は殺したのさ】

【それは大変なことなの?】

【当たり前だろ。そのせいで奴は逃げ回る生活を送る破目に陥った。死ヲモッテ償エってやつさ。捕まったら殺される。さらに奴は名もかたれない。呪術さ。他にも追跡術とか色々と呪を抱えて生きてるんだろうな】


遠くを見据えてから、ふと思い出したように言葉を繋げる。


【そういえばその一連の出来事を英雄化する動きがあってさ。なんでも、レイチェルがしたことはやむを得なかったことで、むしろ悪いのは神――俺らは神獣って呼んでるんだけど――を管理してる奴らだから、とかね。だから、レイチェルの名前を冠して尊敬の意を示したりする奴らもいるらしいな】

【へえ――】


ユエは少し考えてから、尋ねた。


【これが最後。レイチェルって女? 男? どんな人なの?】

【それは全くの謎だ。管理側が必死に隠してるんだろうな。――ただ俺は縁あってシルク族の神獣をこの目で見たことがあってさ。でかいでかくないの話じゃない。まずあいつを殺せるのは並みな人間、魔族じゃねぇよ】

【……ありがと】


そう言って、ユエは椅子から飛び降り、サラを迎えに行った。


「だめだわ」

彼女の第一声はそれだった。

「この魔法は二重構造になっててね、魔法を組み立てた人と実際に魔法をかけた人がいるの。どちらもわからないわ……」


落ち込む彼女につい、答えを教えようとした時。


「こら。親切にしてやったのに。それはあんまりだろ」


シャルに背後から口止めされた。ただの戯れと思ったサラは力無く笑っている。

「じゃあユエ、そろそろ行きましょうか」

「うん」



植木鉢は話し合いの結果、ユエが担ぐこととなった。最初はサラが担ぐと言い出したのだが、身軽さを生かした戦術をもつ彼女の持ち味をなくしたくないからと宥めることで決まった。


「どの土壌でも、どの水でも、――どの環境状況でも華が咲く、か。まずは華を咲かせないといけないね」

「早く咲くに越したことはことはないけど、わからないわよね……」

「うん……」


と、考えあぐねていると、急にユエの足が止まった。

「何か変な感じがする」

「え」



次の瞬間には辺りが真っ白に包まれていた。煙玉だ。遠くで呪文詠唱の声が聞こえた。


(――私以外の魔族が何処かにいる……!)


咄嗟にサラはユエを近くに置こうとして、その手を何者かの武器によって阻まれた。危うく手がやられる所だった。

サラは叫んだ。


「ユエ、しゃがみなさい!」



そしてすぐに短い呪文詠唱を終えて、思い切り杖を振り回した。彼女の魔法によりみるみる巨大化した杖が、一息で辺りの煙を振り払う。

視界がクリアになる。サラはその一瞬の隙に見えた人影に向かって跳んだ。そして思い切り叩き込む。鈍い悲鳴が次々に巻き起こる。

途中、一気に煙が晴れたので、倒した中に術者がいたのだろう。サラはさらに目を光らせ、飛び回る。音はしない。姿が見えたと思った瞬間にはもう立ってはいられない。


(どうも皆、私たちが二人になるのを狙ってたみたいね――。まあ、女だし魔族アピールしてたし当然か)


杖を振り上げ、遠くに見える敵を叩こうとした途端、消えかけていた煙の塊に視界を奪われる。


「ユエ!」


敵がユエに向かって走っている。サラは迷わず駆け出して、地面を踏み込んだ。


煙が完全に吹っ切れる。目前には一人の男。サラは跳ぶ勢いのまま、しゃがみ込んだユエの背中に手をつき、杖を相手の首もと目掛けて突き出した。相手は持っていた長身の銃で受けたが、サラは体ごとぶつかっていたので体重がプラスされ、さらに杖が巨大になっていたこともありそのまま押しきる形となった。


「いっ!」


男は地面に倒れ込んだ。


「あなたで最後よ! 動かない方が賢明ね」


首のすぐ側の地面に杖を突き刺し、相手の自由を奪う。黒髪に布を巻く少年だった。


遠くの方で何者かが動いた気配がしたので、視線を外さず「動かないで!」と叫んだ。小さな影だったし、彼を窺っているようだったので、まずは彼から、とサラは杖のない方の腕を振り上げる。――が。


「あんたすげぇな!」

「は」

「ぴょんぴょんって! 鳥みたいに身軽だった! 加勢なんていらなかったな、はは」


少年は、けたけたと声を上げて笑った。戸惑うサラに、少年は笑いかけた。


「おれはアーティ、そこで動かずにいるのはシーヤ。よろしく!」

「……え」


サラは絶句する。




第4話です(>_<) 楽しんでいってください(^o^/

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